| 1. | 一般状態:死亡例はなく、異常症状は観察されなかった。 |
| 2. | 体重:各投与群とも対照群とほぼ同様の推移を示した。 |
| 3. | 摂餌量、摂水量、尿検査:被験物質の投与に起因すると思われる変動はみられなかった。 |
| 4. | 血液学的検査:1000 mg/kg群の雄でプロトロンビン時間が有意な延長を、200および1000 mg/kg群の雌で赤血球数が有意な低値を、1000 mg/kg群の雌で平均赤血球色素量が有意な高値を示したが、いずれも回復期間終了時には消失した。 |
| 5. | 血液化学的検査:1000 mg/kg群の雌雄でGPTが有意な高値を示したが、回復期間終了時には消失した。 |
| 6. | 剖検所見:被験物質の投与に起因すると思われる変化はみられなかった。 |
| 7. | 器官重量:絶対重量および相対重量がともに有意差を示す器官は認められなかった。 |
| 8. | 病理組織学的検査:被験物質の投与に起因すると思われる組織変化は認められなかった。 |
以上の如く、n−ヘキサデカンの28日間経口投与により、200 mg/kg以上の雌で赤血球数の低値が、1000 mg/kgの雄でプロトロンビン時間の延長および雌雄でGPTの高値が認められた。しかしながら、これらの変動は14日間の回復期間後には消失する可逆性変化であった。したがって、当試験条件下におけるn−ヘキサデカンの毒性学的無影響量は、雌で40 mg/kg、雄で200 mg/kgと推測された。
媒体として、コーンオイルを用いた。
コーンオイル中の20および0.2%のn−ヘキサデカンは、室温・暗所保管で調製後10日間までの安定性が確認された。そこで、20、4および0.8%投与検体は調製後1日分ずつ分割して室温・遮光・気密下で保存し、1週間以内に使用した。また、0.16%投与検体液は用時調製した。
投与開始前および投与終了前の2回、調製検体液を財団法人日本食品分析センター名古屋支所に送付し、ガスクロマトグラフィーにより被験物質濃度を測定した。その結果、被験物質濃度は適正範囲内の値を示した。
体重を層別に分けた後、無作為抽出法により各群の平均体重および分散がほぼ等しくなるように、投与開始の前日に群分けした。一群の動物数は、雌雄各10あるいは15匹ずつとした。なお、動物の体重の変動範囲は平均値から±20%を越えないことを確認した。
検疫・馴化期間中の動物は入手日に油性インクならびに色素による染毛法により、群分け後の動物は色素による染毛法および耳パンチ法を併用して識別した。
動物飼育ケージは、検疫・馴化期間中はステンレス製懸垂式ケージ(W:240×D:380×H:200 mm)を用いて1ケージあたり5匹までの群飼育とし、群分け後にはステンレス製五連ケージ(W:755×D:210×H:170 mm)を用いて個別飼育した。ステンレス製懸垂式ケージおよびステンレス製五連ケージの受け皿交換、給水瓶交換は1週間に2回以上、ステンレス製懸垂式ケージの交換およびステンレス製五連ケージの交換(給餌器とも)は2週間に1回以上行った。
飲料水は、水道水を給水瓶を用いて自由に摂取させた。
飼料中の微量金属および汚染物質の分析ならびに飲料水の水質検査の結果、いずれも検査結果は試験施設で定めた基準値の範囲内であった。
投与液量は投与日あるいは投与日に最も近い測定日の体重を基準とし、5 ml/kg体重で算出した。投与開始時の体重範囲は、雄が181〜213 g、雌が144〜178 gであった。
投与期間は、化審法のスクリーニング毒性試験法に準じて1日1回で28日間反復投与とした。また、28日間投与後に一部の動物について14日間の回復期間を設けた。
*:投与期間終了時剖検例数
#:回復期間終了時剖検例数
3時間尿:色調は、外観判定とした。pH、潜血、蛋白、糖、ケトン体、ウロビリノーゲン、ビリルビンは、エームスクリニテック用検査紙(マイルス・三共株式会社)に尿を滴下後に、エームス尿分析器(クリニテック200、エームス)を用いて検査した。尿沈渣は、沈渣を尿沈渣染色液で染色後に顕微鏡下で観察した。なお、3時間(投与期間中は当日の検体投与後、ほぼ午前10時〜午後1時)で所定量の採尿ができない場合には、翌日に採尿して検査した。
21時間尿:比重を、屈折型比重計(ユリペット、日本光学工業株式会社)を用いて測定した。
24時間尿:尿量を重量により測定した。
プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は、3.13%クエン酸ナトリウムで処理した血漿について、散乱光検出方式によりコアグマスター�供併斡Τ�式会社)を用いて測定した。
赤血球数(RBC)、白血球数(WBC)、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値および血小板数は、EDTA-2KコーティングしたSysmexサンプルカップに採取した血液について、Sysmex多項目自動血球計数装置(E-2000、東亜医用電子株式会社)を用いて測定した。さらに、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)を算出した。
網状赤血球数(Ret)は、EDTA-2K処理した血液をBrecher法により超生体染色してスライドグラスに塗抹後、Giemsa染色した標本を作製して顕微鏡下で赤血球1000個中の数を計数した。
白血球百分率は、EDTA-2K処理した血液をスライドグラスに塗抹し、May-Giemsa染色した標本を作製して顕微鏡下で白血球100個を分類計数した。
GOTおよびGPTはHenry変法、ALPはρ-NPP基質法、γ-GTPはγ-G-P-NA基質法、総コレステロール(T-Cho)はCOD・DAOS法、トリグリセライド(TG)はGPO・DAOS法、総蛋白(TP)はBiuret法、尿素窒素(BUN)は酵素法、クレアチニンはJaff
法、総ビリルビン(T-Bil)はAzobilirubin法、ブドウ糖(Glucose)はGlucose dehydrogenase法、Caはo-CPC法、無機リン(IP)はMolybdenum blue法により、自動分析装置(AU 500、オリンパス光学工業株式会社)を用いて測定した。
NaおよびKは、炎光光度法により炎光光度計(FLAME-30C、日本分光メディカル株式会社)を用いて測定した。
Clは、電量滴定法によりCHLOR METER(C-200AP、株式会社常光)を用いて測定した。
蛋白分画[アルブミン;α1-、α2-、α3-、β-、γ-グロブリン]は、自動電気泳動装置(AES 600、オリンパス光学工業株式会社)を用いて測定した。
A/G(アルブミン/グロブリン)比およびアルブミン量は、総蛋白量および蛋白分画値から算出した。
脳(大脳、小脳、延髄)、肝臓、腎臓、副腎、精巣または卵巣。
心臓、肺、肝臓、胃、脾臓、腎臓、膀胱、精巣、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、上皮小体、脳(大脳、小脳、延髄)、眼球、骨髄(大腿骨)。
投与期間終了時剖検例の対照群および最高用量(1000 mg/kg)群の心臓、肝臓、脾臓、腎臓および副腎についてHematoxylin-Eosin(H-E)染色組織標本を作製し、病理組織学的検査を行った。さらに、剖検時に異常が認められた200mb/kg 群の雄2例および1000mg/kg群の雌1例の胃(その対照となる対照群の雌雄各1例の胃を含む)のH-E染色組織標本を作製し、病理組織学的検査を行った。
体重、摂餌量、摂水量、尿量、尿比重、血液学的検査、血液化学的検査、器官重量(相対重量を含む)については、各群で平均値および標準偏差を算出した。多重比較検定では、Bartlett法による等分散性の検定を行い、等分散ならば一元配置法による分散分析を行い、有意ならば対照群との群間比較はDunnett法(例数が等しい場合)またはScheff
法(例数が等しくない場合)を用いて行った。一方、等分散と認められなかった場合は、順位を利用した一元配置法による分析(Kruskal-Wallisの検定)を行い、有意ならば対照群との群間比較は順位を利用したDunnett法またはScheff
法を用いて行った。
回復期間中は、雌雄とも1000 mg/kg群の体重が対照群に比してやや高値であったが、有意差は認められなかった。
回復期間中は、1000 mg/kg群の雄で対照群に比して高値であり、回復3日には有意差が認められた。1000 mg/kg群の雌は、対照群とほぼ同程度であった。
回復期間中は、1000 mg/kg群の雌雄とも対照群に比して高値であり、回復3日の雄および回復10日の雌雄に有意差が認められた。
色調、pH、蛋白、糖、ケトン体、ビリルビン、潜血、ウロビリノーゲンおよび沈渣は、1000 mg/kg群の雌雄とも対照群とほぼ同様であった。
投与期間終了時の検査で対照群に比して有意差が認められた変化は、血液学的検査におけるプロトロンビン時間の延長(1000 mg/kg群の雄)、赤血球数の低値(200 mg/kg以上の群の雌)、平均赤血球血色素量の高値(1000 mg/kg群の雌)、血液化学的検査におけるGPTの高値(1000 mg/kg群の雌雄)、ALPの低値(1000 mg/kg群の雄)および腎臓絶対重量の高値(1000 mg/kg群の雌)であった。
プロトロンビン時間の延長は、1000 mg/kg群の雄のみに認められた。しかしながら、変動幅はわずかであり、血小板数および活性化部分トロンボプラスチン時間には影響が認められず、また病理組織学的検査でも肝臓に著変はみられなかったことから、軽度の変化と思われた。一方、赤血球数の低値は200および1000 mg/kg群の雌に認められた。両群では、ヘモグロビン量およびヘマトクリット値も低値傾向を示したが、有意差は認められなかった。また、赤血球数の低値は網状赤血球数の高値を伴う程の変動ではなかったことから、当変動も軽度のものと思われた。平均赤血球血色素量の変動は、赤血球数およびヘモグロビン量の変動比率の違いに起因したものと考えられた。GPTの高値は、1000 mg/kg群の雌雄で認められた。しかしながら、GOTには変動はみられず、ALPは雄ではむしろ低値を示した。さらに、これらの検査値に関連すると思われる器官の肝臓には組織変化がみられないことから、軽度の機能的変動に留まるものと思われた。腎臓絶対重量の高値は1000 mg/kg群の雌に認められたが、相対重量には有意な変動はないこと、腎臓に特異的な組織変化がみられないことから、毒性を示唆する所見とは考え難かった。これらの変動は、いずれも14日間の回復期間後には消失する可逆性のものであった。
その他に、摂餌量では投与期間中に1000 mg/kg群の雌で、回復期間中に同群の雄で一過性に高値が認められたが、体重に影響を及ぼす程の変動ではなかった。摂水量では、回復期間中に1000 mg/kg群の雌雄で高値が認められたが、尿量などの尿検査、尿素窒素・クレアチニンなどの腎機能および腎臓の組織検査には影響はなく、毒性を示す所見とは思われなかった。また、回復期間終了時には1000 mg/kg群の雄で総蛋白、K、Caに、雌でβ-グロブリン分画およびクレアチニンに変動が認められたが、いずれも投与期間終了時には影響がみられないことから、毒性学的な意義のない変化と考えられた。剖検では、投与期間終了時に200 mg/kg以上の群の少数例に腺胃粘膜の白色化がみられたが、必ずしも用量依存性を示さず、浮腫性変化はなく、また病理組織学的検査で著変が認められないことから、被験物質の毒性を示唆する変化とは思われなかった。また、一般状態には異常はみられず、体重、尿検査、病理組織学的検査では被験物質投与に起因すると思われる変化は認められなかった。
以上の如く、n−ヘキサデカンの28日間経口投与により、200 mg/kg以上の雌で赤血球数の低値が、1000 mg/kgの雄でプロトロンビン時間の延長および雌雄でGPTの高値が認められた。しかしながら、これらの変動は14日間の回復期間後には消失する可逆性変化であった。したがって、当試験条件下におけるn−ヘキサデカンの毒性学的無影響量は、雌で40 mg/kg、雄で200 mg/kgと推測された。
| 連絡先: | |||
| 試験責任者 | 和田浩 | ||
| (株)日本バイオリサーチセンター羽島研究所 | |||
| 〒501-64 岐阜県羽島市福寿町間島 6-104 | |||
| Tel 0583-92-6222 | Fax 0583-92-1284 | ||
| Correspondence: | |||
| Wada, Hiroshi | |||
| Nihon Bioresearch Inc., Hashima Laboratory, Japan | |||
| 6-104 Majima, Fukuju-cho, Hashima, Gifu, 501-62, | |||
| Japan | |||
| Tel 81-583-92-6222 | Fax 81-583-92-1284 | ||