その結果,雌雄ともに死亡例はみられなかった.また,一般状態観察,体重推移および剖検では被験物質投与による影響は認められなかった.
以上の結果から,1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリオクチルのLD50値は,雌雄ともに2000 mg/kgを上回ると判断された.
媒体は,被験物質が水に溶けにくいため,コーン油を選択した.投与検体は,被験物質を秤量し,20 w/v%となるようにコーン油(製造番号:V9F1299,ナカライテスク(株))に溶解して調製した.1および25 w/v%の調製検体については,冷蔵,遮光条件下で8日間の安定性が確認されていることから,調製した検体は,冷蔵,遮光下で気密容器に入れて保管し,調製後2日に投与した.投与検体については,秦野研究所において被験物質の含量を測定し,含量が所定濃度の105 %であることを確認した.なお,投与検体は溶液であることから,均一性試験は実施しなかった.
動物は,基準温度22〜25 ℃,基準湿度50〜65 %,換気回数約15回/時間,照明12時間(7時〜19時点灯)に制御された飼育室で,金属製金網床ケージに1匹ずつ収容し,固型飼料(CE-2,日本クレア(株))および水道水(秦野市水道局給水)を自由に摂取させて飼育した.
投与容量は体重1 kg当たり10 mLとし,動物を投与前約18時間絶食させた後,投与直前に測定した体重を基に投与液量を算出し,ラット用胃管を用いて強制的に単回経口投与した.給餌は投与後約3時間に行った.
体重は全例について,投与直前,観察第2,4,8,11および15日に測定した.
剖検は,観察第15日に全例をペントバルビタール・ナトリウム麻酔下で放血屠殺して実施した.
一般状態では,観察第1日に粘液便の排泄あるいはそれに伴う肛門周囲の汚れが対照群および被験物質投与群の雌雄各2〜3例にみられたが,観察第2日以降に一般状態の異常は観察されなかった.粘液便の排泄は,対照群でも観察されていることから,媒体であるコーン油の影響と考えられる.
体重推移では,被験物質投与群は,雌雄とも対照群と同様の体重推移を示し,いずれの測定日とも有意差はみられなかった.
剖検では,雌雄全例の器官・組織に肉眼的異常所見は認められなかった.
以上の結果より,本試験条件下における1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリオクチルのLD50値は,雌雄ともに2000 mg/kgを上回ると判断された.
連絡先 | |||
試験責任者: | 太田 亮 | ||
試験担当者: | 勝村英夫,松本浩孝,丸茂秀樹,堀内伸二,三枝克彦,稲田浩子,安生孝子 | ||
(財)食品薬品安全センター秦野研究所 | |||
〒257-8523 神奈川県秦野市落合729-5 | |||
Tel 0463-82-4751 | Fax 0463-82-4751 |
Correspondence | ||||
Authors: | Ryo Ohta(Study director) Hideo Kastumura, Hirotaka Matsumoto, Hideki Marumo, Shinji Horiuchi, Katsuhiko Saegusa, Hiroko Inada, Takako Anjo | |||
Hatano Research Institute, Food and Drug Safety Center | ||||
729-5 Ochiai, Hadano-shi, Kanagawa 257-8523, Japan | ||||
Tel +81-463-82-4751 | Fax +81-463-82-9627 |