プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのラットを用いる
反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験
Combined Repeat Dose and Reproductive/Developmental Toxicity Screening Test of
Propylene Glycol Monomethyl Ether Acetate by Oral Administration in Rats
要約
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは,油,ゴム,樹脂等の溶媒として用いられている化学物質である.本物質の毒性について,ラットにおける単回経口LD50値は8500 mg/kg1)で,ラットに14日間反復投与した吸入毒性試験では,鎮静,麻酔状態などの急性中毒症状の発現する3000 ppm濃度で,上気道粘膜の刺激性変化,尿比重の低下傾向,軽度な肝臓重量の増加および雄の腎臓の近位尿細管上皮における硝子滴の増加が認められたと報告2)されている.しかし,反復経口投与毒性および生殖発生毒性については,明らかにされていない.
今回,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートについて,ラットを用い,0,100,300および1000 mg/kg/dayの用量で反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験を実施した.動物は1群雌雄各10匹とし,被験物質は交配開始14日間前から雄は44日間,雌は分娩後哺育3日(41〜45日間)まで投与した.
1. 反復投与毒性
雄親について,1000 mg/kg群で摂餌量の減少傾向および体重増加量の有意な減少が認められた.一般状態の観察,尿検査および血液学検査では,変化は認められなかった.血液生化学検査では,1000 mg/kg群で血糖および無機リンの有意な減少が認められた.器官重量では,1000 mg/kg群で副腎相対重量の有意な増加が認められた.しかし,病理組織学検査では,各器官に被験物質の投与に起因する変化は認められなかった.
一方,雌親について,1000 mg/kg群で交配前期間に体重および体重増加量の有意な減少が認められた.病理学検査では,変化は認められなかった.
以上の結果から,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのラットへの反復経口投与により,成長に対する影響,血液生化学的影響等が認められた.無影響量は,雌雄とも300 mg/kg/dayと推定された.
2. 生殖発生毒性
親動物の生殖能および児動物の発生に関する各指標に,変化は認められなかった.したがって,雌雄親動物の生殖能および児動物の発生に対する無影響量は,いずれも1000 mg/kg/dayと推定された.
方法
1. 被験物質
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは,分子量132.16,融点-80℃以下,比重0.969(20/20℃),水および有機溶剤に可溶な無色透明の液体である.試験には,協和油化製造のもの(ロット番号118,純度99.9%)を入手し,冷暗所(4℃)で密栓保管し使用した.投与液は,局方精製水(共栄製薬)に溶解して調製し,使用時まで冷暗所(4℃)で密栓保管した.被験物質の原体および投与液中の被験物質を分析し,安定であることを確認した.
2. 使用動物および飼育条件
日本チャールス・リバーより搬入したSD系〔Crj:CD(SD)〕ラットを12日間検疫・馴化飼育した後,一般状態に異常が認められなかったものを,雄は9週齢(388-436 g),雌は8週齢(217-239 g)で,1群雌雄各10匹として試験に供した.ラットは,温度21-22℃,湿度55-60 %,換気回数10回以上/時,照明12時間(6-18時)に制御された飼育室で,金網ケージに個別に収容し,固型飼料〔ラボMRストック,日本農産工業〕および水を自由に摂取させた.ただし,交尾成立後の雌は,巣作り材料〔ホワイトフレーク,日本チャールス・リバー〕を入れたポリカーボネート製ケージに収容した.
3. 投与量および投与方法
投与量設定試験として,1群雌雄各4匹のラットに,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの0,100,250,500および1000 mg/kg/dayを14日間経口投与した.投与7日の夕方から交尾が成立するまで,雌雄を1対1で同居させた.その結果,一般状態,体重,摂餌量,尿検査,血液学検査,血液生化学検査,剖検および器官重量において,有意な変化は認められなかった.また,全例が交尾した.そこで,本試験における投与量は,試験法ガイドラインで規定された上限量の1000 mg/kg/dayを最高用量とし,以下300および100 mg/kg/dayの3用量を設定した.投与方法は,最高用量を確実に水溶液に調製できる6 mL/kgを投与液量とし,テフロン製胃ゾンデを装着した注射筒を用いて,雌雄とも交配開始14日前から雄は44日間,雌は分娩後の哺育3日(41-45日間)まで,1日1回(午前中)経口投与した.対照群には,被験物質の溶媒として用いた局方精製水を同様に投与した.
4. 観察および検査
1) 親動物に関する項目
(1) 一般状態観察
投与期間中毎日,動物の生死,外観,行動等について観察した.
(2) 体重および摂餌量測定
体重の測定は,投与開始日(投与開始直前)およびその後は7日間隔で行い,さらに最終投与日と屠殺日に測定した.ただし,雌の妊娠後は,妊娠0,7,14 および20日,ならびに哺育0および4日に測定した.摂餌量は,体重測定日に合わせて,翌日までの24時間の飼料消費量を測定した.雌の哺育4日の摂餌量は,前日からの24時間消費量を測定した.
(3) 交配および分娩状態観察
投与15日の午後に,雄のケージに同一群内の雌を入れ(1対1),交尾が確認されるまで連続同居させた.交尾の確認は毎朝一定時刻(9:30分頃)に行い,膣栓形成あるいは膣垢中に精子が確認された日を妊娠0日とした.分娩状態の観察も同じ時刻に行い,1腹ごとに全児の出産が確認された日を哺育0日とした.交配および分娩の観察結果から,各群について同居から交尾成立までの日数,交尾率〔(交尾成立動物数/同居動物数)×100〕,受胎率〔(受胎雌数/交尾成立雌数)×100〕および出産率〔(生児出産雌数/妊娠雌数)×100〕ならびに分娩した例について妊娠期間(妊娠0日から分娩が確認された日までの日数)を算定した.
(4) 雄の臨床病理学検査
尿検査:投与40日に新鮮尿を採取してpH,潜血,タンパク,糖,ケトン体,ビリルビンおよびウロビリノーゲン〔以上,マイルス・三共,マルティスティックス〕を,またラットを代謝ケージに収容(約3時間)して得た蓄尿について,外観,比重の測定〔エルマ光学,屈折計〕および沈渣を検査[URI-CELL®液(ケンブリッジケミカルプロダクト社)で染色して鏡検]した.
血液学検査:採血は,投与期間終了翌日にエーテル麻酔下で開腹して腹大動脈より行った.動物は採血前日の午後5時より除餌し,水のみを与えた.採取した血液は3分割し,その一部はEDTA-2Kで凝固防止処理し,多項目自動血球計数装置〔東亜医用電子,E-4000〕により,赤血球数(電気抵抗検出方式),血色素量(ラウリル硫酸ナトリウム・ヘモグロビン法),ヘマトクリット値(パルス検出方式),平均赤血球容積(MCV),平均赤血球血色素量(MCH),平均赤血球血色素濃度(MCHC,以上計算値),白血球数および血小板数(以上,電気抵抗検出方式)を,また塗抹標本を作製して網状赤血球数(Brilliant cresyl blueで染色して鏡検)を測定した.さらに一部は3.8 %クエン酸ナトリウム液で処理して血漿を得,血液凝固自動測定装置(アメルング社,KC-10A)により,プロトロンビン時間(PT,Quick一段法)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT,エラジン酸活性化法)を測定した.
血液生化学検査:採取した血液の一部から血清を分離し,生化学自動分析装置〔日本電子,JCA-VX-1000型クリナライザー〕により,総タンパク(Biuret法),アルブミン(BCG法),A/G比(計算値),グルコース,トリグリセライド,総コレステロール(以上,酵素法),総ビリルビン(Jendrassik法),尿素窒素(Urease-UV法),クレアチニン(Jaff)法,GOT,GPT,γ-GTP,LDH(以上,SSCC法),アルカリホスファターゼ(ALP,GSCC法),コリンエステラーゼ(ChE,BTC-DTNB法),カルシウム(OCPC法)および無機リン(酵素法)を,また電解質自動分析装置〔東亜電波工業,NAKL-1〕により,ナトリウム,カリウムおよび塩素を測定した.
(5) 病理学検査
雄は採血に続いて,また雌の計画屠殺動物は哺育4日の観察終了後に,対照群および300 mg/kg群で各1匹認められた妊娠しなかった雌については分娩予定日の4日後に,1000 mg/kg群で1匹認められた交尾しなかった雌については交配期間終了の翌日に,いずれもエーテル麻酔下で放血屠殺して剖検し,脳,下垂体,甲状腺,心臓,肝臓,腎臓,脾臓,副腎,胸腺ならびに雄についてはさらに精巣,精巣上体を秤量した.雌については,卵巣の黄体数および子宮の着床数を調べ,着床率〔(着床数/黄体数)×100〕を算定した.病理組織学検査は,採取した器官を10 %中性リン酸緩衝ホルマリン液(精巣,精巣上体のみブアン液)で固定後,対照群および1000 mg/kg群の雌雄全例,ならびに他の群の交尾あるいは妊娠しなかった雌雄の脳,脊髄,下垂体,甲状腺(上皮小体を含む),胸腺,心臓,気管,肺,肝臓,腎臓,副腎,脾臓,胃,小腸(十二指腸・空腸・回腸),大腸(盲腸・結腸・直腸),膵臓,膀胱,骨髄(大腿骨,胸骨),リンパ節(腸管膜リンパ節,頚部リンパ節),坐骨神経,その他肉眼的異常部位,さらに,雄では精巣,精巣上体,前立腺,精嚢,雌では卵巣,子宮,膣,乳腺について,100および300 mg/kg群の妊娠した雌雄では,1000 mg/kg群で毒性影響の可能性が考えられる変化の認められた雄の腎臓および肉眼的異常部位について,常法に従いパラフィン切片を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色を施して鏡検した.また,沈着物を同定するため,一部の雌雄の脾臓については鉄染色(ベルリンブルー法),一部の雄の腎臓についてはPAS染色も行った.
2) 新生児に関する項目
(1) 産児数および性比の観察
分娩の終了後各腹の産児数(生児と死亡児の合計)を調べ,分娩率〔(総出産児数/着床数)×100〕を算定した.性別は肛門と生殖突起の距離の長短により判定し,群ごとの性比を算出した.
(2) 外表異常および一般状態観察
分娩完了後,口腔内を含む外表の異常を観察した.また,毎日一般状態および生死を確認し,出生率〔(出産確認時生児数/総出産児数)×100〕および新生児生存率〔(哺育4日生児数/出産確認時生児数)×100〕を求めた.
(3) 体重測定
新生児について哺育0日および4日に雌雄別に各腹ごとの総体重を測定し,1匹当たりの平均体重を算出した.
(4) 病理学検査
死亡例は発見時に,生存例は雌親の解剖時(哺育4日)に麻酔死させ,胸部および腹部における主要器官を肉眼的に観察した.
5. 統計解析
パラメトリックデータは,Bartlettの分散検定を行い,分散が一様な場合は一元配置の分散分析を行った.分散が一様でない場合およびノンパラメトリックデータは,Kruskal-Wallisの順位検定を行った.それらの結果有意差を認めた場合,Dunnett 法またはScheff法(群の大きさが異なる場合)により対照群に対する各群の比較検定を行った.カテゴリカルデータは,生殖発生毒性に関するパラメータにはc 2検定を,病理組織学検査における異常例の出現率にはFisherの直接確率法を用いた.なお,新生児に関するデータは,1腹当たりの平均を1標本とした.
結果
1. 反復投与毒性
1) 死亡動物および一般状態
死亡は認められず,一般状態についても被験物質の投与に起因する変化は認められなかった.なお,被験物質の投与とは無関係に,散発的に脱毛が対照群で雄1匹,雌2匹,300 mg/kg群で雌1匹,1000 mg/kg群で雌1匹,痂皮形成が300 mg/kg群で雌1匹に認められた.
2) 体重(Fig.1,2,Table 1)
1000 mg/kg群の雄の体重は,投与の日数に伴い対照群をやや下回って推移する傾向が認められ,投与期間中の体重増加量は有意に減少した.1000 mg/kg群の雌の体重は,交配前期間の投与15日に対照群と比べ有意な減少が認められ,交配前期間中の体重増加量も有意に減少した.
3) 摂餌量(Fig.3,4)
1000 mg/kg群の雄の摂餌量は,投与期間を通じて対照群をやや下回る傾向にあり,投与29日および36日の摂餌量には有意差が認められた.雌の摂餌量には,被験物質の投与に起因すると考えられる有意な変化は認められなかった.300 mg/kg群の妊娠0日の摂餌量は対照群と比べ有意に高値を示したが,変化に用量依存性は認められなかった.
4) 雄の尿検査
各検査項目に,有意な変化は認められなかった.
5) 雄の血液学検査(Table 2)
各検査項目に,被験物質の投与に起因すると考えられる有意な変化は認められなかった.100 mg/kg群のプロトロンビン時間は対照群と比べ有意に高値を示したが,変化に用量依存性は認められなかった.
6) 雄の血液生化学検査(Table 3)
1000 mg/kg群で,血糖および無機リンの有意な減少が認められた.
7) 剖検
雌雄とも,被験物質の投与に起因する変化は認められなかった.なお,被験物質の投与とは無関係と考えられる変化として,散発的に肺の黒色/赤色点が対照群の雌雄各1匹,水腎症(左側)が100 mg/kg群の雌1匹および胸腺の赤色域が1000 mg/kg群の雌1匹に認められた.
8) 器官重量(Table 4)
1000 mg/kg群で,雄に副腎の相対重量の有意な増加が認められ,絶対重量も増加傾向を示した.なお,300 mg/kg群の雄の胸腺の絶対重量は対照群に比べて有意に低値を示したが,変化に用量依存性は認められなかった.
9) 病理組織学検査
雌雄とも,被験物質の投与に起因すると考えられる変化は認められなかった.また,各群に散発的に認められた交尾あるいは妊娠不成立の雌雄において,生殖器系器官および下垂体に変化は認められなかった.なお,雄の腎臓の近位尿細管上皮における好酸体の出現は,各群10匹中対照群の1匹に対し100 mg/kg群で4匹,300 mg/kg群で5匹,1000 mg/kg群で4匹に認められ,被験物質投与群の出現率が全般的に高い傾向にあった.しかし,好酸体の出現率の増加傾向は統計学的に有意な変化でなく,また用量依存性も認められなかった.一般状態の観察で各群に散発的に認められた脱毛/痂皮形成例には皮膚の表皮肥厚,好中球浸潤および潰瘍,剖検で投与とは無関係に認められた肺の赤色/黒色点には出血,好中球浸潤,マクロファージの集簇,胸腺の赤色域には出血,水腎症には腎実質の重度な萎縮が確認された.以上の変化以外にも,検査した各器官に各種の変化が観察されたが,いずれも用量依存性は認められず,背景病変と判断される変化であった.
2. 生殖発生毒性
1) 親動物に及ぼす影響(Table 5)
(1) 交尾率および受胎率
交尾不成立の雌雄が1000 mg/kg群に認められたが1対のみで,交尾率に有意な変化は認められなかった.また,交尾成立までの日数および受胎率にも,有意な変化は認められなかった.
(2) 黄体数,着床数,着床率,出産率および妊娠期間
有意な変化は認められなかった.
(3) 分娩および哺育状態
各群の妊娠動物とも,分娩状態および哺育状態に異常は認められなかった.
2) 新生児に及ぼす影響(Table 6)
(1) 生存性
総出産児数,分娩率,哺育0日および4日の新生児数,性比,出生率および哺育4日生存率に,有意な変化は認められなかった.新生児の一般状態にも変化は認められなかった.
(2) 体重
哺育0日および4日の新生児体重に,有意な変化は認められなかった.
(3) 形態
被験物質の投与に起因すると考えられる外形および内臓の異常は認められなかった.外表異常については,1000 mg/kg群で無尾が1匹(0.6%)認められた.内臓異常は認められなかった.内臓変異については,胸腺の頚部残留および左臍動脈遺残が対照群を含む各群に散見されたが,その頻度には群間に差は認められなかった.
考察および結論
1. 反復投与毒性
雄親,雌親とも,1000 mg/kg群で毒性影響が認められた.すなわち,雄親では,体重および摂餌量とも対照群を下回る傾向にあり,投与期間中の体重増加量は有意に減少した.血液生化学検査では,血糖および無機リンの有意な減少が認められた.また,器官重量では副腎相対重量の有意な増加が認められた.しかしながら,副腎を含む各器官に被験物質の投与に起因する病理組織学的変化は認められなかった.
したがって,血糖および無機リンの減少については,摂餌量の減少に伴う軽度な栄養障害を示唆する変化と考えられる.また,副腎相対重量の増加については,被験物質の毒性によるストレスの影響が軽度に現れたものと推察される.
一方,雌親においても,交配前期間において体重および体重増加量の有意な減少が認められた.しかし,一般状態,摂餌量,器官重量,剖検および病理組織学検査では,被験物質の投与に起因する変化は認められなかった.
Millerら2)は,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1-メトキシ-2-プロパノール酢酸エステル)のラットを用いた14日間の吸入毒性試験で,急性毒性症状の発現する高濃度で肝臓および腎臓に対する軽度な影響を認めている.
本物質の生体内動態については,ラットへの投与において,血中に未変化体が検出されないことから速やかに加水分解されて1-メトキシ-2-プロパノールと酢酸が生成され2, 3),1-メトキシ-2-プロパノールはその多くが炭酸ガスとして呼気中に,一部はプロピレングリコール,1-メトキシ-2-プロパノールの硫酸およびグルクロン酸抱合体として尿中に排泄されることが報告されている2, 4).
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの肝臓および腎臓に対する影響は,反復投与吸入毒性試験の結果から主にその中間代謝物である1-メトキシ-2-プロパノールによるものと推定されている2, 5).しかし,1-メトキシ-2-プロパノールの毒性は弱く,ラットへの35日間反復経口投与においても,3 mL/kg/dayの大量投与で肝細胞と腎臓尿細管上皮の混濁腫脹および両器官の重量増加を示すが,1 mL/kg/day以下では変化を示さないことが知られており6),最高用量1000 mg/kgのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを反復経口投与した本試験においても,肝臓および腎臓に対する影響を示唆する変化は認められなかった.
以上の結果から,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのラットへの反復投与により,成長に対する影響および血液生化学的影響等が認められた.無影響量は雌雄とも300 mg/kg/dayと推定された.
2. 生殖発生毒性
雄親および雌親の生殖に対する被験物質の投与による影響について,観察した各指標とも対照群と比べ有意な変化は認められなかった.また,児動物の発生に関する指標に対しても影響は認められなかった.
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの中間代謝物である1-メトキシ-2-プロパノールは,ラット,マウスおよびウサギを用いた経口7)および吸入投与8, 9)による催奇形性試験で,いずれも催奇形性は認められていない.本試験では,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの経口投与においても,生殖発生毒性を示唆する変化は認められなかった.
なお,本被験物質の異性体である2-メトキシ-1-プロパノール酢酸エステル10)あるいはその中間代謝物である2-メトキシ-1-プロパノール11)はラットやウサギに対して催奇形性を示すが,これはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートや1-メトキシ-2-プロパノールとは代謝が異なり,毒性を有する代謝物が生成されることによると考えられている12).
以上の結果から,雌雄親動物の生殖能および児動物の発生に対する影響は1000 mg/kg/day投与によっても認められず,無影響量はいずれも1000 mg/kg/dayと推定された.
文献
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連絡先 |
| 試験責任者: | 伊藤義彦 |
| 試験担当者: | 野田 篤,赤木 博,河村未佳,星 史子, 迫川朋子 |
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