フタル酸ジヘプチルエステルの
ラットを用いる28日間反復経口投与毒性試験

Twenty-eight-day Repeat Dose Oral Toxicity Test of
Diheptyl phthalate ester in Rats

要約

フタル酸ジヘプチルエステルの 62.5,250および1000 mg/kg/dayをCrj:CD(SD系)雌雄ラットに28日間経口反復投与し,その毒性並びに投与終了後14日間の回復性を検討した.

投与期間中の体重の増加量および増加率の減少が 1000 mg/kg群の雄で認められた.尿検査では,1000 mg/kg群の雌で蛋白陽性例の増加が認められた.血液学検査では,250mg/kg以上の群の雄でプロトロンビン時間および活性化部分トロンボプラスチン時間の延長,1000 mg/kg群の雌で活性化部分トロンボプラスチン時間の延長が認められた.血液生化学検査では,1000 mg/kg群の雄でβ-グロブリン分画の低下,尿素窒素の増加,同群の雌でアルブミン分画の上昇,β-グロブリン分画の低下が認められた.器官重量では,1000 mg/kg群の雄で肝臓の体重重量比の上昇と同群の2例で精巣重量および精巣上体重量の減少が,1000 mg/kg群の雌で肝臓の重量の増加および体重重量比の上昇,腎臓の体重重量比の上昇が認められた.剖検では,1000 mg/kg群の雄で小型の精巣および精巣上体が認められた.病理組織学検査では,1000 mg/kg群の雄で肝臓に小葉中心性肝細胞肥大,小葉中心性肝細胞脂肪化,小葉中心帯における単細胞性肝細胞壊死が,精巣に精子形成細胞の消失が,精巣上体に管内精子減少,剥離性精子形成細胞の出現が認められた.

上述の変化のうち,精巣および精巣上体の変化については 14日間の回復期間では回復は認められなかったが,その他の変化については多くが14日間の回復期間終了時には消失した.

以上より,雄では 250 mg/kg群でプロトロンビン時間および活性化部分トロンボプラスチン時間の延長が認められ,1000 mg/kg群で肝臓,腎臓および生殖器への影響が認められたこと,雌では1000 mg/kg群で肝臓および腎臓への影響が認められたことから,本試験におけるフタル酸ジヘプチルエステル投与による無影響量は,雄で62.5 mg/kg/day,雌で 250 mg/kg/dayであると考えられた.

方法

1. 被験物質

フタル酸ジヘプチルエステルは,常温で無色透明液体であり,アセトン, DMSO,芳香族炭化水素に溶けやすく,水にほとんど溶けない.本試験では新日本理化(株)より提供されたロット番号0008(純度99.56%)を使用し,金属缶またはガラス瓶にて冷暗所で保存した.被験物質は試験期間中品質に変化は認められなかったことが確認されている.

投与には,被験物質を 12.5,50および200 mg/mlの濃度となるようにオリーブ油(日本薬局方,ヤクハン製薬(株))で用時溶解したものを用いた.各濃度の調製液は規定の濃度であることが確認されている.

2. 試験動物および飼育条件

生後 4週齢のCrj:CD(SD系)SPFラット雌雄を日本チャールス・リバー(株)より受け入れ,約1週間の検疫・馴化飼育を行い,異常がなく順調な発育を示した動物を試験に用いた.

動物は,温度 23±3℃,湿度55±10%,換気回数10〜15回/時および照明12時間/日に設定したバリアシステムの飼育室で,ブラケット式金属製金網床ケージに群分け前は5匹以内,群分け後は1匹を収容して飼育した.飼料は固型飼料 (CRF-1,オリエンタル酵母工業(株)),飲料水は水道水(札幌市水道水)をそれぞれ自由に摂取させた.

3. 試験群の設定

試験群は,フタル酸ジヘプチルエステルの 250,500および1000 mg/kg/dayを設定した14日間反復経口投与毒性試験の結果を参考に設定した.すなわち,1000 mg/kg群で肝臓,腎臓および雄性生殖器への影響が認められ,250 mg/kg群で肝臓重量の増加傾向が認められた.これらのことから,本試験における高用量は明らかな毒性変化が発現し,毒性の概要が把握できると考えられる1000 mg/kg/dayとし,中用量は投与期間が2倍となることを考慮して250 mg/kg/day,低用量は高用量と中用量との比が4であることから62.5 mg/kg/dayとし,そのほかにオリーブ油を投与する対照群を設け,計4群とした.

動物数は,対照群で雌雄各 14匹,62.5および250 mg/kg群で雌雄各7匹,1000 mg/kg群で雌雄各14匹とし,そのうち回復性試験のために対照群および1000 mg/kg群の雌雄各7匹をあてた.群分けは,馴化期間の最終日に体重別層化無作為抽出法により行った.

4. 投与方法

投与は胃ゾンデを用いた強制経口投与とし, 1日1回連続28回行った.回復性試験の日数は14日間とした.投与容量は,体重1 kg当たり5 mlとして投与日に最も近い日に測定した体重に基づいて算出した.投与は5週齢から開始し,投与開始時の平均体重(体重範囲)は雄で137.7 g(130〜144 g),雌で124.9 g(114〜134 g)であった.

5. 観察,測定および検査項目

1) 一般状態観察

投与期間および回復期間中,全例について 1日1回以上の頻度で観察した.

2) 体重および摂餌量測定

全例について,体重を投与 1日(投与前),投与2,7,14,21および28日(投与終了日),回復1,2,7および14日並びに剖検日に測定した.摂餌量測定は剖検日を除いて体重測定と同じ日に測定した.また,投与1から28日の体重増加量および体重増加率を算出した.

3) 尿検査

投与期間の最終週 (投与23〜24日)および回復期間の最終週(回復12〜13日)に全例を代謝ケージに収容して非絶食下で採尿を行った.約3時間の蓄尿についてpH,蛋白,糖,ケトン体,潜血反応(以上,試験紙マルティスティックス;バイエル・三共)および沈渣(鏡検)を検査し,21時間蓄尿について尿量(容量)を測定した.

4) 血液学検査

剖検時に全例について約 16時間絶食させた後,エーテル麻酔下で大腿静脈より採血し,EDTA・2Kで処理した血液を用いて赤血球数,平均赤血球容積,血小板数,白血球数(以上,電気抵抗法),血色素量(シアンメトヘモグロビン法)(以上,コールターカウンターT660型),ヘマトクリット値(赤血球数,平均赤血球容積より算出),平均赤血球ヘモグロビン量(赤血球数、血色素量より算出),平均赤血球ヘモグロビン濃度(ヘマトクリット値、血色素量より算出),網状赤血球率(Brecher法)および白血球型別百分率(鏡検)を測定した.また,無処理血液を用いて,凝固時間(流体粘度変化による空気圧測定法:グライナー社製マイクロコアグロメータ)を測定した.さらに,腹部大動脈より採血しクエン酸ナトリウムで処理した後,3000 rpmで10分間遠心分離して得られた血漿を用いて,プロトロンビン時間(トロンボプラスチン法)および活性化部分トロンボプラスチン時間(エラジン酸法)(以上,AMELUNG KC-10A バクスターKK)を測定した.

5) 血液生化学検査

血液学検査に引き続いて、全例について腹部大動脈より採血し, 3000 rpmで10分間遠心分離して得られた血清を用いてGOT,GPT(以上,IFCC法),γ-GTP(包接L-γ-グルタミル-p-ニトロアニリド基質法),アルカリフォスファターゼ(ベッセィ・ローリー法),乳酸脱水素酵素(ロブレスキー・ラ・デュー法),血糖(ヘキソキナーゼ法),総コレステロール,アセト酢酸,3-デヒドロ酪酸 (以上,酵素法),トリグリセリド(遊離グリセロール消去法),総ビリルビン(アゾビリルビン法),尿素窒素(ウレアーゼ・インドフェノール法),クレアチニン (ヤッフェ法),カルシウム(OCPC法),無機リン(フィスケ・サバロー法),総蛋白(ビウレット法),アルブミン(BCG法)(以上,日立7150形自動分析装置),ナトリウム,カリウム(以上,炎光法:コーニング480型炎光光度計),クロール(電量滴定法:平沼CL-6M型クロライドカウンター),A/G比 (総蛋白,アルブミンより算出)および蛋白分画(セルロースアセテート膜電気泳動法)を測定した.

6) 剖検および器官重量測定

投与期間および回復期間終了の翌日に全例について,体外表部を観察し,エーテル麻酔下で採血後放血致死させ剖検した.また,脳,下垂体,甲状腺,肺,心臓,肝臓,腎臓,脾臓,副腎,胸腺,精巣,精巣上体,精嚢 (凝固腺を含む),卵巣および子宮の重量を測定するとともに,器官体重重量比を算出した.

7) 病理組織学検査

全例について肝臓,腎臓,脾臓,心臓,肺,脳 (大脳・小脳),下垂体,副腎,甲状腺,上皮小体,胸腺,腸間膜リンパ節,膵臓,舌,下顎リンパ節,顎下腺,舌下腺,耳下腺,乳腺,皮膚,胸骨および大腿骨(骨髄を含む),脊髄(頸部),骨格筋(外側広筋),胸部大動脈,喉頭,気管,気管支,食道,胃(前胃・腺胃),十二指腸,空腸,回腸,盲腸,結腸,直腸,膀胱,精嚢(凝固腺を含む),前立腺,卵巣,子宮,腟および坐骨神経を10%中性緩衝ホルマリン液で,眼球およびハーダー腺をデビッドソン液で,精巣,精巣上体をブアン液で固定し,常法に従いパラフィン切片を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色あるいは特殊染色(Oil red O染色)標本を作製し,病理組織学検査を行った.

6. 統計処理

Bartlettの等分散検定の後,一元配置分散分析法あるいはKruskal-Wallis法により解析し,有意な場合,Dunnettの検定法あるいはMann-WhitneyのU-検定法により対照群とフタル酸ジヘプチルエステル投与各群との比較を行った.なお,尿検査の定性的項目についてはKruskal-Wallis法およびMann-WhitneyのU-検定法を用いて解析し,対照群との検定については危険率5%以下を統計学的に有意とした.

成績

1. 一般状態

投与期間および回復期間のいずれにおいても,雌雄ともに異常は認められなかった.

2. 体重(Table 1)

投与期間では,雄の 1000 mg/kg群で投与期間中の体重増加量の減少および増加率の低下が認められた.

回復期間では,雌雄ともに対照群と比較して有意差は認められなかった.

3. 摂餌量

投与期間では,雌雄ともに対照群と比較して有意差は認められなかった.

回復期間では,雌の 1000 mg/kg群で摂餌量の減少が回復14日に認められた.

4.尿検査(Table 2,3)

投与期間最終週には,雌雄のフタル酸ジヘプチルエステル投与群でケトン体の排泄が認められ,対照群と比較して,雄は 250 mg/kg以上の群で,雌は62.5 mg/kg以上の群で有意差が認められた.また,1000 mg/kg群では,雄でpHの低下,雌で蛋白陽性例の増加が認められた.

回復期間最終週には,雌雄ともに対照群と比較して有意差は認められなかった.

5.血液学検査(Table 4)

投与期間終了時には,雄の 250 mg/kg以上の群でプロトロンビン時間および活性化部分トロンボプラスチン時間の延長が,雌の1000 mg/kg群で活性化部分トロンボプラスチン時間の延長が認められた.

回復期間終了時には,雌雄ともに対照群と比較して有意差は認められなかった.

6. 血液生化学検査(Table 5,6)

投与期間終了時には,雄の 1000 mg/kg群で尿素窒素の増加,β-グロブリン分画の低下が認められた.雌では,1000 mg/kg群でアルブミン分画の上昇,アセト酢酸および3-デヒドロ酪酸の増加,β-グロブリン分画の低下が認められた.その他,フタル酸ジヘプチルエステル投与による異常は認められなかった.

回復期間終了時には,投与期間終了時に認められた変動のうち,アセト酢酸の増加が雌の 1000 mg/kg群で認められた.その他,雄の1000 mg/kg群でアルカリフォスファターゼの減少,雌の1000 mg/kg群でa1-グロブリン分画の上昇が認められた.

7. 器官重量(Table 7,8)

投与期間終了時には,雄では, 1000 mg/kg群で肝臓の体重重量比の上昇が認められ,また,群別には統計学的な有意差は認められないものの,同群の2例で精巣および精巣上体の重量の低値が認められた.雌では,1000 mg/kg群で肝臓の重量の増加および体重重量比の上昇,腎臓の体重重量比の上昇が認められた.その他,雌の1000 mg/kg群で心臓および胸腺の体重重量比の上昇が認められた.

回復期間終了時には,雄では, 1000 mg/kg群で精巣上体重量の減少が認められ,個体別には1000 mg/kg群の2例に精巣および精巣上体の重量の低値が認められた.雌では,1000 mg/kg群で腎臓の体重重量比の上昇が認められた.その他,雄の1000 mg/kg群で肺および精嚢重量の減少,腎臓の体重重量比の上昇,雌の1000 mg/kg群で子宮の体重重量比の上昇が認められた.

8. 剖検

投与期間終了時には,小型の精巣および精巣上体が 1000 mg/kg群の雄2例に認められた.その他,フタル酸ジヘプチルエステル投与による異常は認められなかった.

回復期間終了時には,小型の精巣および精巣上体が 1000 mg/kg群の雄2例に認められた.

9.病理組織学検査(Table 9,10)

投与期間終了時には,肝臓では,軽度および中等度の小葉中心性肝細胞肥大が 1000 mg/kg群の雄4例に,軽度の小葉中心性肝細胞脂肪化が1000 mg/kg群の雄2例に,小葉中心帯における軽度の単細胞性肝細胞壊死が1000 mg/kg群の雄1例に認められた.精巣では,軽度および重度の精子形成細胞の消失が1000 mg/kg群の雄4例に認められた.精巣上体では,重度の管内精子減少が1000 mg/kg群の雄2例に,中等度の剥離性精子形成細胞の出現が1000 mg/kg群の雄3例に認められた.

回復期間終了時には,肝臓では,軽度の小葉中心性肝細胞肥大が 1000 mg/kg群の雄1例に認められた.精巣では,軽度,中等度および重度の精子形成細胞の消失が1000 mg/kg群の雄3例に認められた.精巣上体では,重度の管内精子減少が1000 mg/kg群の雄2例に,中等度の剥離性精子形成細胞の出現が1000 mg/kg群の雄2例に認められた.

その他,フタル酸ジヘプチルエステル投与による異常は認められなかった.

考察

投与期間中の体重増加量の減少および増加率の低下が雄の 1000 mg/kg群で認められ,フタル酸ジヘプチルエステル投与による影響と考えられた.雌の1000 mg/kg群では,摂餌量の減少が回復14日に認められたが,回復1,2あるいは7日の摂餌量値と比較して低い値ではなく,フタル酸ジヘプチルエステル投与による影響ではないと考えられた.

腎臓に対する影響として雌の 1000 mg/kg群で尿蛋白陽性例の増加および腎臓の体重重量比の上昇,雄の1000 mg/kg群で血清尿素窒素の増加が認められ,病理組織学的に形態の変化は認められないものの,フタル酸ジヘプチルエステル投与による腎臓への影響があるものと考えられた.

肝臓に対する影響として,雄では, 250 mg/kg以上の群でプロトロンビン時間および活性化部分トロンボプラスチン時間の延長,1000 mg/kg群で血清β-グロブリン分画の低下,肝臓体重重量比の上昇が認められた.さらに雄の1000 mg/kg群では,肝臓の病理組織学検査において小葉中心性肝細胞肥大,小葉中心性肝細胞脂肪化および小葉中心帯における肝細胞の単細胞性壊死が認められ,フタル酸ジヘプチルエステル投与による肝臓への影響が示唆された.雌では,1000 mg/kg群で活性化部分トロンボプラスチン時間の延長,血清アルブミン分画の上昇とβ-グロブリン分画の低下,肝臓重量の増加および体重重量比の上昇が認められたが,病理組織学的に肝臓の異常は認められず,影響の程度に雌雄差が認められた.

雄性生殖器に対する影響として,雄の 1000 mg/kg群で精巣および精巣上体の重量が減少して肉眼的にこれらの器官の小型が認められ,病理組織学検査では精巣に精子形成細胞の消失,精巣上体に管内精子減少および剥離性精子形成細胞の出現が認められた.雄性生殖器に対する影響は他のフタル酸エステルでも認められており1, 2),フタル酸ジヘプチルエステル投与でも同様の影響が確認された.

尿へのケトン体の排泄が雌雄のフタル酸ジヘプチルエステル投与群で認められ,雌の 1000 mg/kg群ではさらに血清中のアセト酢酸および3-デヒドロ酪酸の増加も認められた.尿へのケトン体の排泄および血中のケトン体の増加は飢餓,糖尿病,高脂肪−低炭水化物食等の際にみられるものであるが,本試験では糖尿病等の代謝異常を示唆する変化は認められず,飢餓等の状態にもなかった.一方,他のフタル酸エステルの代謝過程においてケトン体の生成が考えられること2, 3)から,フタル酸ジヘプチルエステルの代謝過程でもケトン体が生成・排泄された可能性が高く,本試験で認められた尿へのケトン体の排泄等はこれに起因するものと考えられた.また,雄の1000 mg/kg群におけるpHの低下は,前述したように血中に比較的強い酸の増加が認められることから,被験物質の代謝に関連したものと考えられた.

上述の変化のうち,精巣および精巣上体の変化は回復期間終了時にもほぼ同程度に認められ, 14日間の回復期間では回復は認められなかった.しかし,その他はその多くが14日間の回復期間終了時には消失し,回復傾向があるものと考えられた.

その他,血液生化学検査では,回復期間終了時に 1000 mg/kg群でアルカリフォスファターゼおよびa1-グロブリン分画に変動が認められたが,いずれも投与期間終了時に認められず,フタル酸ジヘプチルエステル投与との関連はないと考えられた.器官重量では,投与期間終了時に1000 mg/kg群で心臓および胸腺の体重重量比に上昇が認められたが,心臓については背景データの範囲内であり,胸腺についても実測重量は背景データの範囲内にあり,同群の体重が対照群と比較して低い傾向にあることによるものであり,フタル酸ジヘプチルエステル投与によるものではないと考えられた.また,回復期間終了時には1000 mg/kg群で肺,精嚢,腎臓および子宮の重量あるいは体重重量比に変動が認められたが,いずれも投与期間終了時には認められず,フタル酸ジヘプチルエステル投与によるものではないと考えられた.

以上より,雄では 250 mg/kg群でプロトロンビン時間および活性化部分トロンボプラスチン時間の延長が認められ,1000 mg/kg群で肝臓,腎臓および生殖器への影響が認められたこと,雌では1000 mg/kg群で肝臓および腎臓への影響が認められたこと,尿へのケトン体排泄については被験物質の代謝産物に起因すると考えられることから,本試験におけるフタル酸ジヘプチルエステル投与による無影響量は,雄で62.5 mg/kg/day,雌で250 mg/kg/dayであると考えられた.

参考文献

1)和田 攻 編,"毒性試験講座 18.産業化学物質,環境化学物質",地人書館,東京,1991,pp.165-166.
2)K. N. Woodward eds., "Toxicity Review 14 Review of the toxicity of the esters of ophthalmic acid (phthalate esters)", Health and Safety Executive,London, p.183.
3)B. D. Astill, Drug metabolism reviews, 21, 35 (1995).

連絡先
試験責任者:小林典子
試験担当者:茂野 均,長谷淳一,古川正敏
運営管理者:小林茂吉
(株)化合物安全性研究所
〒004 北海道札幌市豊平区真栄363番24号
Tel 011-885-5031Fax 011-885-5313

Correspondence
Authors:Noriko Kobayashi(Study director)
Hitoshi Shigeno, Jun-ichi Nagaya,
Masatoshi Furukawa,
Shigeyoshi Kobayashi (Management)
Safety Research Institute for Chemical Compounds Co., Ltd.
363-24 Shin-ei, Toyohira-ku, Sapporo, Hokkaido, 004, Japan
Tel +81-11-885-5031Fax +81-11-885-5313