検定菌として,Salmonella typhimurium TA100, TA1535, TA98, TA15371) および Escherichia coli WP2 uvrA2) を用い,S9 Mix 無添加および添加試験のいずれも,用量設定試験は,50〜5000 μg/プレートの用量で行ったところ,抗菌性が認められなかったことから,本試験は 312.5〜5000 μg/プレートの用量で実施した.
その結果,2回の本試験とも,用いた5種類の検定菌について,いずれの用量でも溶媒対照値の2倍以上となる変異コロニー数の増加が認められなかったことから,アジピン酸ジブチルは,用いた試験系において変異原性を有しない(陰性)と判定された.
アジピン酸ジブチルは,ジメチルスルホキシド(以下 DMSO と略)に 50 mg/ml になるように調製した後,同溶媒で更に公比2ないし約3で希釈したものを,速やかに試験に用いた.
被験物質のDMSO 中での安定性試験を 2.30 mg/ml および 520 mg/mlの2濃度について,室温遮光条件下で実施した.その結果,調製後4時間における各3サンプルの平均含量は,それぞれ初期値(0時間) の平均に対して,101および 97.2%であった.また,本試験IIに用いた調製検体について,含量測定試験を行った結果,3.125 mg/ml溶液は,105〜107%,50 mg/ml 溶液の含量は既定濃度に対し,99.8〜105%であった.以上の結果から,アジピン酸ジブチルは DMSO 溶液中では安定であり,また調製液中の被験物質の含量は所定の値の範囲内にあることが確認された.
| AF2 | : | フリルフラマイド | (上野製薬(株)) |
| SA | : | アジ化ナトリウム アジ化ナトリウム | (和光純薬工業(株)) |
| 9AA | : | 9-アミノアクリジン | (Sigma Chem. Co.) |
| 2AA | : | 2-アミノアントラセン | (和光純薬工業(株)) |
| (A) | バクトアガー (Difco) | 0.6% |
| 塩化ナトリウム | 0.5% | |
| (B) | * L-ヒスチジン | 0.5 mM |
| ビオチン | 0.5 mM |
| *: | WP2 用には,0.5 mM L-トリプトファン水溶液を用いた. |
| 硫酸マグネシウム・7水和物 | 0.2g |
| 水酸化ナトリウム | 0.66g |
| クエン酸・1水和物 | 2g |
| グルコース | 20g |
| リン酸水素二カリウム | 10g |
| リン酸一アンモニウム | 1.92g |
| バクトアガー (Difco) | 15g |
| **S9 | 0.1 ml |
| NADH | 4 μmol |
| NADPH | 4 μmol |
| グルコース-6-リン酸 | 5 μmol |
| 塩化マグネシウム | 8 μmol |
| 塩化カリウム | 33 μmol |
| ナトリウム-リン酸緩衝液 (pH 7.4) | 100 μmol |
| **: | 7週齢の Sprague-Dawley 系雄ラットをフェノバルビタール(PB)および 5,6-ベンゾフラボン(BF)の併用投与で酵素誘導して作製した S9 (キッコーマン(株))を用いた. |
小試験管中に,被験物質調製液 0.1 ml,リン酸緩衝液 0.5 ml(S9 Mix 添加試験ではS9 Mix 0.5 ml),検定菌液 0.1 ml およびトップアガー2 mlを,混和したのち合成培地平板上に流して固めた.また,対照群として被験物質調製液の代わりに DMSO または数種の陽性対照物質溶液を用いた.各検定菌ごとの陽性対照物質の名称および用量は Table1〜2に示した.培養は37 ℃で48時間行い,生じた変異コロニー数を算定した.抗菌性の有無については,肉眼的あるいは実体顕微鏡下で,寒天表面の菌膜の状態から判断した.
したがって,本試験における最高用量を,すべての検定菌において,直接法,代謝活性化法ともに 5000 μg/プレートとすることとした.
以上の結果に基づき,アジピン酸ジブチルは,用いた試験系において変異原性を有しないもの(陰性)と判定した.
| 1) | D.M. Maron, B.N. Ames, Mutation Research, 113, 173-215 (1983). |
| 2) | M.H.L. Green, in "Handbook of Mutagenicity Test Procedures." B.J. Kilbey, M. Legator, W. Nichols, C. Ramel, (eds.) Elsevier, Amsterdam, New York, Oxford, 1984, pp. 161-187. |
| 連絡先: | |||
| 試験責任者: | 澁谷 徹 | ||
| 試験担当者: | 堀谷尚古,坂本京子,川上久美子,松木容彦,飯田さやか,中込まどか | ||
| (財)食品薬品安全センター秦野研究所 | |||
| 〒257 神奈川県秦野市落合 729-5 | |||
| Tel 0463-82-4751 | Fax 0463-82-9627 | ||
| Correspondence: | |||
| Authors: | Tohru Shibuya (Study Director) | ||
| Naoko Horiya, Kyoko Sakamoto, | |||
| Kumiko Kawakami,Yasuhiko Matsuki, | |||
| Sayaka Iida and Madoka Nakagomi | |||
| Hatano Research Institute, Food and Drug Safety Center | |||
| 729-5 Ochiai, Hadano-shi, Kanagawa, 257, Japan | |||
| Tel 81-463-82-4751 | Fax 81-463-82-9627 | ||