予備試験における抗菌性の結果をもとに,本試験ではS9 mix非共存下のTA100, TA1535, TA1537は 39.1〜0.610 μg/プレート(公比2)の7濃度,WP2 uvrA, TA98は5000〜313 μg/プレート(公比2)の5 濃度を,共存下のTA100, TA1535, TA1537は625〜9.77 μg/プレート(公比2)の7濃度,WP2 uvrA, TA98は2500〜39.1 μg/プレート(公比2)の7濃度をそれぞれ設定した.
本試験を2回実施した結果,被験物質の各濃度において誘発された復帰変異コロニー数は,S9 mixの有無によらず,いずれの菌株においても陰性(溶媒)対照値の2倍以上を示さなかった.また,S9 mix非共存下のTA100, TA1535, TA1537では9.77 μg/プレート以上で,共存下のTA100, TA1535では156 μg/プレート以上,WP2 uvrA, TA98では625 μg/プレート以上,TA1537では313 μg/プレート以上でそれぞれ抗菌性が認められた.従って2-エチルヘキシルメタクリラートの変異原性は陰性と結論した.
試験に際して,各凍結菌株を融解後,その20 μLをニュートリエントブロス(Oxoid Nutrient Broth No.2, Unipath社)25 gを1 Lの精製水に溶解して作製した液体完全培地10 mLに接種し,37℃で8時間振盪培養した.培養終了後の菌懸濁液は菌濃度を測定した後,試験に使用した.
提供)は,分子式C12H22O2,分子量198.34,純度:99.4 %(不純物として遊離酸(メタクリル酸として)0.001 %,水分0.017 %を含む)の無色透明液体であり,通常の取り扱い条件では安定であるが,熱,光で重合する.なお,本ロットの安定性は,実験開始前および実験終了後に被験物質供給者が分析し,確認した.
2-エチルヘキシルメタクリラートはジメチルスルホキシド(DMSO, 関東化学
)を用いて最高濃度(50 mg/mL)の溶液を調製した後, 同溶媒で所定濃度に段階希釈したものを用いた.
| AF-2 | : | 2-(2-フリル)-3-(5-ニトロ-2-フリル)アクリルアミド(和光純薬工業 ) |
| NaN3 | : | アジ化ナトリウム(和光純薬工業 ) |
| ENNG | : | N-エチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(Sigma Chemical Co.) |
| 9-AA | : | 9-アミノアクリジン(Sigma Chemical Co.) |
| 2-AA | : | 2-アミノアントラセン(和光純薬工業 ) |
NaN3は注射用水(
大塚製薬工場)に,その他はDMSOに溶解したものを使用した.
)を購入し,使用した.なお,培地1 Lあたりの組成は下記のとおりである.
| 硫酸マグネシウム七水塩 | 0.2 g |
| クエン酸一水塩 | 2 g |
| リン酸水素二カリウム無水塩 | 10 g |
| リン酸一アンモニウム | 1.92 g |
| 水酸化ナトリウム | 0.66 g |
| ブドウ糖 | 20 g |
| 寒天(OXOID Agar No.1) | 15 g |
径90 mmのシャーレ1枚あたり30 mLを流して固めてある.
| S9* | 0.1 mL |
| 塩化マグネシウム六水塩 | 8 μmol |
| 塩化カリウム | 33 μmol |
| D-グルコース6-リン酸 | 5 μmol |
| β-NADPH | 4 μmol |
| β-NADH | 4 μmol |
| ナトリウム-リン酸緩衝液(pH 7.4) | 100 μmol |
| 滅菌精製水 | 残量 |
*:購入したS9(キッコーマン
)を使用した.このS9は,7週齢の雄のSD系ラットにフェノバルビタールと5,6-ベンゾフラボンを併用投与して作製した肝ホモジネートの9000×g遠心上清分画である.
試験管に被験物質溶液0.1 mLを分注し,S9 mix 0.5 mLと菌懸濁液0.1 mLを加え,37℃で20分間振盪し,プレインキュベーションを行った.S9 mixを共存させない場合には,S9 mixの代わりに0.1 Mナトリウム-リン酸緩衝液(pH 7.4)0.5 mLを加えた.プレインキュベーション後,トップアガー2 mLを上記の試験管に加えて混和し,最少グルコース寒天平板培地に重層した.重層したトップアガーが凝固した後,37℃で48時間培養し,復帰変異コロニー数を計測した.同時に実体顕微鏡を用いて菌叢の生育状態を観察し,被験物質による抗菌性の有無を調べた.予備試験では各濃度につき1枚のプレートを使用し,本試験では各濃度につき3枚のプレートを使用した.本試験は2回実施し,結果の再現性を確認した.また,被験物質溶液の代わりに陰性対照物質(溶媒)および各菌株毎の陽性対照物質を用いて,被験物質群と同様の操作を行う対照群を設けた.
以上の結果から, 2-エチルヘキシルメタクリラートの変異原性は陰性と結論した.




| 1) | D.M. Maron and B.N. Ames, Mutation Research, 113, 173(1983). |
| 2) | M.H.L. Green and W.J. Muriel, Mutation Research, 38, 3(1976). |
| 連絡先 | |||
| 試験責任者: | 宮川 誠 | ||
| 試験担当者: | 榎本佳明,清水優子 | ||
三菱化学安全科学研究所 鹿島研究所 | |||
| 〒314-0255 茨城県鹿島郡波崎町砂山14 | |||
| Tel 0479-46-2871 | Fax 0479-46-2874 | ||
| Correspondence | ||||
| Authors: | Makoto Miyagawa(Study director) Yoshiaki Enomoto, Yuko Shimizu | |||
| Mitsubishi Chemical Safety Institute Ltd., Kashima Laboratory | ||||
| 14 Sunayama, Hasaki-machi, Kashima-gun, Ibaraki, 314-0255, Japan | ||||
| Tel +81-479-46-2871 | Fax +81-479-46-2874 | |||