予備試験の結果,いずれの菌株にも抗菌性が認められなかったことから,本試験では S9 mix非共存下および共存下のいずれも,5000〜313 μg/プレートの公比2で5濃度を設定した.
本試験を 2回実施した結果, 被験物質の各濃度において誘発された復帰変異コロニー数は,いずれの菌株においても陰性対照値の2倍以上を示さなかった.また,抗菌性はS9 mixの有無によらずいずれの菌株も5000 μg/プレートまで認められなかった.従って,クロロペンタブロモシクロヘキサンの変異原性は,陰性と結論した.
試験に際して , 各凍結菌株を融解後, その20 μlをニュートリエントブロス(Oxoid Nutrient Broth No.2, Unipath社) 25 gを1 lの精製水に溶解して作成した液体完全培地10 mlに接種し,37℃で8時間振盪培養した.培養終了後の菌懸濁液は菌濃度を測定した後,試験に使用した.
クロロペンタブロモシクロヘキサンはジメチルスルホキシド (DMSO, ロット番号:603E2089,純度:99.7%,関東化学(株))を用いて最高濃度(50 mg/ml)の懸濁液を調製した後, 同溶媒で公比2で希釈したものを用いた. なお,本試験の1回目に調製した最高および最低濃度の懸濁液について濃度分析を実施し,いずれも所定濃度の100±5%以内であることを確認した.
AF-2 | : | 2-(2-フリル)-3-(5-ニトロ-2-フリル)アクリルアミド(純度:98.0%, 和光純薬工業(株)) |
NaN3 | : | アジ化ナトリウム(純度:96.5%, 和光純薬工業(株)) |
ENNG | : | N-エチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(純度:99.0%, Sigma Chemical Co.) |
9-AA | : | 9-アミノアクリジン(純度:99%, Sigma Chemical Co.) |
2-AA | : | 2-アミノアントラセン(純度:95.0%, 和光純薬工業(株)) |
NaN3は注射用水((株)大塚製薬工場)に,その他はDMSOに溶解したものを使用した.
硫酸マグネシウム七水塩 | 0.2 g |
クエン酸一水塩 | 2 g |
リン酸水素二カリウム無水塩 | 10 g |
リン酸−アンモニウム | 1.92 g |
水酸化ナトリウム | 0.66 g |
ブドウ糖 | 20 g |
寒天(OXOID Agar No.1) | 15 g |
径 90 mmのシャーレ1枚あたり30 mlを流して固めてある.
S9* | 0.1 ml |
塩化マグネシウム六水塩 | 8 μmol |
塩化カリウム | 33 μmol |
D-グルコース6-リン酸 | 5 μmol |
b-NADPH | 4 μmol |
b-NADH | 4 μmol |
ナトリウム-リン酸緩衝液(pH 7.4) | 100 μmol |
滅菌精製水 | 残量 |
*: | 購入したS9(キッコーマン(株))を使用した.このS9は,7週齢の雄のSD系ラットにフェノバルビタールと5,6-ベンゾフラボンを併用投与して作製した肝ホモジネートの9000×g遠心上清分画である. |
試験管に被験物質懸濁液 0.1 mlを分注し,S9 mix 0.5 mlと菌懸濁液0.1 mlを加え,37℃で20分間振盪し,プレインキュベーションを行った.S9 mixを共存させない場合には,S9 mixの代わりに0.1 Mナトリウム−リン酸緩衝液(pH 7.4) 0.5 mlを加えた.プレインキュベーション後, トップアガー2 mlを上記の試験管に加えて混和し,最少グルコース寒天平板培地に重層した.重層したトップアガーが凝固した後,37℃で48時間培養し,復帰変異コロニー数を数えた.同時に実体顕微鏡を用いてバックグランドの菌の生育状態を観察し,被験物質による抗菌性の有無を調べた.予備試験は各濃度あたり1 枚のプレートを使用した.本試験は各濃度あたり3枚のプレートを用い,2回実施した.また,被験物質懸濁液の代わりに陰性対照物質(溶媒)および各菌株毎の陽性対照物質を用いて,被験物質群と同様の操作を行う対照群を設けた.
以上の結果から , クロロペンタブロモシクロヘキサンの変異原性は陰性と結論した.
1) | D. M. Maron and B. N. Ames, Mutation Research, 113, 173-215 (1983). |
2) | M. H. L. Green and W. J. Muriel, Mutation Research, 38, 3-32 (1976). |
連絡先 | |||
試験責任者: | 西冨 保 | ||
試験担当者: | 水野文夫,榎本佳明,石毛裕子 藤代洋子,村田久美,鈴木美江 | ||
(株)三菱化学安全科学研究所 鹿島研究所 | |||
〒314-02 茨城県鹿島郡波崎町砂山14 | |||
Tel 0479-46-2871 | Fax 0479-46-2874 |
Correspondence | |||
Authors: | Tamotsu Nishitomi(Study director) Fumio Mizuno, Yoshiaki Enomoto, Yuko Ishige, Yoko Fujishiro, Kumi Murata, Yoshie Suzuki | ||
Mitsubishi Chemical Safety Institute Ltd., Kashima Laboratory | |||
14 Sunayama, Hasaki-machi, Kashima-gun, Ibaraki, 314-02 Japan | |||
Tel +81-479-46-2871 | Fax +81-479-46-2874 |