2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸のラットを用いる経口投与簡易生殖毒性試験
Preliminary Reproduction Toxicity Screening Test of
2-Amino-5-methylbenzenesulfonic acid by Oral Administration in Rats
要約
2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸の100,300および1000 mg/kgをSD系(Crj:CD(SD))のラットの交配前2週間および交配期間の2週間を通じて経口投与し,さらには雄では交配期間終了後20日間,雌では妊娠期間を通じて分娩後の哺育3日まで連続投与し,親動物の反復投与毒性および生殖能ならびに児動物の発生・発育に及ぼす影響について検討した.
1. 反復投与毒性
いずれの群にも死亡例は認められなかった.また,一般状態,体重および摂餌量にも雌雄ともに被験物質投与による影響は認められなかった.雄の精巣および精巣上体重量には,被験物質投与による影響は認められなかった.
剖検および生殖器系の病理組織学検査では,雌雄とも被験物質投与に起因すると考えられる所見は観察されなかった.
2. 生殖発生毒性
交尾能,受胎能および性周期に被験物質投与の影響は認められなかった.また,分娩状態にも異常は観察されなかった.新生児の外表検査には,異常は認められず,体重にも群間差は認められなかった.死亡児および哺育4日の剖検では,被験物質投与によると考えられる異常所見は観察されなかった.
以上の結果から,本試験条件下における2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸の親動物に対する無影響量(NOEL)は雌雄とも1000 mg/kg/dayと判断された.生殖能および次世代児に対する影響はともに1000 mg/kg/day投与によっても認められず,無影響量は1000 mg/kg/dayと判断された.
方法
1. 被験物質
2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸[三星化学工業(株)製造(東京),純度99.3 wt%,Lot No. 7254]は微黄色の粉末であり,使用時まで冷暗所で密栓保管した.本ロットは,投与期間中安定であったことを確認した.
被験物質は,ゴマ油(ナカライテスク(株)製造)に懸濁し,20,60および200 mg/mLの濃度になるよう各群の投与液を調製した.調製後は,使用時まで遮光・冷蔵条件下で保管した.投与液中の被験物質は,6および200 mg/mLの濃度の場合,遮光・冷蔵条件下で少なくとも7日間安定であることを確認した.
投与液の濃度および均一性の分析は,調製開始時に調製した各群のバッチから無作為にサンプルを抽出し実施した.その結果,表示濃度に対する誤差が-12.5から-0.4 %の範囲であり,基準範囲内(±15 %以内)であった.したがって,使用した投与液にはほぼ所定量の2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸が含有されていたことが確認された.
2. 使用動物および飼育条件
試験には,日本チャールス・リバー(株)(神奈川)から購入した生後8.5週齢のSprague-Dawley(Crj:CD(SD), SPF)系雌雄ラットを使用した.購入した動物は5日間検疫・馴化飼育した後,一般状態に異常が認められなかったものを10週齢で群分けして試験に用いた.群分け時の体重は,雄で375〜414 g,雌で239〜266 gの範囲であった.
動物は,温度24±2℃,湿度55±10 %,換気回数15回/時間,照度150〜300 lux,照明時間12時間(午前7時点灯,午後7時消灯)に設定されたバリアシステムの飼育室でアルミ製前面・床ステンレス網目飼育ケージに1匹ずつ収容し飼育した.妊娠18日以降の母動物は哺育4日までアルミ製前面・床ステンレス網目飼育ケージに哺育トレーおよび巣作り材料(Care FRESHTM, Absorption corporation製造)を入れて飼育した.
飼料は,オリエンタル酵母工業(株)製造のNMF固型飼料(放射線滅菌飼料)を使用し,飼育期間中自由に摂取させた.飲水は,水道水を自由に摂取させた.
3. 群分け
動物は投与開始日の体重をもとに層別化し,無作為抽出法により1群当たり12匹を振り分けた.
4. 投与量,群構成,投与期間および投与方法
先に実施した「2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸のラットを用いる28日間の反復投与毒性試験」1)は上限量である1000 mg/kg群の雄で尿比重の増加,尿pH,白血球数および総コレステロールの低下あるいは減少が,雌でGPTの増加,血糖の減少が認められ,剖検では雌雄ともに盲腸の拡張が認められた.これらの結果をもとに,0,30,100,300および1000 mg/kgの用量で実施した予備試験「2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸のラットを用いる経口投与簡易生殖毒性試験-2週間投与予備試験」では,投与後症状,体重,摂餌量,器官重量に明らかな被験物質投与によると考えられる変化は認められなかった.
従って,本試験においても予備試験同様1000 mg/kgを高用量とし,以下公比約3で除し,300および100 mg/kgを設定した.
投与容量は,体重100 g当り0.5 mLとし,交配前および交配期間中の雌雄では,個体別に測定した最新体重に基づいて算出を行った.また,妊娠期間および哺育期間中の雌は,妊娠0,7,14,21および哺育0日に測定した個体別体重に基づいて算出を行った.胃ゾンデを用いて毎日1回(7日/週)強制経口投与した.対照群にはゴマ油のみを同様に投与した.
雄の投与期間は,交配前14日間と交配期間14日間および交配期間終了後20日間の連続48日間とした.雌の投与期間は,交配前14日間と交配期間中(最長14日間)ならびに交尾成立雌の妊娠期間を通じて分娩後の哺育3日まで(41〜46日間)とした.なお,交尾成立後分娩しなかった雌は妊娠25日の解剖前日までの41および43日間とした.交尾不成立の雌は交配期間終了後20日間の連続48日間とした.
5.観察および検査
1) 一般状態
雌雄とも,全例について試験期間中毎日観察した.
2) 体重
雄では,投与1(投与開始日),8,15,22,29,36,43および49日(剖検日)に測定し,投与1から43日までの体重増加量を算出した.雌では,投与1(投与開始日),8および15日に測定し,投与1から15日までの体重増加量を算出した.交尾成立後の雌は,妊娠0,7,14および21日に,分娩した雌は哺育0および4日に測定し,それぞれ妊娠0から21日および哺育0から4日までの体重増加量を算出した.
3) 摂餌量
雄では,投与1(投与開始日),8,15,22,29,36,43および48日(剖検前日)に餌重量を測定し,測定日から次の測定日までの間の摂餌量を求め平均1日摂餌量を算出するとともに投与1から15日および投与22から48日までの累積摂餌量を算出した.雌では,投与1(投与開始日),8および15日に,交尾しなかった雌はそれ以降の投与29,36,43および48日(剖検前日)に餌重量を測定し,測定日から次の測定日までの摂餌量を求め,平均1日摂餌量を算出するとともに投与1から15日までの累積摂餌量を算出した.また,交尾成立の雌は妊娠0,7,14および21日に,分娩した雌は哺育0および4日に餌重量を測定し,測定日から次の測定日までの間の摂餌量を求め,平均1日摂餌量を算出するとともにそれぞれ妊娠0から21日および哺育0から4日までの累積摂餌量を算出した.なお,交配期間中の摂餌量は測定しなかった.
4) 交配
交配前14日間の性周期観察を行った雌を同群内の雄のケージに入れ1対1で最長14日間毎晩同居させた.翌朝,腟垢中の精子確認をもって交尾が成立したとし,その日を妊娠0日とした.性周期観察は交尾成立日まで行い,発情期から次の発情期までの間の日数を性周期日数として平均性周期を算出した.交配結果から,各群について交尾率[(交尾動物数/同居動物数)×100]を算出した.
5) 自然分娩時および新生児の観察
妊娠動物は全例を自然分娩させた.分娩の確認は午前9から10時に行い,この時間帯に分娩が完了していることを確認した個体および分娩を開始した個体については分娩完了まで待って,その日を哺育0日とした.午前10時を過ぎて分娩が完了した個体については,翌日を哺育0日とした.分娩を確認した全例について妊娠期間(哺育0日の年月日から妊娠0日の年月日を減じた日数),受胎率[(受胎動物数/交尾動物数)×100)],出産率[(生児出産雌数/妊娠雌数)×100],着床率[(着床痕数/妊娠黄体数)×100)],分娩率[(総出産児数/着床痕数)×100],出生率[(出産生児数/総出産児数)×100)]を算出した.妊娠25日の午前9時までに分娩のみられない動物は病理解剖した.母動物は哺育4日に病理解剖した.
新生児は哺育0日に出産児数(生存児+死亡児)を調べ,性別を判定するとともに外表異常の有無を調べた.また,哺育0および4日に雌雄別の同腹児重量を測定し,1腹の雌雄別1匹当りの平均体重を算出した.
哺育4日の新生児の同腹児重量を測定後に新生児全例をエーテル麻酔により安楽死させ,器官・組織の肉眼観察を行った.なお,哺育期間中の死亡児についてはブアン氏液に固定し,主要器官の肉眼観察を行った.また,新生児の4日の生存率[(哺育4日生児数/出産生児数)×100]を求めた.
6) 病理学検査
a) 剖検および器官重量
(1) 雄動物
48日間投与した翌日,エーテル麻酔下で放血安楽死させた.器官・組織の肉眼観察を行った後,精巣および精巣上体重量を測定し器官重量・体重比(相対重量)を算出した.また,全動物の精嚢,前立腺および肉眼所見で変化が認められた器官・組織として肺,肝臓および皮膚を10 %中性緩衝ホルマリン液で固定した.なお,精巣および精巣上体はブアン氏液で固定した.
(2) 自然分娩した雌
哺育4日にエーテル麻酔下で放血安楽死させた.器官・組織の肉眼観察を行った後,卵巣,子宮,腟および肉眼所見で変化が認められた器官・組織として肺,皮膚,胸腺,胃および副腎を10 %中性緩衝ホルマリン液で固定した.また,剖検時に黄体数および着床痕数を調べた.
(3) 交尾しなかった雌
48日間投与した翌日,エーテル麻酔下で放血安楽死させた.器官・組織の肉眼観察を行った後,卵巣,子宮および腟を10 %中性緩衝ホルマリン液で固定した.
(4) 自然分娩の認められない雌
妊娠25日に,エーテル麻酔下で放血安楽死させた.器官・組織の肉眼観察を行った後,卵巣,子宮および腟を10 %中性緩衝ホルマリン液で固定した.着床痕が認められない動物は妊娠不成立と判定した.
(5) 哺育期間中に全児が死亡した母動物(全児死亡動物)
生存児すべての死亡または喰殺が確認された日に,エーテル麻酔下で放血安楽死させた.器官・組織の肉眼観察を行った後,卵巣,子宮,腟および肉眼所見で変化が認められた器官・組織として胸腺を10 %中性緩衝ホルマリン液に固定した.
なお,剖検時に黄体数および着床痕数を調べた.
b) 病理組織学検査
(1) 全児死亡動物
対照群の2例の卵巣,子宮および腟,1例の胸腺について実施した.
(2) 妊娠を成立させた雄
対照群および1000 mg/kg群のそれぞれ11および12例で精巣および精巣上体について実施した.加えて,対照群および300 mg/kg群各1例の肺,300および1000 mg/kg群各1例の皮膚,300 mg/kg群1例の肝臓,精巣および精巣上体について実施した.
(3) 自然分娩した雌
対照群および1000 mg/kg群のそれぞれ9および12例で卵巣について実施した.加えて,100 mg/kg群1例の卵巣および皮膚,300 mg/kg群1例の胸腺,1000 mg/kg群1例の胃,副腎,肺,2例の胸腺について実施した.
(4) 交尾しなかった雌雄
100 mg/kg群の雌雄各1例の卵巣,子宮,腟,精巣,精巣上体,精嚢および前立腺について実施した.
(5) 妊娠を成立させなかった雄および妊娠不成立の雌
対照群および100 mg/kg群の雌雄各1例の卵巣,子宮,腟,精巣,精巣上体,精嚢および前立腺について実施した.
6. 統計解析
体重,摂餌量,黄体数,着床痕数,出産児数,死産児数,性比,平均性周期,妊娠期間,着床率,分娩率,出生率,外表異常発現率,新生児の4日の生存率,器官重量および相対重量については多重比較検定2-4)を行った.
出産率,交尾率および受胎率についてはχ^2検定5, 6)を用いた.病理学検査の所見の発生率については,Fisherの直接確率検定法6)を用いて検定した.なお,哺育期間中の新生児に関する成績は1母体当りの平均を1標本とした.有意水準は*:P<0.05および**:P<0.01の2段階とした.
結果
1. 反復投与毒性
1) 死亡および一般状態
死亡例は,投与期間を通じ,雌雄いずれの群にも観察されなかった.一般状態の観察では,被験物質投与に起因した変化は認められず,雄の100 mg/kg群で眼分泌物が1例,300 mg/kg群で脱毛が1例,1000 mg/kg群で痂皮および脱毛が1例に認められた.雌では妊娠期間および哺育期間を通じ100 mg/kg群で脱毛が1例,対照群で全児死亡動物が2例に認められた.
2) 体重(Fig. 1, 2)
雄では,投与期間を通じて対照群と各被験物質投与群との間に差は認められなかった.
雌では,100および1000 mg/kg群で対照群に比べ哺育4日にのみ統計学的に有意な低値を示した.しかし,他の測定日には明らかな差は認められず1日のみの変化であること,また,哺育期間の体重増加量には明らかな変化が認められていないことから,被験物質投与の影響では無く偶発的な変化と考えられた.
3) 摂餌量(Fig. 3, 4)
雄では,1000 mg/kg群で投与8から15日の平均1日摂餌量が統計学的に有意な高値を示し,投与1から15日の累積摂餌量も高値を示した.
雌では,投与期間を通じて対照群と各被験物質投与群との間に差は認められなかった.
4) 器官重量(Table 1)
300 mg/kg群で対照群に比べ精巣上体の実重量が統計学的に有意な低値を示したが,相対重量には差はなく,1000 mg/kg群では同様の変化は認められなかった.精巣重量には対照群と各被験物質投与群との間に差は認められなかった.
5) 剖検所見
いずれの動物にも被験物質投与に起因すると考えられる所見は認められなかった.
雄では,所見として肺の黒色斑点が対照群および300 mg/kg群で各1例,肝臓の赤色斑点および白色斑点が300 mg/kg群で同一個体の1例,精巣および精巣上体の萎縮が300 mg/kg群で同一個体の1例,被毛の菲薄化が300および1000 mg/kg群で各1例に観察された.
自然分娩した雌は対照群,100,300および1000 mg/kg群でそれぞれ9,10,12および12例であった.所見として胸腺の萎縮が300および1000 mg/kg群でそれぞれ1および2例,肺の黒色斑点,胃の潰瘍および副腎の白色斑点が1000 mg/kg群で各1例,卵巣の嚢胞および被毛の菲薄化が100 mg/kg群で各1例に観察された.
交尾しなかった100 mg/kg群の雌1例では,異常所見は観察されなかった.
自然分娩の認められない雌は対照群および100 mg/kg群で各1例であったが,いずれの動物にも異常所見は観察されなかった.
対照群の2例の全児死亡動物では,胸腺の萎縮および子宮の結節が1例に観察され,他の1例には異常所見は認められなかった.
6) 病理組織学検査(Table 2)
雄では,1000 mg/kg群で精巣上体の細胞浸潤が1例に観察された他,剖検で精巣および精巣上体の萎縮が認められた300 mg/kg群の動物に精巣の精細管萎縮および間質細胞増生,精巣上体の精子減少が観察された.しかしながら,低頻度の発現であることから被験物質の影響ではないと考えた.その他,肺の炎症が対照群および300 mg/kg群で各1例,肝臓の壊死が300 mg/kg群で1例,皮膚の糜爛および扁平上皮増生が1000 mg/kg群で1例に観察された.
自然分娩した雌では,卵黄嚢嚢胞が100 mg/kg群の1例に観察されたのみで被験物質の卵巣におよぼす影響はないと考えられた.その他,胸腺の萎縮が300および1000 mg/kg群でそれぞれ1および2例,肺の炎症が1000 mg/kg群で1例,胃の潰瘍が1000 mg/kg群で1例,副腎皮質の局所的肥大が1000 mg/kg群で1例,皮膚の炎症浸潤と扁平上皮増生が100 mg/kg群の1例に観察された.
交尾しなかった雌雄では,雄に精巣の精細管萎縮が観察された.雌には異常所見は認められなかった.
妊娠を成立させなかった雄および不妊の雌では,いずれにも異常所見は観察されなかった.
全児死亡動物では,胸腺の萎縮および子宮の化膿性炎症が1例に観察された.他の1例には異常所見は観察されなかった.
2. 生殖発生毒性
1) 交尾および受胎能(Table 3)
交尾は,100 mg/kg群を除くすべての群で全例成立し,100 mg/kg群では1組が交尾不成立で12例中11例(91.7 %)で成立した.受胎は,300および1000 mg/kg群で交尾が成立した雌の全例で成立した.対照群および100 mg/kg群の各1例では,妊娠25日剖検で着床痕が認められなかったため不妊と判断した.したがって,対照群では12例中11例(91.7 %),100 mg/kg群では11例中10例(90.9 %)で受胎が成立した.
性周期観察では,いずれの群もほぼ4から5日の性周期を示し平均性周期に群間差は認められなかった.
2) 分娩および哺育(Table 4)
分娩状態に異常は観察されず,各群の妊娠期間,黄体数,着床痕数,出産児数,出産生児数および死産児数はほぼ同様な値を示し,出産率,着床率,出生率および哺育4日生存率に群間差は認められなかった.
3) 新生児の形態,体重および剖検所見
新生児の外表検査では,異常をともなう児は1例も認められなかった.
哺育期間中の体重では,雌雄ともにいずれの測定日にも群間差は認められなかった.
哺育期間中の死亡児の剖検では,被験物質投与に起因すると考えられる所見は認められず,胸腺頸部残留および腎盂拡大が対照群の雄に認められたのみであった.雌には異常所見は認められなかった.哺育4日の剖検では,雄では胸腺頸部残留が対照群で1例,腎臓の腎盂拡大が300 mg/kg群で1例,雌では腎臓の腎盂拡大が対照群および300 mg/kg群でそれぞれ1および3例に認められた.いずれも少数例での発現であり,被験物質投与とは関連のない変化であった.
考察
1. 反復投与毒性
雌雄とも一般状態の変化および体重に被験物質投与の影響は認められなかった.
摂餌量については,雄の1000 mg/kg群で投与8から15日の間の平均1日摂餌量および投与1から15日の累積摂餌量が高値を示した.しかし,同群の体重には明らかな変化は認められていないこと,28日間反復投与毒性試験および2週間投与予備試験では同様の結果は認められていないことから,被験物質投与による毒性影響とは判断しなかった.
病理学検査では,雄の精巣および精巣上体,雌の卵巣に被験物質投与の影響は認められなかった.なお,全児死亡動物,妊娠を成立させなかった雄および不妊の雌については,特に原因を示唆する所見は認められなかった.交尾しなかった雄では,組織所見で精巣の精細管萎縮が認められた.しかし,交尾不成立の一要因となった可能性が示唆されるものの,発現頻度から被験物質投与との関連は無いと判断された.
したがって,本試験条件下における2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸の親動物に対する無影響量は,最高用量の1000 mg/kgでも影響は認められなかったことから雌雄とも1000 mg/kg/dayと判断された.
2. 生殖発生毒性
性周期,交尾率,受胎率,妊娠期間,妊娠黄体数,着床痕数,出産児数,出産生児数,性比,哺育4日生児数,出産率,着床率,出生率および哺育4日生存率に被験物質投与の影響は認められなかった.また,新生児の外表検査でも異常は認められず,体重にも群間差は認められなかった.死亡児および哺育4日の剖検では,被験物質投与によると考えられる異常所見は観察されなかった.
以上のことから,2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸の生殖能および次世代児に対する影響はともに1000 mg/kg/day投与によっても認められず,無影響量は1000 mg/kg/dayと判断された.
文献
1) | 厚生省生活衛生局企画課生活化学安全対策室監修,"化学物質毒性試験報告,"Vol. 4,化学物質点検推進連絡協議会,東京,1996, p. 99. |
2) | C. G. Shayne, "Statics and Experimental Design For Toxicologists," Telford Press, New Jersy, 1986, pp. 43-45. |
3) | 佐野正樹,医薬安全性研究会会報,32, 21(1990). |
4) | M. Yoshida, J. Japanese Soc. Comp. Statist., 1, 111(1988). |
5) | 佐久間昭,"薬効評価I-計画と解析-,"東京大学出版会,東京,1977, pp. 109-117. |
6) | 石居進,"生物統計学入門,"培風館,東京,1975, pp. 78-107. |
連絡先 |
| 試験責任者: | 伊藤圭一 |
| 試験担当者: | 小川敏明,伊賀達也,木原 亨 |
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