2000 mg/kg投与群では,被験物質に由来すると考えられる褐色尿の排泄が投与5時間後から観察第5日の間に1〜4日間観察され,軽度な体重の増加抑制が,観察第2日にみられた.
剖検所見には,変化は認められなかった.
2-エチルアントラキノンのLD50値は,雌雄ともに2000 mg/kgを上回ると推定された.
調製には媒体として,0.1 w/v%ポリソルベート80添加0.5 w/v% Carboxymethylcellulose sodium(CMC Naと略記)水溶液を用いた.媒体は,0.5 w/v%となるように,秤量したCMC Na(カルメロースナトリウム,製造番号:6Z09,丸石製薬(株))を注射用水(日局注射用水,製造番号:9707SA,光製薬(株))に溶解し,これに0.1 w/v%の割合でポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート,Lot No. TPN3571,和光純薬工業(株))を加えて調製した.投与検体の調製においては,被験物質を秤量し,所定濃度となるように媒体を加えて懸濁させ,投与時まで遮光して冷蔵保存し,調製2日後に使用した.なお,被験物質の0.2および20 w/v%の調製検体の,冷蔵,遮光条件下での8日間の安定性を確認した.また,投与検体の含量を測定した(98.2 %).
全飼育期間を通じ,動物を金属製金網床ケージに1匹ずつ収容し,温度23〜25 ℃,湿度50〜65 %,換気回数約15回/時,照明12時間(7時〜19時点灯)に設定された飼育室で,固型飼料(CE-2,日本クレア(株))および水道水(秦野市水道局給水)を自由に摂取させて飼育した.
投与容量は体重1 kg当たり10 mLとし,動物を約18時間絶食させた後,投与直前に測定した体重を基に投与液量を算出し,ラット用胃管を用いて強制的に単回経口投与した.給餌は投与後約3時間に行った.
体重は全例について,投与直前,観察第2,4,8,11および15日に測定した.
剖検は,観察第15日に全例をペントバルビタールナトリウム麻酔下で放血屠殺して実施した.
一般状態では,雌雄2000 mg/kg投与群で,褐色尿の排泄が投与後約5時間から観察され,雄1例では観察第5日まで連日観察された.投与日および観察第2日に観察された褐色尿は,潜血反応陰性(-),蛋白反応陽性(+)であった.
体重では,雌雄の2000 mg/kg投与群で,観察第2日に軽度の体重増加抑制がみられた.
剖検では,雌雄いずれの器官・組織にも変化は認められなかった.
潜血反応が陰性の褐色尿の排泄は,本被験物質のラットにおける28日間反復経口投与毒性予備試験においても観察され,同試験で採取された血漿は赤色調を呈し,吸収スペクトルでは,326,410,509 nmに吸収がみられている.酸化ヘモグロビンの吸収波長は540および576 nmであることから1),血漿の赤色化は溶血によるものではなく,被験物質に起因した着色であると考えられている.これらのことから,本試験で観察された褐色尿も被験物質に起因したものと考えられた.また,観察第5日まで褐色尿がみられたことから,本被験物質の体内からの排泄は遅いことが推察された.
雌雄の2000 mg/kg投与群で軽度に体重の増加抑制が観察第2日にみられたが,その後,雄では対照群と同程度まで体重増加がみられたことから,軽度の変化であると考えられた.
以上の結果から,2-エチルアントラキノンのLD50値は,雌雄ともに2000 mg/kgを上回ると推定された.
1) | 厚生省薬務局医療機器開発課監修,“医療用具及び医用材料の基礎的な生物学的試験のガイドライン1995解説,”薬事日報社,東京,1996, pp.112-115. |
連絡先 | |||
試験責任者: | 永田伴子 | ||
試験担当者: | 勝村英夫,松本浩孝,堀内伸二, 三枝克彦,稲田浩子,安生孝子 | ||
(財)食品薬品安全センター秦野研究所 | |||
〒257-8523 神奈川県秦野市落合729-5 | |||
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Correspondence | ||||
Authors: | Tomoko Nagata(Study director) Hideo Katsumura, Hirotaka Matsumoto, Shinji Horiuchi, Katsuhiko Saegusa, Hiroko Inada, Takako Anjo | |||
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