3,5,5-トリメチルヘキサン-1-オールのラットを用いる単回経口投与毒性試験
Single Dose Oral Toxicity Test of 3,5,5-Trimethylhexan-1-ol in Rats
要約
3,5,5-トリメチルヘキサン-1-オール(CAS No.3452-97-9)の2000 mg/kgを5〜6週齢のCrj:CD(SD)系ラットの雌雄に経口単回投与し,その毒性を検討した.
死亡例は雌雄のいずれにも認められず,LD50値は 2000 mg/kg 以上と推定された.一般状態観察では自発運動の減少が投与日に,体重増加抑制あるいは体重増加抑制傾向が投与後1日以降14日まで雌雄に認められたが,剖検および病理組織学検査に影響は認められなかった.
方法
1.被験物質
3,5,5-トリメチルヘキサン-1-オール(CAS No. 3452-97-9)は,特有の臭いを有する無色透明な液体であり,遮光気密容器に入れ,冷蔵庫内で保存した.本試験では協和油化(株)製造のロット番号707173(純度92.7%)を使用した.被験物質は,試験期間中安定であったことが製造業者の分析により確認された.
投与には,被験物質を40 w/v%の濃度になるようにオリーブ油(日本薬局方,ヤクハン製薬(株))に溶解したものを用いた.なお,40%調製液は規定の濃度であり,かつ均一であることが(財)日本食品分析センターにより確認された.
2.試験動物および飼育条件
生後4週齢のCrj:CD(SD)系のSPFラットの雄雌を日本チャールス・リバー(株)から受け入れ,13日間の馴化飼育を行い,異常がなく順調な発育を示した動物を試験に用いた.動物は,温度23±3℃,湿度55±10%,換気回数10〜15回/時および照明時間12時間に設定されたバリアシステムの飼育室で,ブラケット式金属製金網床ケージに群分け前は5匹以内,群分け後は1匹を収容して飼育した.飼料は固型飼料(CRF-1,オリエンタル酵母(株)),飲料水は水道水(札幌市水道水)を自由に摂取させた.
3.投与量の設定,試験群の構成および群分け
本試験の投与量設定のために実施した予備試験では,3,5,5-トリメチルヘキサン-1-オールの500,1000および 2000 mg/kg群,媒体であるオリーブ油を投与する対照群の計4群を設定し,1群当たり雌雄各5匹のラットに投与した.投与後14日間の観察において,雌の2000 mg/kg群で自発運動の減少,呼吸緩徐,被毛汚染,流涙が認められたが,死亡例は認められなかったため,本試験では2000 mg/kgの1用量を投与する群と,媒体であるオリーブ油を投与する対照群の計2群を設定し,1群当たり雌雄各5匹とした.
群分けは,投与開始前日に投与開始前日の体重をもとに各群の体重が均一になるように体重別層化無作為抽出法を用いて行った.
4.投与方法
投与は,動物を約17〜18時間絶食させた後,胃ゾンデを用いて強制的に胃内に1回行った.投与容量は,体重1 kg当たり5 mlとして投与日に測定した体重に基づいて算出した.投与時の週齢は雌雄ともに5〜6週齢で,その平均体重(体重範囲)は雄で156.7 g(149〜165 g),雌で133.9 g(126〜144 g)であった.
5.観察,測定および検査項目
全例について,一般状態を投与日は投与後6時間までは頻繁に,投与後1日以降は1日1回の頻度で投与後14日まで観察した.また,体重を投与日,投与後1,3,5,7,10および14日に測定した.投与後14日に,全例について体外表部を観察した後,エーテル麻酔下で放血致死させ,剖検した.このうち,対照群および3,5,5-トリメチルヘキサン-1-オール投与群の雌雄各2例の肝臓,腎臓,脾臓,心臓,肺,脳(大脳・小脳),胃(前胃・腺胃),十二指腸,空腸,回腸,盲腸,結腸,直腸および卵巣を10%中性緩衝ホルマリン液で,精巣および精巣上体をブアン液でそれぞれ固定した後,常法に従いパラフィン切片を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色標本を作製して,病理組織学検査を行った.
結果
1.死亡状況および LD50値
雌雄ともに,いずれの群においても死亡は認められず,LD50値は2000 mg/kg以上と推定された.
2.一般状態
投与日に,自発運動の減少が2000 mg/kg群の雄で3例,雌で2例に認められたが,いずれも同日中に回復が認められた.投与後1日以降に異常は認められなかった.
3.体重
2000 mg/kg群の雌雄では,観察期間中を通して,体重の増加抑制あるいは増加抑制傾向が認められ,雄では投与後1〜14日に,雌では投与後3日で有意な低値を示した.
4.剖検および病理組織学検査
3,5,5-トリメチルヘキサン-1-オール投与による異常は認められなかった.
考察
3,5,5-トリメチルヘキサン-1-オールの2000 mg/kgを5〜6週齢のCrj:CD(SD)系ラットの雌雄に経口単回投与し,その毒性を検討した.
死亡例は2000 mg/kg群の雌雄のいずれにも認められず,LD50値は2000 mg/kg以上と推察された.一般状態では,投与日に2000 mg/kg群の雌雄に自発運動の減少が認められたが,同日中に回復が認められ,投与後1日以降に異常は認められなかった.体重では,増加抑制あるいは増加抑制傾向が投与後1日以降より14日まで雌雄ともに認められ,3,5,5-トリメチルヘキサン-1-オール投与の影響と考えられたが,剖検あるいは病理組織学検査で異常はみられなかった.
連絡先 |
| 試験責任者: | 吉村浩幸 |
| 試験担当者: | 河村公太郎,古川正敏 |
| 運営管理者: | 小林茂吉 |
| (株)化合物安全性研究所 |
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| Tel 011-885-5031 | Fax 011-885-5313 | |
Correspondence |
| Authors: | Hiroyuki Yoshimura(Study director)
Kohtaro Kawamura, Masatoshi Furukawa, Shigeyoshi Kobayashi(Management) |
| Safety Research Institute for Chemical Compounds Co., Ltd. |
| 363-24 Shin-ei, Kiyota-ku, Sapporo, Hokkaido, 004, Japan |
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