C.I.ピグメントブルー29のラットを用いる単回経口投与毒性試験

Single Dose Oral Toxicity Test of C.I. Pigment Blue 29 in Rats

要約

 C.I.ピグメントブルー29を雌ラットに1回経口投与し,その毒性について検討した.投与量は,第1回試験および第2回試験とも2000 mg/kgとした.媒体には1 w/v%メチルセルロース溶液を用いた.使用動物数は各3例とした.

 死亡例は,第1回試験および第2回試験とも2000 mg/kg投与で認められなかった.

  一般状態において,2000 mg/kg投与で被験物質色に基づく青色便がみられたのみであった.2000 mg/kg投与では,体重推移に異常はみられなかった.剖検において,2000 mg/kg投与では異常はみられなかった.

 以上の結果から,C.I.ピグメントブルー29の急性毒性は,GHSのカテゴリー5に分類される.

方法

1. 被験物質および媒体

 C.I.ピグメントブルー29は,SiO2を39.60 %,Al2O3を23.76 %,Fe2O3を0.45 %,Sを12.08 %,Na2Oを22.59 %含む(不明1.52 %,但し,各成分1 %未満)コバルト色の非常に鮮明な群青であり,粒子径は0.3〜2μである.水および多くの有機溶媒に不溶であり,臭素水に可溶であり,酸と容易に反応し,硫化水素ガスを発生し,分解する[Lot No. E0311323,第一化成工業(兵庫)].入手後は,冷蔵の条件下で保管した.投与終了後に被験物質を分析し,使用期間中安定であったことを確認した.

 C.I.ピグメントブルー29は,1 w/v%メチルセルロース溶液で所定濃度となるように懸濁して調製した.なお,被験物質の調製に際して,純度による換算は実施しなかった.1および100 mg/mLの調製液は,調製後,冷蔵の条件下で9日間保管しても安定性に問題のないことが確認されている.調製液は用時調製とし,調製後6時間以内に使用した.投与に使用した投与検体中の被験物質濃度を測定した結果,被験物質含量および均一性に問題はなかった.

2. 使用動物および飼育条件

 7週齢のCrj:CD(SD)IGS雌ラット(SPF)を日本チャールス・リバーから購入した.入手した動物は,5日間の検疫期間およびその後2日間の馴化期間を設け,一般状態および体重推移に異常の認められなかった動物を群分けした.群分けは,第1回試験および第2回試験とも投与日にコンピュータを用いて無作為抽出法で行った.

 動物は,室温20〜24 ℃,湿度42〜62 %,明暗各12時間(照明:午前6時〜午後6時),換気回数12回/時に維持された飼育室で飼育した.検疫・馴化期間中および群分け後とも,ステンレス製ケージを用いて個別飼育した.飼料は,固型飼料(CRF-1,オリエンタル酵母工業)を自由に摂取させた.ただし,投与前日の夕刻から投与までの約18時間30分と投与後約6時間まで絶食した.飲料水は,水道水を自由に摂取させた.ただし,群分け時から投与後約6時間までは絶水した.

3. 投与経路,投与方法および投与量

 投与経路は,経口投与を選択した.投与に際しては,金属製経口胃ゾンデを取り付けたポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒を用いて,強制経口投与した.投与液量は,投与直前に測定した体重を基準として20 mL/kgで算出した.投与回数は1回とした.投与日の週齢は8週齢であり,体重範囲は183〜190 gであった.

 C.I.ピグメントブルー29のラット経口投与によるLD50値は10000 mg/kg以上との情報がある1).従って,OECD Test Guideline 423で最高用量とされている2000 mg/kgを第1回試験の投与量とした.第1回試験の2000 mg/kg投与で死亡例が認められなかったため,2000 mg/kgを第2回試験の投与量とした.使用動物数は各3例とした.

4. 観察および検査項目

1) 観察期間

 投与後14日間とした.

2) 一般状態

 投与日は投与後6時間(投与直後〜投与後30分,投与後2,4および6時間)まで,投与翌日からの観察期間中は1日1回,一般状態および死亡の有無を観察した.

3) 体重測定

 投与日ならびに投与後1,3,7,10および14日に測定した.

4) 剖検

 動物は,観察期間終了時にジエチルエーテル麻酔下で腹大動脈から放血致死させた後に剖検した.

5. 統計解析

 LD50値は概略の範囲を推定した.

 体重は,各群で平均値および標準偏差を算出した.

結果

1. 死亡状況,LD50値および一般状態

 死亡例は,第1回試験および第2回試験の2000 mg/kg投与とも認められなかった.以上の結果から,C.I.ピグメントブルー29のLD50値は,2000 mg/kgを越えると推定される.

 一般状態において,第1回試験および第2回試験の2000 mg/kg投与で投与後1日に青色便が各3例にみられた.

2. 体重

 第1回試験および第2回試験の2000 mg/kg投与とも,体重は順調に推移した.

3. 剖検

 第1回試験および第2回試験の2000 mg/kg投与とも,異常はみられなかった.

考察

 C.I.ピグメントブルー29の急性毒性は,GHSのカテゴリー5に分類される.

 C.I.ピグメントブルー29の2000 mg/kg投与により青色便が認められたが,これは被験物質色に基づくものであり,毒性変化ではないと考えられる.また,2000 mg/kgを投与しても,体重および剖検所見にも異常はみられなかった.

文献

1) 第一化成工業,未発表

連絡先
試験責任者: 古橋忠和
試験担当者: 藤村高志,内藤一嘉,吉島賢一,
伊藤 格
(株)日本バイオリサーチセンター 羽島研究所
〒501-6251 岐阜県羽島市福寿町間島6-104
Tel 058-392-6222 Fax 058-392-1284

Correspondence
Authors: Tadakazu Furuhashi(Study director)
Takashi Fujimura, Kazuyoshi Naito,
Ken-ichi Yoshijima, Tadashi Ito
Hashima Laboratory, Nihon Bioresearch Inc.
6-104, Majima, Fukuju-cho, Hashima, Gifu, 501-6251, Japan
Tel +81-58-392-6222 Fax +81-58-392-1284