2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルのラットを用いる
単回経口投与毒性試験
Single Dose Oral Toxicity Test of Dimethyl 2,6-naphthalenedicarboxylate in Rats
要約
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを雌雄ラットに1回経口投与し，その毒性について検討した．投与量は2000 mg/kgを高用量とし，以下1000および 500 mg/kgとした．対照として媒体(0.5％カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液)投与群を設けた．
死亡は，いずれの群の雌雄にも発現しなかった．また，一般状態の異常も観察されなかった．体重は，各投与群の雌雄とも対照群とほぼ同様の推移を示した．剖検においても，異常はみられなかった．
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルのLD50値は，雌雄とも2000 mg/kg以上と考えられる．
方法
1．被験物質，媒体および投与検体
被験物質の2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルは，分子量:244.25，融点:190.1℃，沸点:370℃(推定値)の白色フレークで，水に不溶である(Lot No.4024，製造元:三菱ガス化学(株)，純度:99.9％)．入手後は，室温・遮光条件下で保管した．
被験物質は，0.5％カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に懸濁して調製した．なお，0.2，2および 20％濃度の調製液は，冷蔵・遮光条件下で7日間，さらに室温・遮光条件下で4時間保存しても安定性に問題のないことを確認した．
2．使用動物および飼育条件
4週齢のSprague-Dawley系雌雄ラット［Crj:CD(SD)，(SPF)］を日本チャールス・リバー(株)から購入した．入手した動物は，5日間の検疫期間およびその後3日間の馴化期間を設け，一般状態および体重推移に異常の認められない動物を群分けして試験に用いた．群分けは，コンピュータを用いて体重を層別に分けた後に，無作為抽出法により各群の平均体重および分散がほぼ等しくなるように投与日に行った．
動物は，室温20〜24℃，湿度 40〜70％，明暗各 12 時間(照明:午前6時〜午後6時)，換気回数12回／時に設定した飼育室で飼育した．検疫・馴化期間中および絶食期間中はステンレス製懸垂式ケージを用いて1ケージあたり5匹までの群飼育とし，群分け後はステンレス製五連ケージを用いて個別飼育した．
飼料は固型飼料(CRF-1，オリエンタル酵母工業(株))を，飲料水は水道水をいずれも自由に摂取させた．ただし，投与前日の夕刻から投与までの約18時間30分と投与後約6時間まで絶食させ，群分け時から投与後約6時間までは絶水させた．
3．投与経路，投与方法，群構成および投与量
投与経路は経口投与を選択した．投与に際しては，金属製経口胃ゾンデを取り付けたプラスチック製ディスポーザブル注射筒を用いて，強制経口投与した．投与液量は，投与直前に測定した体重を基準として10 ml/kgで算出した．投与回数は1回とした．投与日の週齢は5週齢であり，体重範囲は雄が112〜122 g，雌が93〜99 gであった．
投与量は，先に実施した雄ラットを用いた予備試験(投与段階:0，80，400 および2000 mg/kg)において，2000 mg/kgを投与しても死亡の発現はなく，一般状態，体重推移および剖検所見にも異常は認められなかった．そこで，当試験では，2000 mg/kgを高用量とし，以下公比2で1000および500 mg/kg投与群を設定した．また，対照として被験物質と同一液量の媒体(0.5％カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液)を投与する群を設けた．
4．観察および検査項目
1) 観察期間
投与後14日間とした．
2) 一般状態
投与日は投与前および投与後6時間(投与後30分まで，投与後2，4および6時間)まで，投与翌日からの観察期間中は1日1回，一般状態および死亡の有無を観察した．
3) 体重測定
投与日および投与後1，3，7，10ならびに14日に測定した．
4) 剖検
観察期間終了時にエーテル麻酔下で腹大動脈から放血致死させた後に剖検した．
5.統計解析
体重について，各群で平均値および標準偏差を算出した．有意差検定は対照群と各投与群の間でDunnettの多重比較検定を用いて行った．
結果
1.一般状態および死亡状況
いずれの群の雌雄においても，死亡発現および一般状態の異常はみられなかった．
2.体重推移
各投与群の雌雄とも，対照群とほぼ同様の体重推移であり，いずれの測定日とも有意差はみられなかった．
3.剖検所見
いずれの群の雌雄とも，異常はみられなかった．
考察
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルは2000 mg/kg投与によっても，雌雄ともに死亡の発現はなく，LD50値は雌雄とも2000 mg/kg以上と考えられる．なお，2000 mg/kg投与しても，雌雄とも一般状態，体重推移および剖検所見に異常はみられなかった．
| 連絡先 |
| 試験責任者： | 古橋忠和 |
| 試験担当者： | 長瀬孝彦，虫賀勇樹，松井英児，
吉島賢一，牧野浩平，渡邊ゆかり |
| (株)日本バイオリサーチセンター 羽島研究所 |
| 〒501-62 岐阜県羽島市福寿町間島6-104 |
| Tel 058-392-6222 | Fax 058-392-1284 | |
| Correspondence |
| Authors: | Tadakazu Furuhashi(Study director)
Takahiko Nagase，Yuuki Mushiga，
Eiji Matsui，Ken-ichi Yoshijima,
Kohei Makino and Yukari Watanabe |
| Nihon Bioresearch Inc. Hashima Laboratory |
| 6-104, Majima, Fukuju-cho, Hashima, Gifu, 501-62, Japan |
| Tel +81-58-392-6222 | Fax +81-58-392-1284 | |