被験物質の影響により死亡した例は、雌雄いずれの投与群にも観察されなかった。一般状態、体重及び摂餌量にも投与による影響は認められなかった。雄の血液学的検査において赤血球数の減少が、200および1000 mg/kg群に投与用量に依存して認められた。しかし、血清生化学的検査では、特定臓器に障害を示唆する変化は認められなかった。器官重量において、雄の1000 mg/kgの回復群で肺、脾臓、精巣、副腎、唾液腺に絶対重量の増加、相対重量で脾臓のみに増加が認められた。しかし、病理組織学的には、これらの臓器に投与によると考えられる変化は認められなかった。
以上の結果から、銅フタロシアナ−トの反復強制経口投与による影響は、200 mg/kg群以上で認められた軽度の赤血球系への影響で、NOELは40 mg/kgと推定される。
被験物質はコーン油を溶媒として0.8 ml/100g体重の投与容量になるように各群ごとに濃度を調整し、週2回の測定体重を基に計算した投与量で、1日1回28日間午前10〜12時に繰り返し投与した。
同時に5〜6滴の血液を50μlの5% EDTA-2K水溶液で希釈し、スピナー(オムロン株式会社)を用いて塗抹標本を作製し、ライト染色を施してからMICROX HEG-120A(オムロン株式会社)にて白血球百分比を測定した。
血液凝固能検査は、3.8%クエン酸3ナトリウム溶液0.2 mlを入れた注射筒で頸静脈より2mlを採血し、遠心分離(3000r pm/10 min)により得られた血漿について、プロトロビン、活性部分トロンボプラスチンをKC-10(AHS/Japan Co.)にて測定した。
の方法によって対照群に対する各群の平均値の一対比較検定を行なった。等分散が認められない場合、Kruskal-Wallisの検定を行い、有意差が認められた場合は、対照群と各投与群間においてノンパラメトリックのDunnett法またはScheff
の方法による検定を行った。回復期間終了時の結果および体重はt検定を行なった。
回復1,000 mg/kg群の雌でEbl、表には示していないがPDWとMPVの増加が認められた他に回復群で変化は認められなかった。
血液凝固能においては、すべての群で変化が認められなかった。
回復1,000 mg/kg群の雌でAlbとChEの増加が認められた他に回復群の雌雄で変化は認められなかった。
《投与期間終了時》
雌雄とも200および1000 mg/kg群で数例の肺に軽度に青色物質の沈着が認められた。
《回復期間終了時》
雄の1000 mg/kg群の肺で1例に軽度に青色物質の沈着が認められた。
雄の回復1,000 mg/kg群で、肺、脾臓、精巣、副腎、唾液腺の実重量と脾臓比重量の増加が認められた。雌の回復群では変化は認められなかった。
肺:雌雄とも気管支周囲への細胞浸潤ならびに肺胞壁の肥厚が対照群を含む各群で認められた。また、肺胞壁内に青い結晶物の沈着が雌の1000 mg/kg群を除いた、雌雄の検体投与群に1〜3例認められた。
肝臓:雌雄とも肝細胞に軽度な単細胞性壊死が対照群を含む各群で1〜4例認められた。
腎臓:雄で近位尿細管にエオジンに好染し、PAS染色で陰性を示す eosinophilic・body・が対照群を含む全例に認められた。また、雌では皮髄境界部に石灰沈着が対照群を含む各群で2〜4例認められた。
胃:雄で腺胃粘膜固有層から粘膜下織にかけてリンパ球の集積が200および1000 mg/kg群に1例ずつ認められた。
《回復期間終了時》
心臓:雄で心筋への円形細胞浸潤が対照群および1000 mg/kg群に2例ずつ認められた。
肺:雌雄とも気管支周囲への軽度な細胞浸潤が対照群ならびに1000 mg/kg群で認められた。また、肺胞壁内に青い結晶物の沈着が雄の1000 mg/kg群に1例認められた。
肝臓:雌雄とも軽度に単細胞性壊死が対照群および1000 mg/kg群に認められた。
腎臓:雄で近位尿細管にエオジンに好染し、PAS染色で陰性を示す eosinophilic・body・が対照群および1000 mg/kg群で全例に認められた。また、雌では皮髄境界部に石灰沈着が対照群および1000 mg/kg群で3例ずつ認められた。
対照群の1例で投与の過誤によると考えられる死亡例が認められたが、被験物質によると考えられる一般状態、体重、摂餌量の変化はすべての群で認められなかった。
28日間の投与後における血液学的検査で、雄の200と1,000 mg/kg群にRBCの有意な減少とHbおよびPCVの減少傾向が認められ、変化としては非常に小さなものであったが、これらに用量相関性が認められた。また、雌の回復1,000 mg/kg群の僅かな赤芽球の増加および雄の回復1,000 mg/kg群の脾臓の実重量と比重量の増加から、赤血球系への弱い作用が考えられるが、病理組織学的検査で検体によると思われる変化は認められなかった。
雄の回復1,000 mg/kg群で肺、脾臓、精巣、副腎、唾液腺の実重量の増加が認められ、比重量でも僅かな増加の傾向が認められた。
以上の結果から、銅フタロシアナ−トの28日間反復強制経口投与による影響は、200 mg/kg群から認められた軽度の赤血球系への影響のみで、NOELは40 mg/kgと考えられた。
| 連絡先: | |||
| 試験責任者 | 黒川雄二 | ||
| 国立衛生試験所安全性生物試験研究センター毒性部 | |||
| 〒158東京都世田谷区上用賀1-18-1 | |||
| Tel 03-3700-1141 | Fax 03-3700-2348 | ||
| Correspondence: | |||
| Kurokawa, Yuji | |||
| Division of Toxicology, Biological Safety Research Center, National Institute of Health Sciences, Japan | |||
| 1-18-1 Kamiyoga, Setagaya-ku, Tokyo, 158, Japan | |||
| Tel 81-3-3700-1141 | Fax 81-3-3700-2348 | ||