投与後6時間から3日までに,雌雄の600 mg/kg投与群で各3例,1200 mg/kg投与群で全例が死亡した.
一般状態では,雌雄とも600 mg/kg以上の投与群で投与後1時間から呼吸緩徐,体温低下,横臥,自発運動の減少,外尿道口周囲被毛の汚れ等の毒性徴候が認められた.
体重では,雌雄の600 mg/kg投与群の生存例で体重増加抑制が認められた.
剖検では,雌の600および1200 mg/kg投与群の死亡例で腺胃または前胃粘膜の暗赤色斑が認められたが,雌雄とも生存例では変化は認められなかった.
本試験条件下での4-(1-メチルエテニル)フェノールのLD50値は雌雄とも585.8 mg/kgであった.
0.5 %カルメロースナトリウム水溶液を用いて被験物質を用時に懸濁した.調製液は調製後速やかに遮光気密容器に入れ投与に用いた.
投与に先立って15および120 mg/mL調製液中の4-(1-メチルエテニル)フェノールの均一性および安定性ならびに投与に用いる各濃度の調製液中の4-(1-メチルエテニル)フェノール濃度を分析して確認した.
動物は温度22〜25 ℃,湿度53〜63 %,換気回数10〜15回/時間,照明時間8〜20時でブラケット式金属製金網床ケージに,群分け前は1あるいは3匹,群分け後は1匹収容した.飼料はγ線照射固型飼料CRF-1(オリエンタル酵母工業(株))を金属製給餌器により,飲料水は札幌市水道水を自動給水装置により,それぞれ自由摂取させた.
一晩(17〜18時間)の絶食後,10〜11時の間に胃ゾンデを用いて強制的に胃内に10 mL/kgの投与容量で経口投与し,投与後約4時間を経過した時点で給餌を再開した.
体重,体重増加量および体重増加率について,Bartlettの検定法によって等分散性を解析し,等分散の場合は一元配置分散分析法,不等分散の場合はKruskal-Wallisの検定法で解析した.一元配置分散分析の結果,有意差がみられた場合は,Dunnettの検定法を用いて,Kruskal-Wallis法の解析の結果,有意差がみられた場合は,Mann-WhitneyのU-検定法を用いてそれぞれ対照群との比較を行った.対照群との比較検定については,危険率5 %未満を統計学的に有意とした.
600 mg/kg投与群の雄では,投与後2〜4時間に自発運動の減少がみられた1例が投与後6時間に死亡した.また投与後2〜6時間に自発運動の減少,血尿,呼吸緩徐,体温低下等がみられた2例は,投与後1日に死亡した.
雌でも,投与後2〜6時間に自発運動の減少,呼吸緩徐,腹臥,血尿等がみられた2例は,投与後1日に死亡した.投与後1〜2日に呼吸促迫および外尿道口周囲被毛の汚れがみられた1例は投与後3日に死亡した.他の2例でも外尿道口周囲被毛の汚れ等がみられたが,投与後2または5日には回復した.
1200 mg/kg投与群の雄では,投与後1または2〜6時間に,自発運動の減少,よろめき歩行,腹臥,横臥,呼吸促迫,呼吸緩徐,体温低下等がみられた5例(全例)が投与後1日に死亡した.
雌では,投与後2〜6時間に腹臥,呼吸緩徐,横臥がみられた1例は,投与後6時間に死亡した.投与後1〜6時間に,よろめき歩行,自発運動の減少,横臥,呼吸緩徐,呼吸促迫等がみられた4例は,投与後1日に死亡した.
600 mg/kg投与群の生存例では,雌雄とも投与後に低値傾向で推移し,雄では投与後3および5日に,雌では投与後1から10日まで有意な低値が認められた.投与後14日間の体重増加量および体重増加率にも低値傾向がみられ,雄の体重増加率では有意な低値が認められた.
生存例では,各投与群の雌雄ともに変化は認められなかった.
体重では,雌雄の600 mg/kg投与群の生存例で体重増加抑制が認められたが,300 mg/kg以下の投与群で変化は認められなかった.
剖検では,雌の600 mg/kg投与群および1200 mg/kg投与群の各1例で腺胃粘膜の暗赤色斑がみられ,600 mg/kg投与群の1例では前胃粘膜の暗赤色斑と脾臓の萎縮も伴っていた.腺胃または前胃の暗赤色斑は被験物質による傷害性変化あるいは循環障害によると考えられたが,脾臓の萎縮は発現した毒性徴候等に付随した二次的な消耗性の変化と考えられた.
4-(1-メチルエテニル)フェノールの本試験条件下でのLD50値は雌雄とも585.8 mg/kgであった.
連絡先 | |||
試験責任者: | 須永昌男 | ||
試験担当者: | 木口雅夫,咲間正志,笠原みゆき,平田真理子,古川正敏 | ||
(株)化合物安全性研究所 | |||
〒004-0839 札幌市清田区真栄363-24 | |||
Tel 011-885-5031 | Fax 011-885-5313 |
Correspondence | ||||
Authors: | Masao Sunaga(Study director) Masao Kiguchi, Masashi Sakuma, Miyuki Kasahara, Mariko Hirata, Masatoshi Furukawa | |||
Safety Research Institute for Chemical Compounds Co., Ltd. | ||||
363-24 Shin-ei, Kiyota-ku, Sapporo-shi, Hokkaido, 004-0839, Japan | ||||
Tel +81-11-885-5031 | Fax +81-11-885-5313 |