その結果,2000 mg/kg 投与群の雄3例および雌全例では,観察初期に一過性の軟便排泄が観察されたが,その他には全例において一般状態の変化はみられなかった.また,体重の推移についても,全例とも順調に増加し,被験物質投与の影響を示唆する明らかな変化は認められず,剖検所見でも全例で著変は認められなかった.
以上のことから,本試験条件下における1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウムのLD50値は,雌雄ともに2000 mg/kgを上回ると判断された.
投与検体は,被験物質を日局注射用水(製造番号9707SA,光製薬(株))に溶解して10 w/v%溶液を調製し,気密容器に入れ,翌日の投与時まで冷蔵,遮光下で保存した.動物試験に先立ち,被験物質の0.05および10 w/v%溶液について,冷蔵,遮光条件下における調製後8日間の安定性を確認した.また,投与検体中の被験物質の平均含量は99.0 %であった.
全飼育期間を通じ,動物を金属製金網床ケージに1匹ずつ収容し,温度22〜25 ℃,湿度50〜65 %,換気回数約15回/時,照明12時間(7時〜19時点灯)に制御された飼育室で,固型飼料(CE-2,日本クレア(株))および水道水(秦野市水道局給水)を自由に摂取させて飼育した.
投与容量は体重1 kg当たり20 mLとし,動物を投与前約18時間絶食させた後,投与直前に測定した体重を基に投与液量を算出し,ラット用胃管を用いて強制的に単回経口投与した.給餌は投与約3時間後に開始した.
体重は全例について,投与直前,観察第2,4,8,11および15日に測定した.
剖検は,観察第15日に全例をペントバルビタール・ナトリウム麻酔下で放血屠殺して実施した.なお,剖検所見に特記すべき変化が認められなかったため,組織学検査は実施しなかった.
体重では,雄は観察第8日以降に2000 mg/kg投与群が対照群と比較して有意な高値を示し,雌では観察第8および11日に2000 mg/kg投与群が有意な低値を示した.2000 mg/kg投与群の雌を含め,いずれの個体も順調な体重増加を示していたことから,これらの有意差は被験物質投与に起因する変化ではないと考えられる.
剖検では,雌雄全例の器官・組織に肉眼的異常所見は認められなかった.
以上の結果より,本試験条件下では被験物質投与との関連を示唆する変化は,観察初期にみられた一過性の軟便排泄のみであった.1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウムのLD50値は,雌雄ともに2000 mg/kgを上回ると判断された.
連絡先 | |||
試験責任者: | 永田伴子 | ||
試験担当者: | 関 誠,堀内伸二,三枝克彦,稲田浩子,安生孝子 | ||
(財)食品薬品安全センター秦野研究所 | |||
〒257-8523 神奈川県秦野市落合729-5 | |||
Tel 0463-82-4751 | Fax 0463-82-9627 |
Correspondence | ||||
Authors: | Tomoko Nagata(Study director) Makoto Seki, Shinji Horiuchi, Katsuhiko Saegusa, Hiroko Inada, Takako Anjo | |||
Hatano Research Institute, Food and Drug Safety Center | ||||
729-5 Ochiai, Hadano-shi, Kanagawa, 257-8523, Japan | ||||
Tel +81-463-82-4751 | Fax +81-463-82-9627 |