4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムの
ラットを用いた経口投与による急性毒性試験

Acute Oral Toxicity Study of Monosodium 4-amino-5-hydroxy-2,7-naphthalenedisulfonate in Rats

要約

4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムの急性毒性を明らかにするため、雌雄各5匹のSD系〔Crj:CD(SD)〕ラットを用い、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムの2,000 mg/kg用量を単回経口投与した。投与後14日間の観察期間を通じて、ラットに一般状態の変化や死亡は認められず、体重も順調な増加を示した。また、観察終了時に実施した剖検においても、異常は認められなかった。以上の結果から、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムはラットに対する最小致死量が、2,000 mg/kg以上で、急性毒性の弱い物質と考えられた。

緒言

この試験は、厚生省の既存化学物質安全性点検事業の一環として実施したものであり、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムをラットに経口投与し、本物質の急性毒性を検討したので、その結果を報告する。

方法

1.被験物質

4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムは、分子量341.30(無水)の水にやや溶けにくい淡褐色の粉末で、試験には東京化成工業株式会社(東京)から提供されたもの(ロット番号AZ01)を用いた。供試された4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムの純度は87.4%(無水成分として)で、残部は結晶水や付着水などの水分であったことから、使用に当たっては純度換算した。

2.供試動物および飼育条件

動物は、日本チャールス・リバー(株)より導入したSD系〔Crj:CD(SD)〕ラットを、雌雄各5匹用いた。投与時の平均体重(体重の範囲)は、雄144(137〜150)g、雌121(114〜127)gであった。ラットの飼育は、馴化期間および投与後の観察期間を通じて、温度22±3℃、相対湿度55±10%、換気回数10回以上/時(オールフレッシュエアー方式)、照明12時間(午前6時点灯、午後6時消灯)に設定されたバリアーシステム動物室で、ステンレス製金網ケージに2または3匹ずつ雌雄別に収容して行った。飼料〔日本農産工業(株)、固型飼料ラボMRストック〕と水(1μmカートリッジフィルター濾過後紫外線照射した殺菌水道水)は自由に摂取させた。ただし、投与前日午後5時から投与後3時間までは除餌し、水のみを与えた。

3.投与量および投与方法

投与量設定のため予備試験を実施した結果、2,000 mg/kg投与によっても死亡はみられず、被験物質は急性毒性の弱い物質であると推測された。従って、用量は2,000 mg/kgの1用量とした。被験物質はメチルセルロース〔和光純薬工業(株)、100cP〕の1.0 w/v%水溶液〔水は局方精製水、共栄製薬(株)〕を媒体にした20w/v%の懸濁液に調製し、体重1kgあたり10mlを胃ゾンデを用いて強制的にラットの胃内に単回経口投与(投与時刻:午前10時15分〜10時20分)した。調整した投与液は分析し、所定濃度に調製されていることを確認した。

4.観察

観察期間は投与後14日間とし、その間の一般症状の観察と生死の確認は、投与日においては投与後1時間までと投与後約3時間および6時間までにそれぞれ1回ずつ、翌日(投与後1日)以降は午前9時から午後5時までの間に少なくとも1回行った。体重は投与直前(投与0日)、投与後1、3、7および14日に測定し、測定日間の体重増加量を算出した。剖検は、観察期間終了後に動物をエーテル麻酔死させて行った。

結果

1.死亡率および致死量

2,000 mg/kg投与において、雌雄とも死亡動物は認められず、最小致死量は2,000 mg/kg以上であった。

2.一般症状および体重

観察期間を通じて、雌雄とも一般症状の変化は認められなかった。また、体重も順調に増加し、被験物質投与の明かな影響は認められなかった。

3.剖検所見

観察期間終了後の剖検において、雌雄とも臓器の肉眼的な異常は認められなかった。

考察

4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムのラットにおける急性経口毒性試験を実施した。その結果、OECDの毒性試験法ガイドラインで規定された限界用量である2,000mg/kgの投与においても死亡は認められず、最小致死量は2,000mg/kg以上であると推定された。また、一般症状、体重増加並びに剖検所見においても、毒性影響を示唆する変化は認められず、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2, 7−ナフタレンジスルホン酸モノナトリウムは急性毒性の弱い物質であると考えられた。

連絡先:
試験責任者山本譲
(財)畜産生物科学安全研究所
〒 229 神奈川県相模原市橋本台 3-7-11
Tel 0427-62-2775Fax 0427-62-7979

Correspondence:
Yamamoto, Yuzuru
Research Institute for Animal Science in Biochemistry and Toxicology, Japan
3-7-11 Hashimotodai, Sagamihara-shi, Kanagawa, 229, Japan
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