9-cis-オクタデセン酸(2,3-ジヒドロキシプロピル)エステルのラットを用いる単回経口投与毒性試験

Single Dose Oral Toxicity Test of 2,3-Dihydroxypropyl 9-cis-octadecenoate in Rats

要約

 9-cis-オクタデセン酸(2,3-ジヒドロキシプロピル)エステルの急性経口毒性をOECD試験ガイドライン「急性毒性等級法」に従って検討した.動物は6週齢のSprague-Dawley系SPFラット[Crj:CD(SD)IGS〕とし,1投与段階(1群)につき雌3匹ずつ用いて2000 mg/kgの投与量で2段階行った.

 2000 mg/kgを投与した2段階の投与に死亡はみられなかったことから,GHSのCategory 5(>2000-5000 mg/kg)に分類される.投与したいずれの動物にも一般状態,体重推移及び剖検結果に異常はみられなかった.

方法

1. 被験物質及び被験液の調製

 9-cis-オクタデセン酸(2,3-ジヒドロキシプロピル)エステル(太陽化学,ロット番号401160,含量99.93 %)は淡黄色の粒状で僅かな特異臭を有している.なお,投与終了後の残余被験物質を分析した結果,使用期間中は安定であったことが確認された.

 被験物質は,投与容量が10 mL/kg体重となるように,乳鉢を用いてコーンオイルに懸濁し,200 mg/mL懸濁液を調製した.調製は投与の2日前に行い,使用時まで遮光瓶に入れて冷蔵(実測値3〜5℃)で保存した.なお,被験液は上記条件下で安定であることを確認した.また,投与に使用した被験液について濃度及び均一性を測定した結果,適正な濃度,均一性であった.

2. 試験動物及び飼育条件

 5週齢のCrj:CD(SD)IGS系SPFラットを日本チャールス・リバーから購入し,1週間以上検疫・馴化飼育した後,健康な動物を選び6週齢で試験に供した.1群の動物数は雌3匹とし,投与日の体重範囲は,123〜125 g(平均体重 ± 20 %の範囲内)であった.

 動物は各投与段階の投与前日に段階内(群内)の体重ができるだけ均等となるよう体重層別化無作為抽出法により1段階3匹選抜(群分け)した.

 動物は,温度23 ± 3℃,相対湿度50 ± 20 %,換気回数1時間当たり10〜15回,照明1日12時間の飼育室で,金属製網ケージに1匹ずつ収容し,固形飼料CRF-1(オリエンタル酵母工業)及び飲料水(水道水)を自由に摂取させた.

3. 投与量及び投与方法

 被験物質の急性経口毒性は極めて弱いと予想された.したがって,開始投与量は2000 mg/kgを選択した.以降の投与量については,毒性試験ガイドライン「急性毒性等級法」の試験手順に準じて設定した.すなわち,第1段階の投与において死亡動物が認められなかったことから,第2段階の投与量も2000 mg/kgを選択した.1段階(1群)の動物数は雌3匹とした.

 動物は,投与前に約16時間絶食させた後,所定濃度の被験液を10 mL/kg体重の容量で,胃ゾンデを用いて1回強制経口投与した.なお,投与後の給餌は投与後6時間の一般状態観察後に実施し,給水は投与に関係なく継続して行った.

4. 検査項目

 観察期間は投与後14日間とし,投与6時間後までは頻繁に,その後は1日1回,一般状態及び生死の観察を行った.体重は投与直前に測定し,これを投与液量算出の基準にした.更に,投与1,2,3,7,10及び14日後,全動物の体重を測定した.観察期間終了後,全動物をエーテル深麻酔下で放血致死させた後,体外表,頭部,胸部及び腹部を含む全身の器官・組織の異常の有無を肉眼的に観察した.

 

試験結果

 1. 死亡状況

 2000 mg/kgを投与した第1及び第2段階のいずれにも死亡動物は認められなかった.

 2. 一般状態

 各段階いずれの動物にも,観察期間を通じて一般状態に異常はみられなかった.

 3. 体重

 各段階いずれの動物にも,観察期間を通じて体重推移に異常は認められなかった.

 4. 剖検

 各段階いずれの動物にも,体外表並びに頭部,胸部及び腹部の器官・組織に異常はみられなかった.

考察

 9-cis-オクタデセン酸(2,3-ジヒドロキシプロピル)エステルの急性経口毒性を6週齢のSprague-Dawley系SPFラット[Crj:CD(SD)IGS〕を1投与段階(1群)につき雌3匹ずつ用いて「急性毒性等級法」により検討した.投与は2000 mg/kgの投与量で2段階行った.

 2000 mg/kgを投与した2段階の投与において死亡はみられなかったことから,GHSのCategory 5(>2000-5000 mg/kg)に分類される.

 一般状態,体重及び剖検では,各段階のいずれの動物にも異常はなく,被験物質投与の影響は認められなかった.

連絡先
試験責任者: 石田 茂
試験担当者: 田代千絵,杉山文彦
(株)ボゾリサーチセンター御殿場研究所
〒412-0039 静岡県御殿場市かまど1284
Tel 0550-82-2000 Fax 0550-82-2379

Correspondence
Authors: Shigeru Ishida (Study director)
Chie Tashiro, Fumihiko Sugiyama
Gotemba Laboratory, Bozo Research Center Inc,
1284, Kamado, Gotemba-shi, Shizuoka, 412-0039, Japan
Tel +81-550-82-2000 Fax +81-550-82-2379