2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールのラットを用いる単回経口投与毒性試験

Single Dose Oral Toxicity Test of 2-sec-Butyl-4,6-dinitrophenol in Rats

要約

 2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールを雌ラットに1回経口投与し,その毒性について検討した.投与量は,第1回試験は50 mg/kg,第2回試験は5 mg/kg,第3回試験は5 mg/kgとした.媒体にはトウモロコシ油を用いた.各群の使用動物数は各3例とした.

 死亡例は,50 mg/kg投与で投与後1日までに3例全例に認められた.

 一般状態において,50 mg/kg投与で腹臥位,緩徐呼吸,下痢便および自発運動の低下がみられたが,5 mg/kg投与では異常はみられなかった.5 mg/kg投与では,体重推移に異常はみられなかった.剖検において,50および5 mg/kg投与とも異常はみられなかった.

 以上の結果から,2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールの急性毒性は,GHSのカテゴリー2に分類される.

方法

1. 被験物質および媒体

 2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールは,融点が41.0℃,黄色の塊,溶融時は黄色澄明液体であり,水に不溶である[Lot No.RWN9641,純度:96.0 %,和光純薬工業(大阪)].入手後は,冷蔵条件下で保管した.投与終了後に被験物質を分析し,使用期間中安定であったことを確認した.

 2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールは,トウモロコシ油で溶解して調製した.なお,被験物質の調製に際して,純度による換算を実施した.0.02,1および30 mg/mLの調製液は,冷蔵・遮光条件下で7日間保管後,さらに室温・遮光条件下で6時間保管しても安定性に問題のないことが確認されている.投与検体は,用時調製とし,調製後6時間以内に使用した.投与に使用した投与検体中の被験物質濃度を測定した結果,被験物質の濃度に問題はなかった.

2. 使用動物および飼育条件

 7週齢のCrj:CD(SD)IGS雌ラット(SPF)を日本チャールス・リバーから購入した.入手した動物は,5日間の検疫期間およびその後2日間の馴化期間を設け,一般状態および体重推移に異常の認められなかった動物を群分けした.群分けは,第1回目,第2回目および第3回目とも投与日にコンピュータを用いて無作為抽出法により行った.

 動物は,室温20〜26℃,湿度40〜70 %,明暗各12時間(照明:午前6時〜午後6時),換気回数12回/時に維持された飼育室で飼育した.検疫・馴化期間中および群分け後とも,ステンレス製ケージを用いて個別飼育した.飼料は,固型飼料(CRF-1,オリエンタル酵母工業)を自由に摂取させた.ただし,投与前日の夕刻から投与までの約18〜19時間と投与後約6時間まで絶食した.飲料水は,水道水を自由に摂取させた.ただし,群分け時から投与後約6時間までは絶水した.

3. 投与経路,投与方法および投与量

 投与経路は,経口投与を選択した.投与に際しては,金属製経口胃ゾンデを取り付けたポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒を用いて,強制経口投与した.投与液量は,投与直前に測定した体重を基準として10 mL/kgで算出した.投与回数は1回とした.投与日の週齢は8週齢であり,体重範囲は178〜190 gであった.

 2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールのラット経口投与によるLD50値は25 mg/kgとの情報がある1).従って,50 mg/kgを第1回試験の投与量とした.第1回試験の50 mg/kg投与で3例全例が死亡したため,5 mg/kgを第2回試験の投与量とした.第2回試験の5 mg/kg投与で死亡例が認められなかったため,5 mg/kgを第3回試験の投与量とした.各試験の動物数は,3例とした.

4. 観察および検査項目

1) 観察期間

 投与後14日間とした.

2) 一般状態

 投与日は投与後6時間(投与直後〜投与後30分,投与後2,4および6時間)まで,投与翌日からの観察期間中は1日1回,一般状態および死亡の有無を観察した.

3) 体重測定

 投与日ならびに投与後1,3,7,10および14日に測定した.

4) 剖検

 死亡動物は,速やかに剖検した.生存動物は,観察期間終了日にジエチルエーテル麻酔下で腹大動脈から放血致死させた後に剖検した.

5. 統計解析

 LD50値は概略の範囲を推定した.

 体重は,各群で平均値および標準偏差を算出した.

結果

1. 死亡状況,LD50値および一般状態(Table 1)

 死亡例は,第1回試験の50 mg/kg投与で投与後4時間に1例と投与後1日に2例の全例に認められた.第2回試験および第3回試験の5 mg/kg投与では,死亡例は認められなかった.2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールのLD50値は,5 mg/kgと50 mg/kgの間にあると推定される.

 一般状態において,第1回試験の50 mg/kg投与で投与後2時間に腹臥位,緩徐呼吸および下痢便が各1例,投与後4時間に下痢便および自発運動の低下が各1例,投与後6時間に自発運動の低下が2例にみられた.第2回試験および第3回試験の5 mg/kg投与では,異常はみられなかった.

2. 体重

 第2回試験および第3回試験の5 mg/kg投与では,体重は順調に推移した.

3. 剖検

 第1回試験の死亡例では,50 mg/kg投与で胃に検体様物質残留が1例にみられた.

 第2回試験および第3回試験の生存例では,5 mg/kg投与で異常はみられなかった.

考察

 2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールの急性毒性は,GHSのカテゴリー2に分類される.

 2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノールの50 mg/kg投与による死因は,投与後に腹臥,緩徐呼吸および自発運動の低下がみられたことから呼吸障害と考えられる.

文献

1) 和光純薬工業,未発表.

連絡先
試験責任者: 古橋忠和
試験担当者: 藤村高志,内藤一嘉,吉島賢一
蠧本バイオリサーチセンター羽島研究所
〒501-6251 岐阜県羽島市福寿町間島6-104
Tel 058-392-6222 Fax 058-392-1284

Correspondence
Authors: Tadakazu Furuhashi(Study director)
Takashi Fujimura, Kazuyoshi Naito,
Ken-ichi Yoshijima
Nihon Bioresearch Inc.
6-104, Majima, Fukuju-cho, Hashima, Gifu, 501-6251, Japan
Tel +81-58-392-6222 Fax +81-58-392-1284