C.I.ピグメントレッド22のラットを用いる
反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験

Combined Repeat Dose and Reproductive/Developmental Toxicity Screening Test
of C.I. Pigment Red 22 by Oral Administration in Rats

要約

C.I.ピグメントレッド22は化学構造中にアゾ基をもち,水可溶性基をもたない不溶性アゾ顔料で,塗料,印刷インキ,プラスチック,ゴム,皮革,繊維,文具,タイルおよび顔料などに用いられている1).毒性情報としてラットの経口投与による単回投与毒性試験ではLD50値は雌雄ともに2000 mg/kg以上と推定される2).しかし,反復投与および生殖発生毒性についての知見はない.C.I.ピグメントレッド22を100,300および1000 mg/kg/dayの用量でSD系ラット(1群雌雄各12匹)に交配前14日から交配を経て雄は計37日間,雌は妊娠,分娩を経て哺育4日まで経口投与し,反復投与毒性および生殖発生毒性について検討した.

1. 反復投与毒性

1000 mg/kg群の雌雄で肝臓重量の増加が認められた.その他,一般状態,体重,摂餌量,血液学検査,血液生化学検査,剖検および病理組織検査では被験物質投与に起因する変化は認められなかった.

2. 生殖発生毒性

親動物では,性周期,交尾率,受胎率,黄体数,着床数,着床率,分娩率,出産率,妊娠期間,分娩および哺育行動のいずれにも被験物質に起因する変化は認められなかった.児動物では,出産児数,出産生児数,性比,出生率,新生児の4日の生存率,外表,一般状態,体重および剖検のいずれにも被験物質に起因する変化は認められなかった.

以上の結果から,C.I.ピグメントレッド22の反復投与毒性に関する無影響量は雌雄とも300 mg/kg/day,生殖発生毒性に関する無影響量は親動物および児動物ともに1000 mg/kg/dayと考えられる.

方法

1. 被験物質

C.I.ピグメントレッド22[大日本インキ化学工業(株)(茨城県),ロット番号000207,純度 99 wt%以上]は,水,熱,光に対して安定で,水,アセトンおよびDMSOに不溶な赤色粉末である.被験物質は密閉容器に入れ室温・暗所で保存し,試験期間中安定であることを確認した.被験物質は媒体[0.1 %Tween80(東京化成工業(株))添加0.5 %CMC-Na(岩井化学薬品(株))水溶液]に懸濁させ,投与に供するまで冷蔵・遮光下で保存し,調製後8日以内に使用した.なお,投与開始前に投与液中の被験物質の均一性および調製後8日間の安定性を確認した.また,初回調製時に投与液中の被験物質濃度が設定値どおりであることを確認した.

2. 試験動物

日本チャールス・リバー(株) から入手した雌雄のSD系ラット[Crj:CD(SD)IGS,SPF]を6日間検疫・馴化後,試験に供した.投与開始前日に体重層別化無作為抽出法により,1群あたり雌雄各12匹に振り分けた.投与開始時の週齢は雌雄とも9週齢,体重範囲は雄が309〜355 g,雌が206〜232 gであった.検疫・馴化期間を含む全飼育期間を通じて,温度22 ± 2 ℃,相対湿度55±15 %,換気約12回/時,照明12時間/日(7:00-19:00)に自動調節した飼育室を使用した.動物飼育には,妊娠・哺育期間を除く期間はステンレス製つり下げ式金網製ケージを,妊娠・哺育期間は実験動物用床敷(ベータチップ,日本チャールス・リバー(株))を敷いたポリカーボネート製ケージを使用した.交配期間は雌雄各1匹,哺育期間は1腹,検疫・馴化期間を含むその他の期間は1匹ずつ収容した.動物には,オートクレーブ滅菌した実験動物用固型飼料(CRF-1,オリエンタル酵母工業(株))と,孔径5 μmのフィルター濾過後,紫外線照射した水道水を自由に摂取させた.

3. 投与量および投与方法

投与用量は用量設定試験の結果を参考に決定した.すなわち被験物質を0,100,300および1000 mg/kgの用量で,1群雌雄各3匹のSD系ラットに14日間反復経口投与した結果,一般状態,体重,摂餌量,血液学検査,器官重量および剖検のいずれにも被験物質投与に起因する明確な毒性変化は認められなかった.これらのことから,高用量はOECDガイドラインで規定されている上限の1000 mg/kgとし,以下公比約3で中用量は300 mg/kg,低用量は100 mg/kgの3用量を設定した.また,媒体のみを投与する対照群を設けた.

投与経路は経口とした.投与期間は,雄は交配前14日間および交配期間を経て剖検前日までの計37日間,雌は交配前14日間,交配期間,妊娠期間および分娩を経て哺育4日までの計42〜47日間とした.なお,非分娩動物は剖検前日までとした.投与の際はテフロン製胃ゾンデを用いて1日1回,午前中に強制経口投与した.投与液量は10 mL/kgとし,至近日に測定した体重に基づいて算出した.

4. 反復投与毒性に関する観察・検査項目

1) 一般状態

全例について,生死,外観,行動等を投与前および投与後に毎日観察した.

2) 体重および摂餌量

体重は,雌雄とも投与開始日,投与開始後3,7,14日およびそれ以降の期間は週1回,交尾が成立した雌は妊娠0,7,14,20日および哺育0,4日に測定した.また雄では,投与開始日の体重を基準に,雌では交配前,妊娠および哺育期間をそれぞれ投与開始日,妊娠0日および哺育0日の体重を基準に体重増加量を算出した.摂餌量は,交配期間を除き体重測定日に測定した.

3) 血液学検査

雌雄の全例について,解剖日の前日夕方より約21時間絶食させ,チオペンタールナトリウムの腹腔内投与による麻酔下で,後大静脈より採血した.採取した血液をEDTA-2Kにより凝固処理し,赤血球数(シースフローDCインピーダンス検出法),白血球数(RF/DCインピーダンス検出法),血小板数(シースフローDCインピーダンス検出法),ヘモグロビン濃度(SLSヘモグロビン法),ヘマトクリット値(赤血球パルス波高値検出法)を多項目自動血球分析装置(NE-4500,シスメックス(株)),白血球百分率(Wright染色塗抹標本)を血液細胞自動分析装置(MICROX HEG-50,オムロン(株)),網状赤血球数(アルゴンレーザーを用いたフローサイトメトリー法)を自動網赤血球測定装置(R-2000,シスメックス(株))を用いて測定した.また,検査結果から平均赤血球容積(MCV),平均赤血球血色素量(MCH),平均赤血球血色素濃度(MCHC)を算出した.血液の一部を3.2 %クエン酸三ナトリウム水溶液で凝固処理し,遠心分離して得られた血漿を用いプロトロンビン時間(Quick一段法),活性化部分トロンボプラスチン時間(活性化セファロプラスチン法)を血液凝固自動分析装置(KC10A,アメルング社)を用いて測定した.

4) 血液生化学検査

雌雄の全例について,解剖日に採取した血液を室温で約30分間静置後遠心分離し,得られた血清を用いてGOT(JSCC改良法),GPT(JSCC改良法),γ-GTP(SSCC改良法),ALP(JSCC改良法),総ビリルビン(BOD法),尿素窒素(Urease-GLDH法),クレアチニン(Jaff法),グルコース(Glck-G6PDH法),総コレステロール(CES-CO-POD法),トリグリセライド(LPL-GK-G3PO-POD法),総蛋白(Biuret法),アルブミン(BCG法),A/G比(総蛋白およびアルブミンより算出),カルシウム(OCPC法),無機リン(PNP-XOD-POD法),ナトリウム,カリウム,クロール(イオン選択電極法)を自動分析装置(日立736-10形,(株)日立製作所)を用いて測定した.

5) 病理学検査

雌雄の全例について最終投与日の翌日に,チオペンタールナトリウムの腹腔内投与による麻酔下で腹大動脈の切断・放血により安楽死させて解剖した.全生存動物は,脳,心臓,肝臓,腎臓,副腎,胸腺,脾臓,精巣および精巣上体の重量を測定した.また,解剖日の体重を基に相対重量(対体重比)を算出した.さらに,これらの器官に加えて,下垂体,リンパ節(下顎・腸間膜),気管,肺,胃,腸管(十二指腸,空腸,回腸,盲腸,結腸,直腸),甲状腺・上皮小体,膀胱,精のう,前立腺腹葉,卵巣,子宮,膣,骨髄(大腿骨),坐骨神経,脊髄および肉眼的異常部位を採取し,10 %中性リン酸緩衝ホルマリン液で固定して保存した.ただし,精巣および精巣上体はブアン液で固定した.病理組織学検査は,対照群と1000 mg/kg群の雌雄全例について上記の器官・組織および非妊娠雌動物の卵巣,ならびに全動物の肉眼的異常部位を常法に従ってヘマトキシリン・エオジン染色標本を作製し,鏡検した.

5. 生殖発生毒性に関する観察・検査

1) 生殖機能検査

投与開始日から交配開始日まで雌の膣垢を毎日午前中に採取し,性周期を検査し,平均性周期日数を算出した.交配前の投与期間終了後,各群内で雄1雌1の交配対を設けて14日を限度に昼夜同居させた.交尾確認は毎日午前中に行い,膣栓形成あるいは膣垢標本中に精子が認められた場合を交尾成立とし,その日を妊娠0日とした.交配した対は雌雄を分離し,以後の検査に供した.これらの結果から,交尾所要日数(交配開始後,交尾成立までに要した日数),交尾成立までに逸した発情期の回数,交尾率[(交尾動物数/同居動物数)× 100],受胎率[(受胎動物数/交尾動物数)× 100]を算出した.

2) 分娩・哺育状態

交尾が確認された雌は全例を自然分娩させ,分娩状態を観察した.午前9時の時点で分娩が完了している動物を当該日分娩とし,その日を哺育0日とした.その後,新生児を生後4日(哺育4日)まで哺育させ,授乳,営巣,食殺の有無等の哺育状態を毎日観察した.母動物は剖検時に卵巣および子宮を摘出し,黄体数および着床数を検査した.これらの結果から,妊娠期間(妊娠0日から出産が確認された日までの日数),出産率[(生児出産雌数/受胎雌数)× 100],着床率[(着床数/黄体数)× 100],分娩率[(総出産児数/着床数)× 100]を算出した.

3) 新生児の観察・検査

(1) 新生児の観察

哺育0日に出産児数(出産生児数,死亡児数),性別および外表異常の有無を検査した.その後は,一般状態,死亡の有無を哺育4日まで毎日観察した.哺育0および4日の生存児数から出生率[(出産生児数/総出産児数)× 100],新生児の4日の生存率[(哺育4日生児数/出産生児数)× 100]を算出した.

(2) 体重

生後0および4日に全生存児を個体ごとに測定した.また,生後0日の体重を基準に体重増加量を算出した.

(3) 剖検

生後4日に全生存児の口腔を含む外表を検査した後,親動物と同様に安楽死させ,剖検した.死亡動物については10 %中性リン酸緩衝ホルマリン液に浸漬,固定した後,実体顕微鏡下で剖検した.

6. 統計学的解析

計量データについて,パラメトリックデータはBartlett法による等分散性の検定を行い,分散が等しい場合は一元配置分散分析を行った.分散が等しくない場合およびノンパラメトリックデータはKruskal-Wallisの検定を行った.群間に有意差が認められた場合はDunnett法またはDunnett型の多重比較を行った.計数データのうち病理組織所見はa × bのχ2検定を行い,有意差が認められた場合はArmitageのχ2検定により対照群と各被験物質投与群間の比較を行った.その他の計数データはFisherの直接確率法により検定した.各検定の有意水準は5 %とした.新生児に関するデータは各母動物ごとに算出した平均値を標本単位とした.

結果

1. 反復投与毒性

1) 一般状態

死亡例は雌雄ともいずれの投与群においても認められなかった.被験物質投与群の雌雄全例で,投与した被験物質と同様の色調を呈する赤色便が投与開始日の翌日から,毎日観察された.このほか,1000 mg/kg群の雄2例で軟便が投与開始後22日に一過性にみられたが,毒性変化と考えられる一般状態の異常は,雌雄ともにいずれの投与群においても認められなかった.

2) 体重(Fig. 1, 2)

雌雄とも,全観察期間を通じて体重および体重増加量ともに被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.

3) 摂餌量

雌雄とも,全観察期間を通じて被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.

4) 血液学検査(Table 1)

雄では,100 mg/kg群でプロトロンビン時間が対照群と比べ有意な短縮を示したが,300および1000 mg/kg群では変化はみられなかったことから,偶発的な変化と判断した.雌では,各検査項目のいずれにも被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.

5) 血液生化学検査(Table 2)

雄では,1000 mg/kg群でA/G比が対照群と比べ有意な高値を示した.しかし,総蛋白およびアルブミンに変動はなくわずかな高値であることから,生理的範囲内の変動と考えられ,被験物質投与に起因するものではないと判断した.雌では,100 mg/kg群でASAT(GOT)が対照群と比べ有意な高値を示したが,300および1000 mg/kg群では変化はみられなかったことから,偶発的な変化と判断した.

6) 器官重量(Table 3)

雄では,1000 mg/kg群で肝臓の相対重量が対照群と比べ有意な高値を示した.この他,300 mg/kg群で脾臓の絶対重量が対照群と比べ有意な低値を,100および300 mg/kg群で副腎の相対重量が対照群と比べ有意な高値を示したが,1000 mg/kg群で変化がないことから,偶発的な変化と判断した.雌では,1000 mg/kg群で肝臓の絶対重量と相対重量が対照群と比べ有意な高値を示した.100および300 mg/kg群ではいずれの器官においても対照群との間に有意な差は認められなかった.

7) 剖検所見

被験物質に起因すると思われる変化が胃腸管に認められた.被験物質と同様の色調を呈し,赤く着色された内容物が,胃では1000 mg/kg群の雄3例,小腸および大腸では100 mg/kg群の雄全例と雌2例,300および1000 mg/kg群の雌雄全例に認められた.この他,肺の限局性出血,収縮不全および白色斑,胃のタール様内容物,肝臓の白色斑,腎盂腔の拡張,子宮の膨満,膣の膨満,脳室の拡張が認められた.しかし,その発現状況に一定の傾向がないことから,被験物質投与とは関連のない偶発的な変化と判断した.

8) 病理組織所見(Table 4)

被験物質に起因すると思われる変化は認められなかった.なお,剖検時に胃腸管内容物の被験物質による着色がみられたが,胃腸管粘膜にそれと関連する組織学的変化は認められなかった.この他,対照群を含む各群で種々の変化が認められたが,所見の発現頻度に一定の傾向がなく,いずれの所見にも被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかったことから,被験物質投与とは関連のない偶発的な変化と判断した.

2. 生殖発生毒性

1) 生殖機能(Table 5)

性周期検査では,平均性周期日数で被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.また,不整性周期を示す動物は対照群を含む全群で認められなかった.交尾は対照群を含む全群で成立し,交尾率,交尾所要日数,交尾成立までに逸した発情期の回数ともに被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.なお,非妊娠動物が100 mg/kg群で1例,300 mg/kg群で2例にみられたが,受胎率に被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.

2) 分娩・哺育状態(Table 6)

各群とも母動物のほぼ全例が交尾成立後22または23日に正常に分娩し,妊娠期間,黄体数,着床数,着床率,分娩率および出産率のいずれにも被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.また,各群いずれの母動物にも哺育行動に異常は認められなかった.

3) 新生児に及ぼす影響

(1) 新生児の観察(Table 6)

出産児数,出産生児数,性比,出生率および新生児の4日の生存率ともに被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.一般状態の観察では,皮下出血が対照群,腹腔内出血が100 mg/kg群でそれぞれ1〜2例にみられたが,その発現状況から被験物質投与に起因する変化ではないと判断した.また,未授乳児が対照群,300および1000 mg/kg群の出生日に数例みられたが,翌日には授乳が確認されていることから,被験物質投与に起因する変化ではないと判断した.また,対照群を含む各群で新生児の外表に異常は認められなかった.

(2) 体重(Table 6)

雌雄の体重および体重増加量とも被験物質投与群と対照群との間に有意な差は認められなかった.

(3) 剖検

腹腔内出血および肝臓の黄白色斑が100 mg/kg群の雄1例,腎盂拡張が1000 mg/kg群の雄2例にみられたのみで,1000 mg/kg群で多発することがなかったことから被験物質投与に起因する変化ではないと判断した.また,哺育4日までの死亡児では異常は認められなかった.

考察

1. 反復投与毒性

被験物質の反復投与による一般毒性学的影響として,1000 mg/kg群の雌雄で肝臓重量の増加が認められた.しかし,病理組織検査で肝臓の重量増加に影響を及ぼすような病変は観察されなかったこと,血液生化学検査でも肝機能への影響を示唆する変化がないことから,本変化の毒性学的意義は低いものと考えられる.

一般状態では,投与した被験物質と同様の色調を呈する赤色便が,雌雄の被験物質投与群全例で連日観察され,剖検の結果,胃腸管には赤く着色された内容物が認められた.しかし,病理組織検査では胃腸管粘膜に内容物の着色と関連するような組織変化は認められなかったことから,これら一連の着色は被験物質の色調を示したものであり,毒性学的意義のない変化と判断した.その他,体重,摂餌量,血液学検査および血液生化学検査では被験物質投与に起因する変化は認められなかった.

被験物質と同様の不溶性アゾ顔料である化学物質では,肝臓および腎臓などに病理組織変化がみられ3, 4),ヘマトクリット値およびヘモグロビン濃度などへの影響も報告されている5).しかし,本試験条件下では1000 mg/kg群で肝臓の軽度な重量増加がみられただけで,肝機能障害を及ぼすことはなく,血液学検査でも変化がなかったことから,被験物質は他の不溶性アゾ顔料より,その毒性は弱いものと推察された.

2. 生殖発生毒性

親動物の生殖機能としては,性周期,交尾率,受胎率,黄体数,着床数,着床率,分娩率,出産率,妊娠期間,分娩および哺育行動のいずれにも被験物質の影響を示唆する変化は認められなかった.また,新生児の検査においても,出産児数,出産生児数,性比,出生率,新生児の4日の生存率,外表,一般状態,体重および剖検のいずれにも被験物質に起因する変化は認められなかった.したがって,被験物質投与による親動物の生殖機能,分娩・哺育機能および次世代の発育への影響はないと考えられる.

以上の結果から,C.I.ピグメントレッド22の反復経口投与による一般毒性学的影響として,1000 mg/kg群の雌雄で肝機能障害を及ぼさない肝臓重量の増加がみられ,本試験条件下における反復投与毒性に関する無影響量は雌雄とも300 mg/kg/dayと考えられる.また,生殖発生に及ぼす影響は認められず,生殖発生毒性に関する無影響量は親動物および児動物ともに1000 mg/kg/dayと考えられる.

文献

1)化学工業日報社,“12695の化学商品,”東京,1995, p.1099.
2)星野信人ら,化学物質毒性試験報告,10, 293(2003).
3)D. L. Morgan, Food. Chem. Toxicol. 27, 793(1989).
4)NTP working group, National Toxicology Program Technical Report Series, No.407(1992).
5)NTP working group, National Toxicology Program Technical Report Series, No.411(1992).

連絡先
試験責任者:星野信人
試験担当者:竹田みどり,土居卓也,豊田直人,鈴木美江
(株)三菱化学安全科学研究所鹿島研究所
〒314-0255 茨城県鹿島郡波崎町砂山14
Tel 0479-46-2871Fax 0479-46-2874

Correspondence
Authors:Nobuhito Hoshino(Study director)
Midori Takeda, Takuya Doi, Naoto Toyota, Yoshie Suzuki
Kashima Laboratory, Mitsubishi Chemical Safety Institute Ltd.
14 Sunayama, Hasaki-machi, Kashima-gun, Ibaraki, 314-0255, Japan
Tel +81-479-46-2871Fax +81-479-46-2874