体重は雌雄の 800 mg/kg群で交配前期間に低値を示した。摂餌量は雌雄とも群間で差はなく被験物質投与の影響は認められなかった。
雄の血液学的検査では、被験物質投与の影響と考えられる変化はなかった。また、血液化学的検査でも、特定臓器の障害を示唆する検査値の変化は認められなかった。
器官重量は800 mg/kg 群の雄で肝臓重量が増加を示し、雌で増加傾向が認められた。雄の剖検所見では、800 mg/kg 群で12例中3 例に肝臓の肥大が観察されたが、病理組織学検査では肝臓の肥大を裏付ける明確な形態的変化は認められなかった。腎臓の所見として、尿細管上皮の軽度の好塩基性化が雌の 800 mg/kg群で10例中5例に観察されたが、分布および程度の上で軽度なこと、ならびに雄の全例に観察されていることから、被験物質投与の影響によるか否かは明確でなかった。
分娩時観察では、全例が正常に分娩し、哺育期間を通じ被験物質投与の影響は認められなかった。また、新生児の外表検査でも被験物質投与によると考えられる異常はなく、体重も哺育4日まで順調に増加した。死産児または哺育4日までの死亡児ならびに哺育4日の剖検では、被験物質投与によると考えられる異常所見は観察されなかった。
以上のことから、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオールの反復投与毒性は雌雄ともに800 mg/kg/day の投与で認められ、最大無影響量を雌雄ともに 200 mg/kg/dayと判断した。また、雌雄の生殖に及ぼす影響および児動物の発生・発育に及ぼす影響は800 mg/kg/day 投与によっても認められず、最大無影響量はともに800 mg/kg/day と判断した。
本被験物質は局方注射用蒸留水[ロット番号9106AS, 9108CS, 9108VS(光製薬)]に溶解し、16(w/v) %溶液を調製した。これを原液とし、注射用蒸留水で順次希釈し各群の投与溶液を調製した。調製後は、使用時まで冷蔵庫に保存した。調製液中の被験物質は 0.2, 20(w/v) %溶液の場合、冷暗条件下ですくなくとも7日間安定であることが確認されているため、調製は1 週間に1 回実施し、調製後7日以内に使用した。
投与液の濃度分析は、各群の調製液について調製開始時に調製したバッチから無作為にサンプルを抽出し実施した。その結果、99.6〜104 %の範囲で適切に調製されており問題はなかった。
動物は、温度22〜24℃、湿度50〜60%、換気回数20回/時間、照度 150〜300 lux、照明時間12時間(午前7時点灯、午後7時消灯)に設定された飼育室(W 8×D 8×H 2.5 m、 160m^3 )で飼育した。株式会社 東京技研サービス(東京都府中市)の自動水洗式飼育機(W 486×D 79×H 160 cm)を使用し、アルミ製前面・床ステンレス網目飼育ケージ(W 15.8×D 23.8× H16.0 cm 、飼育ケ−ジ・スペ−ス 6,017 cm^3)に動物を1匹ずつ収容し飼育した。但し、交配期間中の雄は、アルミ製前面・床ステンレス網目飼育ケージ(W36.8×D 25.0×H 16.0 cm、飼育ケ−ジ・スペ−ス 14,720 cm^3 )に収容し飼育した。母動物は、妊娠18日以降哺育4日までアルミ製前面・床ステンレス網目飼育ケージ(W 36.8×D 25.0×H 16.0 cm )に哺育トレーおよび巣作り材料(アルファードライ)を入れて飼育した。
飼料は、オリエンタル酵母工業株式会社(東京都中央区)製造の NMF 固型飼料(放射線滅菌飼料)を使用した。飲水は、水道水を自由に摂取させた。
供給した飼料、水および巣作り材料には試験に支障を来す可能性の考えられる夾雑物の混在はなかった。
群分け後の動物の識別は個体別に耳に入れ墨をするとともにケージごとに動物標識番号(Animal ID-No.) をつけた。
投与経路は、OECDガイドライン「反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験」で指示されている投与経路に準じて強制経口投与を選択した。投与容量は、体重 100 g当り 0.5 ml とし、個体別に測定した最新体重に基づいて算出を行った。胃ゾンデを用いて毎日1 回(7日/週)強制経口投与した。対照群には局方注射用蒸留水のみを投与した。
雄の投与期間は、交配前14日間と交配期間14日間および交配終了後の17日間の連続45日間とした。雌の投与期間は、交配前14日間と交配期間中(交尾成立まで最長14日間)ならびに交尾成立雌の妊娠期間を通じて分娩後の哺育3日まで(40〜52日間)とした。なお、交尾不成立の雌は交配期間終了後の解剖前日まで45日間投与した。
性周期観察は交尾成立日まで行い、発情期から次の発情期までの間の日数を性周期日数とし平均性周期を算出した。
交配結果から、各群について交尾率[(交尾成立動物数/同居動物数)× 100]を算出した。
新生児は哺育1 日に出産児数(生存児+死亡児)を調べ、性別を判定するとともに、外形異常の有無を調べた。また、哺育1 および4日に雌雄別の同腹児重量を測定し、雌雄別1 匹当りの平均重量を算出した。
哺育4日に新生児全例を屠殺し、主要器官の肉眼観察を行った。哺育期間中の死亡児も同様に主要器官の肉眼観察を行った。また、新生児の4日生存率[(哺育4日生児数/出産生児数)× 100]を算出した。
a) 血液学的検査
血液学検査には初血を用いた。THMS H6000(米国テクニコン社)を用いて下記の項目を測定した(EDTA 3K添加血液)。
| 白血球数 | (WBC) | 暗視野板法 |
| 赤血球数 | (RBC) | 暗視野板法 |
| ヘモグロビン量 | (HGB) | シアンメトヘモグロビン法 |
| ヘマトクリット値 | (HCT) | 全赤血球の容積より補正 |
| 平均赤血球容積 | (MCV) | RBC, HCTより算出 |
| 平均赤血球血色素量 | (MCH) | HGB, RBCより算出 |
| 平均赤血球血色素濃度 | (MCHC) | HGB, HCTより算出 |
| 血小板数 | (PLT) | 暗視野板法 |
| 白血球百分率 | フローサイトケミストリー法 |
網状赤血球数(RC)についてはキャピロット(テルモ株式会社、東京都渋谷区)で染色後、血液塗抹標本を作製し鏡検した。
b) 血液化学的検査
クリーンシール(株式会社ヤトロン、東京都千代田区)に血液を採取し、30分間放置後 3,000 r.p.m. 7分間遠心分離して得た血清を検査に用いた。生化学自動分析装置CentrifiChem ENCORE �供淵戞璽�ー社、米国)および EKTACHEM 700N(コダック社、米国)を用いて下記の項目を測定した。
| 総蛋白(TP) | ビューレット法 |
| アルブミン(Alb) | B.C.G.法 |
| A/G | 計算値 |
| 血糖(Glu) | ヘキソキナーゼ法 |
| 尿素窒素(BUN) | ウレアーゼ改良法 |
| クレアチニン(Crea) | Jaff 法 |
| 総ビリルビン(T-Bili) | ジアゾ色素法 |
| グルタミン酸オキザロ | |
| 酢酸トランスアミナーゼ(GOT) | Karmen改良法 |
| グルタミン酸ピルビン | |
| 酸トランスアミナーゼ(GPT) | Wroblewski and LaDue改良法 |
| γーグルタミルトランス | |
| ペプチダーゼ(γ-GTP) | 酵素法 |
| カルシウム(Ca) | アリザリン法 |
| 無機リン(IP) | モリブデンブルー法 |
| カリウム(K) | 電極法 |
| 塩素(Cl) | 電極法 |
45日間投与後、約16時間の絶食をさせ、エーテル麻酔下で放血安楽死させた。主要器官の肉眼的観察を行い、肝臓、腎臓、胸腺、精巣上体および精巣重量を測定し、器官重量・体重比を算出した。また、全動物の重量測定器官に加えて脳、心臓、脾臓、副腎、精嚢、前立腺、下垂体および肉眼所見で変化が認められた器官・組織として肺を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。なお、精巣および精巣上体はブアン氏液に固定した。
b) 自然分娩した雌
哺育4日にエーテル麻酔後放血安楽死させ、主要器官の肉眼的観察を行った後、肝臓、腎臓、胸腺および卵巣重量を測定し、器官重量・体重比を算出した。また、全動物の重量測定器官に加えて脳、心臓、脾臓、副腎、下垂体および肉眼所見で変化が認められた器官・組織として肺を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。また、剖検時に黄体数および着床痕数を調べた。
c) 交尾不成立の雌
45日間投与後、エーテル麻酔後放血安楽死させ、主要器官の肉眼的観察を行った後、皮膚、乳腺、リンパ節、唾液腺、胸骨、大腿骨(骨髄を含む)、胸腺、気管、肺および気管支、心臓、甲状腺および上皮小体、舌、食道、胃および十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、卵巣、子宮、腟、眼球、ハーダー腺、脳、下垂体および脊髄を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。
d) 自然分娩の認められない雌
妊娠25日にエーテル麻酔後放血安楽死させ、主要器官の肉眼的観察を行った後、皮膚、乳腺、リンパ節、唾液腺、胸骨、大腿骨(骨髄を含む)、胸腺、気管、肺および気管支、心臓、甲状腺および上皮小体、舌、食道、胃および十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、卵巣、子宮、腟、眼球、ハーダー腺、脳、下垂体および脊髄を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。着床痕が認められない動物は不妊と判定した。
e) 全児死亡の認められた雌
生存児すべての死亡または喰殺が確認された日にエーテル麻酔後放血安楽死させ、主要器官の肉眼的観察を行った後、皮膚、乳腺、リンパ節、唾液腺、胸骨、大腿骨(骨髄を含む)、胸腺、気管、肺および気管支、心臓、甲状腺および上皮小体、舌、食道、胃および十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、卵巣、子宮、腟、眼球、ハーダー腺、脳、下垂体および脊髄を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。
の多重比較検定で対照群と各投薬群間の有意差を検定した。Bartlettの等分散検定で不等分散の場合は Kruskal-Wallis の順位検定を実施した。有意で各群の標本数が同数の場合は Dunnettの順位検定、各群の標本数が異なる場合は Scheff
の順位検定で対照群と各投薬群間の有意差を検定した。出産率、交尾率、受胎率についてχ^2 検定を行った。病理組織学検査で群間に程度差が認められた場合はFisherの直接確率検定を行った。なお、哺育期間中の新生児に関する成績は1 母体当りの平均を1 標本とした。有意水準は*:P< 0.05 および**:P< 0.01 とした。
一般状態の観察では、雌雄とも被験物質投与による変化は認められなかった。自然発生性の所見として切歯異常(上顎切歯折れ)が雄の 50 mg/kg 群で投与6および7週に、雌の 200 mg/kg 群で投与2および7週にそれぞれ1 例観察された。
交尾の成立しなかった雌は 200 mg/kg群に2例認められたが、異常所見は観察されなかった。妊娠の成立しなかった雌は 12.5 および 50 mg/kg 群に各1例、800 mg/kg 群に2例認められたが、被験物質投与の影響と考えられる異常所見は観察されなかった。
哺育4日の母動物の剖検では、被験物質投与による影響が示唆される所見は観察されなかった。自然発生性の病変と考えられる所見として、脾臓の癒着およびリンパ節の肥大が 200 mg/kg群にそれぞれ1 例、肺の有色斑/区域が 12.5 mg/kg 群に4例、50 mg/kg群に2例、200 mg/kg群に1 例および 800 mg/kg群に3例観察され、また、肝臓の奇形結節が対照群に2例、50および 200 mg/kg群にそれぞれ1 例に観察された。
交尾の成立しなかった動物は、200 mg/kg 群の雌雄各2例認められた。脾臓の色素沈着、肝臓の脂肪化および細胞浸潤、腎臓の尿細管上皮好塩基性化が雌雄に、心臓の細胞浸潤および心筋変性、腎臓の好酸性小体、前立腺の分泌亢進および副腎の空胞化が雄に、また、腎臓の石灰沈着が雌に観察された。
妊娠を成立させなかった雄および妊娠の成立しなかった雌は、12.5および50mg/kg 群で雌雄各1 例、800 mg/kg 群で雌雄各2例認められた。これらの動物では、心臓の細胞浸潤、脾臓の色素沈着、肝臓の脂肪化および細胞浸潤、腹腔内の脂肪壊死、腎臓の尿細管上皮の好塩基性化および石灰沈着が雌雄に、腎臓の好酸性小体、蛋白円柱および線維化、前立腺の前立腺炎などが雄に、胸腺の出血、脾臓の赤血球造血低下、腎臓のリンパ球浸潤および心臓の心筋変性が雌に観察された。
12.5 mg/kg群の全児死亡が認められた母動物では、脾臓の色素沈着、リンパ節の形質細胞増生、胸腺の萎縮、小腸(パイエル板)の石灰沈着、腎臓の尿細管上皮の好塩基性化および石灰沈着、乳腺の増生などが観察された。
性周期観察では、200 mg/kg 群の3例に偽妊娠と考えられる性周期の停止(連続した発情休止期像)が認められたが、その他の動物は規則的な周期を示した。
哺育1 日および4日の体重には雌雄ともに群間に差はなく統計学的有意差は認められなかった。
死産児および哺育4日までの死亡児の剖検では、主要器官に異常は認められなかった。哺育4日の剖検では、肝臓の奇形結節(過形成)が用量に関係なく散見されたほか、800 mg/kg 群の1 例に肝臓の有色斑/区域が認められた。
体重は雌雄の 800 mg/kg群で交配前期間に低値が認められ、被験物質投与の影響と考えられたが、雌の妊娠および哺育期間では被験物質投与の影響は認められなかった。摂餌量は雌雄ともに群間で差がなく被験物質投与の影響は認められなかった。
雄の血液学的検査では、いずれの検査項目においても被験物質投与の影響と考えられる変化はなかった。血液化学的検査では、50 mg/kg以上の投与群で尿素窒素の増加が認められたが、数値的には軽度な変化で腎臓の機能的・器質的障害を示唆するものではなかった。また、200 および 800 mg/kg群でアルブミンが増加し、それに伴い総蛋白および A/Gが増加したが、数値的には軽度の変化で、GOT, GPTおよびγ-GTPなど肝障害により高値を示す項目に変化もなく、特定臓器の障害は示唆されなかった。その他、800 mg/kg 群で血糖およびカルシウムに増加が認められたが、起因は明らかでなかった。
器官重量は800 mg/kg 群の雄で肝臓の実重量および相対重量が増加を示し、雌の同群で増加傾向が認められた。この変化は、雄の剖検時で肝臓の肥大が12例中3例に認められており、被験物質投与の影響と考えられた。病理組織学検査では、肝臓の肥大を裏付ける明確な形態的変化は認められず、光顕所見には現われない程度の機能的増大によるものと考えられた。その他、雌の 800 mg/kg群で腎臓尿細管上皮の軽度の好塩基性化が10例中5例に観察され、発生数の増加が認められた。しかし、この腎臓の変化は分布および程度の上で軽度なこと、ならびに雄の全例に観察されていることから、被験物質投与による影響か否かは明確でなかった。その他観察された所見は、いずれも自然発生的病変と考えられた。交尾不成立、妊娠を成立させなかった雄、妊娠不成立の雌および全児死亡の認められた雌動物では、それぞれの原因に関連すると考えられる異常所見は認められなかった。
以上のことから、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオ−ルの800 mg/kg/day 投与により雌雄の動物で体重の増加抑制、肝臓重量の増加または増加傾向および肝臓の肥大が認められ、反復投与毒性の最大無影響量は、雌雄ともに 200 mg/kg/dayと判断された。
分娩時観察では、全例が正常に分娩し、哺育期間を通じ被験物質投与の影響は認められなかった。また、新生児の外表検査でも被験物質投与によると考えられる異常はなく、体重も哺育4日まで順調に増加した。死産児または哺育4日までの死亡児および新生児の哺育4日の剖検では、被験物質投与によると考えられる異常所見は認められなかった。
以上のことから、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオールの雌雄の生殖に及ぼす影響および児動物の発生に及ぼす影響は、800 mg/kg/day 投与によっても認められず、最大無影響量はともに 800 mg/kg/dayと判断される。
| 1) | F. Giuseppe and S. Franco, J. Chromatogr., 287, 323 (1984). |
| 2) | F. W. Jphn, P. Martin, S. Paul, H. David and E. U. David, J. Fir. Sci. 5, 162 (1987). |
| 3) | Govt. Reports Announcements & Index, NTIS/ PB83-248666 (1983). |
| 4) | C. G. Shayne, and S.W. Carrol, "Statics and Experimental Design For Toxicologists," Telford Press , 1986. |
| 5) | 佐久間昭, "薬効評価�機欸弉茲伐鮴蓮�," 東京大学出版会, 1977. |
| 6) | 石居 進, "生物統計学入門,"培風館, 1975. |
| 連絡先: | |||
| 試験責任者 | 萩田孝一 | ||
| (財)食品農医薬品安全性評価センター | |||
| 〒437-12 静岡県磐田郡福田町塩新田字荒浜 582-2 | |||
| Tel 0538-58-1266 | Fax 0538-58-1393 | ||
| Correspondence: | |||
| Hagita, Koichi | |||
| Biosafety Research Center, Foods, Drugs and Pesticides (An-pyo Center), Japan | |||
| 582-2 Shioshinden Arahama, Fukude-cho, Iwata-gun, Shizuoka, 437-12, Japan | |||
| Tel 81-538-58-1266 | Fax 81-538-58-1393 | ||