3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリドの
ラットを用いる単回経口投与毒性試験

Single Dose Oral Toxicity Test
of 3,3-Bis(p-dimethylaminophenyl)-6-dimethylaminophthalide in Rats

要約

3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリドについて,雌雄のSD系ラット(1群雌雄各5匹)に1回経口投与した時の毒性を検討した.投与用量は2000 mg/kgとし,この他に媒体を投与する対照群を設けた.

投与の結果,いずれの群においても死亡例はみられなかった.一般状態観察,体重推移および剖検の結果には,いずれの被験物質投与群においても異常はみられなかった.

3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリドの半数致死量(LD50値)は,雌雄ともに2000 mg/kg以上と推定した.

方法

1. 被験物質

3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド[山田化学工業(株)(京都),ロット番号010327,純度99.5 wt%]は,融点179〜184 ℃,揮発性,臭気はなく,通常の取扱いでは安定,水に難溶解性で安定,DMSO,アセトンに溶解,酸と接触して発色するが,反応による危険性はない淡黄褐色粉末である.被験物質は室温・密封で保存し,試験期間中安定であることを確認した.投与液の調製は投与前に0.1 %Tween 80添加0.5 %CMC-Na水溶液に懸濁させた.なお,投与開始前に,投与液中の被験物質の均一性および調製後8日間の安定性を確認した.また,投与液中の被験物質濃度が設定値どおりであることを確認した.

2. 試験動物

日本チャールス・リバー(株)より入手した雌雄のSD系ラット[Crj:CD(SD)IGS,SPF]を6日間検疫・馴化後,試験に供した.投与前日に,体重層別化無作為抽出法により,各群の平均体重がほぼ均一となるように1群あたり雌雄各5匹に振り分けた.投与日の週齢は5週齢,体重範囲は雄が124〜129 g,雌が113〜121 gであった.

検疫・馴化期間を含む全飼育期間を通して,温度22 ± 2 ℃,相対湿度55 ± 15 %,換気約12回/時,照明12 時間/日(7:00-19:00)に自動調節した飼育室を使用した.

動物は実験動物用床敷(ベータチップ,日本チャールス・リバー(株))を敷いたポリカーボネート製ケージに5匹(同性)ずつ収容し,飼育した.動物には,実験動物用固型飼料(MF,オリエンタル酵母工業(株))と,5 μmの フィルター濾過後,紫外線照射した水道水を自由に摂取させた.

3. 投与量および投与方法

投与経路は経口,投与回数は1回とした.投与前日より約18時間絶食させたラットに,胃ゾンデを用いて強制経口投与し,投与後約3時間は飼料を与えなかった.

予備検討の結果(2000 mg/kg),死亡をはじめとした異常はみられなかった.このため,本試験の用量は雌雄ともに2000 mg/kgの1用量を設定した.この他に媒体のみを投与する対照群を設けた.投与液量は10 mL/kgとし,投与直前の体重に基づいて算出した.

4. 観察および検査項目

1) 一般状態

投与日は投与直前,投与後1,3および6時間の4回,以後は1日1回14日間にわたって生死および一般状態を観察した.

2) 体重

全例について投与直前,第4,8および15日に電子上皿天秤を用いて測定した.

3) 病理検査

観察終了後にチオペンタール・ナトリウムの腹腔内投与による麻酔下で腹大動脈から放血し,安楽死させた後剖検した.

4) 半数致死量(LD50値)の算出

限界試験のため実施しなかった.

結果

1. 一般状態

いずれの動物にも死亡をはじめ異常は認められなかった.

2. 体重

雌雄ともに対照群と同様の推移を示した.

3. 剖検所見

いずれの動物にも異常所見は認められなかった.

考察

3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリドを2000 mg/kgの用量で1回経口投与した.その結果,死亡例は認められず,一般状態,体重,剖検において毒性影響は認められなかった.このことから3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリドの半数致死量(LD50値)は,雌雄ともに2000 mg/kg以上と推定した.

連絡先
試験責任者:岩井 淳
試験担当者:上島美重,鈴木美江
(株)三菱化学安全科学研究所鹿島研究所
〒314-0255 茨城県鹿島郡波崎町砂山14
Tel 0479-46-2871Fax 0479-46-2874

Correspondence
Authors:Atsushi Iwai(Study director)
Mie Ueshima, Yoshie Suzuki
Kashima Laboratory
Mitsubishi Chemical Safety Institute Ltd.
14 Sunayama, Hasaki-machi, Kashima-gun, Ibaraki, 314-0255, Japan
Tel +81-479-46-2871Fax +81-479-46-2874