2,6-ジメチルアニリンの急性毒性を調べるために,SD系[Crj:CD(SD)IGS]雌ラットを用い,ステップ1として3匹に被験物質の300 mg/kgを単回経口投与した.その結果,死亡が認められなかったので,ステップ2として別の3匹に再度300 mg/kgを投与したが,死亡は認められなかった.スッテプ3では,用量をあげ,2000 mg/kgを投与した結果,3匹中3匹が死亡した.一般状態の変化として,300 mg/kgでは眼瞼下垂を伴った軽度な自発運動の低下が認められたが,体重の推移および観察終了時の剖検において,被験物質の投与による影響は認められなかった.2000 mg/kgでは,投与後まもなくから重度な自発運動の低下,横臥,歩行異常,筋弛緩および軽度な呼吸深大が認められ,投与後24時間以内に死亡した.死亡動物の剖検では3匹中2匹の膀胱内に赤色尿が認められた.
これらの結果から,2,6-ジメチルアニリンはその急性毒性によりGHSの化学物質危険度分類におけるカテゴリー4に分類される物質であると結論された.
2,6-ジメチルアニリンは,有機溶媒およびオリブ油に可溶な無色の液体である.試験には,東京化成工業(東京)製造のもの(ロット番号FGL01,純度99.7 %)を用い,これを投与直前にオリブ油[宮澤薬品]に溶解して投与液とした.
動物は,日本チャールスリバーより搬入後,5日間馴化・検疫飼育した10週齢のSD系[Crj:CD(SD)IGS]雌ラットを,各ステップ毎に3匹(ステップ1:214(204〜219)g,ステップ2:214(206〜220)g,ステップ3:216 (210〜222)g)用いた.ラットは,室温22.0〜23.7℃,湿度47〜58 %に制御した飼育室で,ステンレス製金網ケージに3匹ずつ収容し,固型飼料[ラボMRストック,日本農産工業]と水は自由に摂取させた.
本被験物質のラット経口投与におけるLD50値については705〜840 mg/kgとの報告1)がある.試験方法はOECDの試験法ガイドライン423に従い,投与量は5,30,300および2000 mg/kgの中から,ステップ1の用量として,300 mg/kgを選び,死亡状況を確認しながらステップ2,ステップ3へと段階的に試験を進めた.投与方法は,投与液量を体重1 kg当り5 mLとし,テフロン製胃ゾンデおよび注射筒を用いて,動物の胃内に単回経口投与した.ラットは前日の午後5時より投与後3時間まで除餌し,水のみを摂取させた.
観察期間は投与後14日間とし,その間に一般状態の観察および生死の確認を行った.体重は,観察1(投与直前),4,8および15日に測定した. 剖検は,全例とも観察期間終了後にエーテル麻酔死させて行った.
ステップ1として3匹に被験物質の300 mg/kgを投与した.その結果,死亡が認められなかったので,ステップ2として別の3匹に再度300 mg/kgを投与したが,死亡は認められなかった.スッテプ3では,用量を上げ,2000 mg/kgを投与した結果,3匹中3匹が死亡した.一般状態の変化として,300 mg/kgでは,眼瞼下垂を伴った軽度な自発運動の低下が認められたが,投与後3時間以降には回復した.300 mg/kg投与動物の体重の推移および観察終了時の剖検において,被験物質の投与による影響は認められなかった.2000 mg/kgでは,投与後まもなくから重度な自発運動の低下,横臥,歩行異常,筋弛緩および軽度な呼吸深大が認められ,投与後24時間以内に死亡した.死亡動物の剖検では3匹中2匹の膀胱内に赤色尿が認められた.2,6-ジメチルアニリンはラットに対して腎臓および造血器官への毒性を有することが報告2)されており,本試験で認められた赤色尿も,腎臓への毒性並びに溶血などの血液毒性と関連した変化であると考えられた.
これらの結果から,2,6-ジメチルアニリンはその急性毒性によりGHSの化学物質危険度分類におけるカテゴリー4に分類される物質であると結論された.
1) | Richardson ML and Gangolli S:In "The Dictionary of Substances and their Effects", Volume 3, the royal society of chemistry, England(1993) pp.592-594. |
2) | National Toxicology Program(NTP)Technical Report Series(1990)p.278. |
連絡先 | |||
試験責任者: | 山口真樹子 | ||
試験担当者: | 野田 篤,伊藤雅也 | ||
7畜産生物科学安全研究所 | |||
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Correspondence | |||
Authors: | Makiko Yamaguchi(Study director) Atsushi Noda, Masaya Ito | ||
Research Institute for Animal Science in Biochemistry and Toxicology | |||
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