染色体異常試験に用いる濃度を決定するため,細胞増殖抑制試験を行ったところ,連続処理法の 24時間処理および48時間処理において約50%の増殖抑制を示す濃度は,それぞれ0.053,0.017 mg/ml,短時間処理法のS9 mix存在下および非存在下では,それぞれ0.072,0.121 mg/ mlであった.従って染色体異常試験において,連続処理法の24時間処理では0.060 mg/ml,48時間処理では0.020 mg/ml,短時間処理法のS9 mix存在下では0.080 mg/ml,非存在下では0.125 mg/mlを高濃度とし,それぞれその1/2の濃度を中濃度,1/4の濃度を低濃度に設定した.
CHL細胞を被験物質で24時間および48時間連続処理した結果,いずれの処理群においても,染色体の構造異常や倍数性細胞の出現頻度は5%未満であった.また,短時間処理法のS9 mix存在下および非存在下のいずれの処理群においても,倍数性細胞の出現頻度は5%未満であった.しかし,短時間処理法のS9 mix存在下の高濃度群(0.080 mg/ml)で,観察した細胞の7.5%に染色体構造異常が誘発され,判定は疑陽性であった.従って,再現性を確認するため,0.040,0.080,0.120 mg/mlの濃度で確認試験を実施した.その結果,0.080,0.120 mg/mlで観察した細胞のそれぞれ7.0,21.0%に染色体構造異常が観察され,染色体異常誘発の再現性が確認されると共に構造異常細胞の明らかな増加が認められたため,短時間処理法のS9 mix存在下で陽性と判定した.
以上の結果より 4-クロロ-o-クレゾールは,上記の試験条件下で,試験管内のCHL細胞に染色体異常を誘発すると結論した.
連続処理法では,細胞播種 3日目に被験物質を加え,24時間および48時間処理した.また,短時間処理法では,細胞播種3日目にS9 mixの存在下および非存在下で6時間処理し,処理終了後新鮮な培養液でさらに18時間培養した.
その結果, 4-クロロ-o-クレゾールの約50%の増殖抑制を示す濃度を,50%をはさむ2濃度の値より算出したところ,連続処理法の24時間処理および48時間処理ではそれぞれ0.053,0.017 mg/ml,短時間処理法のS9 mix存在下および非存在下ではそれぞれ0.072,0.121 mg/mlであった(Fig. 1).
短時間処理法による染色体分析の結果を Table 2に示した.4-クロロ-o-クレゾールを加えてS9 mix存在下および非存在下で6時間処理した各濃度群で,倍数性細胞の出現頻度は5%未満であった.また,短時間処理法のS9 mix存在下の高濃度群(0.080 mg/ml)で,観察した細胞の7.5%に染色体構造異常(gapを含む)が誘発され,判定は疑陽性であった.
従って,再現性を確認するため, 0.040,0.080,0.120 mg/mlの濃度で確認試験を実施した(Table 3).その結果,0.080,0.120 mg/mlで観察した細胞のそれぞれ7.0,21.0%に染色体構造異常が観察され,染色体異常誘発性の再現性が確認されると共に構造異常細胞の明らかな増加が認められたため,短時間処理法のS9 mix存在下で陽性と判定した.
1) | 日本環境変異原学会・哺乳動物試験分科会編,"化学物質による染色体異常アトラス," 朝倉書店,東京,1988. |
2) | 石館 基 監修,“〈改訂〉染色体異常試験データ集”,エル・アイ・シー社,1987. |
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試験責任者: | 西冨 保 | ||
試験担当者: | 水野文夫,太田絵律奈,中川宗洋, 岩井由美子,鈴木美江 | ||
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Authors: | Tamotsu Nishitomi(Study director) Fumio Mizuno, Erina Ohta, Munehiro Nakagawa, Yumiko Iwai, Yoshie Suzuki | ||
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