2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオールのラットを用いた
反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験

Combined Repeat Dose and Reproductive/Developmental Toxicity Screening Test of
2-Ethyl-2-hydroxymethyl-1,3-propanediol in Rats

要約

既存化学物質の毒性学的性質を評価するため、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオ−ル(トリメチロ−ルプロパン)の 0(溶媒対照群)、12.5、50、200 および 800 mg/kg/day をSprague-Dawley系(Slc:SD)ラットに交配前2週間および交配期間 2 週間を通じて経投与し、さらに雄では交配期間終了後17日間、雌では妊娠期間を通じて分娩後哺育3日まで連続投与し、親動物に対する反復投与毒性および生殖能ならびに児動物の発生・発育に及ぼす影響について検討した。

1. 反復投与毒性

一般状態には被験物質投与の影響は認められず、死亡例も観察されなかった。

体重は雌雄の 800 mg/kg群で交配前期間に低値を示した。摂餌量は雌雄とも群間で差はなく被験物質投与の影響は認められなかった。

雄の血液学的検査では、被験物質投与の影響と考えられる変化はなかった。また、血液化学的検査でも、特定臓器の障害を示唆する検査値の変化は認められなかった。

器官重量は800 mg/kg 群の雄で肝臓重量が増加を示し、雌で増加傾向が認められた。雄の剖検所見では、800 mg/kg 群で12例中3 例に肝臓の肥大が観察されたが、病理組織学検査では肝臓の肥大を裏付ける明確な形態的変化は認められなかった。腎臓の所見として、尿細管上皮の軽度の好塩基性化が雌の 800 mg/kg群で10例中5例に観察されたが、分布および程度の上で軽度なこと、ならびに雄の全例に観察されていることから、被験物質投与の影響によるか否かは明確でなかった。

2. 生殖発生毒性

交尾能、受胎能および性周期観察では、被験物質投与の影響は認められなかった。

分娩時観察では、全例が正常に分娩し、哺育期間を通じ被験物質投与の影響は認められなかった。また、新生児の外表検査でも被験物質投与によると考えられる異常はなく、体重も哺育4日まで順調に増加した。死産児または哺育4日までの死亡児ならびに哺育4日の剖検では、被験物質投与によると考えられる異常所見は観察されなかった。

以上のことから、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオールの反復投与毒性は雌雄ともに800 mg/kg/day の投与で認められ、最大無影響量を雌雄ともに 200 mg/kg/dayと判断した。また、雌雄の生殖に及ぼす影響および児動物の発生・発育に及ぼす影響は800 mg/kg/day 投与によっても認められず、最大無影響量はともに800 mg/kg/day と判断した。

緒言

2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオ−ル(2-Ethyl-2-hydroxymethyl-1,3-propanediol,別名:Trimethylolpropane)は、化学産業の分野において塗料の主原料として使用されている化合物である。本化合物の毒性については、経口投与によるLD50値がラット 14,100 mg/kg、 マウス 13,700 mg/kgであることなどが報告されているが、ヒトや実験動物の生体に及ぼす影響についてはほとんど知られていない。今回、OECDによる既存化学物質の安全性点検に係わる毒性調査事業の一環として、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオ−ルの反復投与毒性および生殖・発生毒性について検討した。

方法

1. 被験物質

2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオ−ル[ロット番号 10617(広栄化学製)、Cas No. 77-99-6 、別名Trimethylolpropane (TMP)]は、分子量 134.18、融点59〜61℃、沸点292 ℃で水に可溶性の白色結晶状フレ−クであり、使用時まで室温条件下で密閉保管した。

本被験物質は局方注射用蒸留水[ロット番号9106AS, 9108CS, 9108VS(光製薬)]に溶解し、16(w/v) %溶液を調製した。これを原液とし、注射用蒸留水で順次希釈し各群の投与溶液を調製した。調製後は、使用時まで冷蔵庫に保存した。調製液中の被験物質は 0.2, 20(w/v) %溶液の場合、冷暗条件下ですくなくとも7日間安定であることが確認されているため、調製は1 週間に1 回実施し、調製後7日以内に使用した。

投与液の濃度分析は、各群の調製液について調製開始時に調製したバッチから無作為にサンプルを抽出し実施した。その結果、99.6〜104 %の範囲で適切に調製されており問題はなかった。

2. 使用動物および飼育条件

日本エスエルシー株式会社(静岡県浜松市)から購入した9週齢のSprague-Dawley(Slc:SD,SPF)系雌雄ラットを使用した。購入した動物は8日間検疫・馴化飼育した後、全例を10週齢で群分けして試験に用いた。群分け時の体重は、雄で 304〜343 g 、雌で196〜226g であった。

動物は、温度22〜24℃、湿度50〜60%、換気回数20回/時間、照度 150〜300 lux、照明時間12時間(午前7時点灯、午後7時消灯)に設定された飼育室(W 8×D 8×H 2.5 m、 160m^3 )で飼育した。株式会社 東京技研サービス(東京都府中市)の自動水洗式飼育機(W 486×D 79×H 160 cm)を使用し、アルミ製前面・床ステンレス網目飼育ケージ(W 15.8×D 23.8× H16.0 cm 、飼育ケ−ジ・スペ−ス 6,017 cm^3)に動物を1匹ずつ収容し飼育した。但し、交配期間中の雄は、アルミ製前面・床ステンレス網目飼育ケージ(W36.8×D 25.0×H 16.0 cm、飼育ケ−ジ・スペ−ス 14,720 cm^3 )に収容し飼育した。母動物は、妊娠18日以降哺育4日までアルミ製前面・床ステンレス網目飼育ケージ(W 36.8×D 25.0×H 16.0 cm )に哺育トレーおよび巣作り材料(アルファードライ)を入れて飼育した。

飼料は、オリエンタル酵母工業株式会社(東京都中央区)製造の NMF 固型飼料(放射線滅菌飼料)を使用した。飲水は、水道水を自由に摂取させた。

供給した飼料、水および巣作り材料には試験に支障を来す可能性の考えられる夾雑物の混在はなかった。

3. 群分け

動物はあらかじめ体重によって層別化し、無作為抽出法により各試験群を構成するように群分けし、1 群当たり各12匹を用意した。

群分け後の動物の識別は個体別に耳に入れ墨をするとともにケージごとに動物標識番号(Animal ID-No.) をつけた。

4. 投与量、群構成、投与期間および投与方法

本試験の用量は先に実施したラットを用いた反復投与毒性/生殖発生毒性併合予備試験の結果を参考にして決定した。すなわち、0, 10, 100および 1,000 mg/kgを雄および雌に2週間連続経口投与した結果、100 mg/kg 以上の投与群の雄ならびに 1,000 mg/kg群の雌で体重増加抑制が認められ、摂餌量でも 1,000 mg/kg群の雄で低値が認められた。また、1,000 mg/kg 群の雄では肝臓の実重量および相対重量がともに増加した。以上の結果から、本試験の投与期間が長期間になることを考慮し、最高用量として 800 mg/kg を設定し、以下公比4にて除し、 200, 50 および 12.5 mg/kg を設定した。

投与経路は、OECDガイドライン「反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験」で指示されている投与経路に準じて強制経口投与を選択した。投与容量は、体重 100 g当り 0.5 ml とし、個体別に測定した最新体重に基づいて算出を行った。胃ゾンデを用いて毎日1 回(7日/週)強制経口投与した。対照群には局方注射用蒸留水のみを投与した。

雄の投与期間は、交配前14日間と交配期間14日間および交配終了後の17日間の連続45日間とした。雌の投与期間は、交配前14日間と交配期間中(交尾成立まで最長14日間)ならびに交尾成立雌の妊娠期間を通じて分娩後の哺育3日まで(40〜52日間)とした。なお、交尾不成立の雌は交配期間終了後の解剖前日まで45日間投与した。

5. 観察および検査

1) 一般状態

雌雄とも、全例について試験期間中毎日観察した。

2) 体重

雄では、投与 0(投与開始日)、7、14、21、28、35、42 および46日(剖検日)に測定した。雌では、投与 0(投与開始日)、7、14 および21日に測定し、交尾不成立の雌はそれ以後は投与28、35、42および46日(剖検日)に測定した。交尾成立後の雌は、妊娠 0、7 、14、21日に、分娩した雌は哺育1 および4日に測定した。

3) 摂餌量

雄では、投与 0(投与開始日)、7および14日に餌重量を測定し、測定日から次の測定日までの間の摂餌量を求め平均1 日摂餌量を算出した。雌では、投与 0、7 および14日に餌重量を測定した。また、交尾成立の雌は妊娠 0、7、 14および21日に、分娩した雌は哺育1 および4日に餌重量を測定し、測定日から次の測定日までの間の摂餌量を求め平均1日摂餌量を算出した。なお、交配期間中および交配期間終了後の摂餌量は測定しなかった。

4) 交配

交配前14日間(交配開始日を含めて15日間)の性周期観察を行った雌と同群内の雄を1対1で最長2週間毎晩同居させた。翌朝、腟垢中の精子確認をもって交尾成立とし、その日を妊娠0日とした。

性周期観察は交尾成立日まで行い、発情期から次の発情期までの間の日数を性周期日数とし平均性周期を算出した。

交配結果から、各群について交尾率[(交尾成立動物数/同居動物数)× 100]を算出した。

5) 自然分娩時および新生児の観察

交尾成立動物は、全例を自然分娩させた。分娩の確認は午前中(午前9時〜12時)に行い、この時間帯に分娩が完了していることを確認した個体について、その日を哺育1日、その前日を分娩日(哺育0日)と規定した。午前12時を過ぎて分娩した個体については、翌日を哺育1 日とした。分娩を確認した全例について妊娠期間(哺育0日の年月日から妊娠0日の年月日を減じた日数)、受胎率[(受胎動物数/交尾成立動物数)× 100)]、出産率[(生児出産雌数/妊娠雌数)× 100]、着床率[(着床痕数/妊娠黄体数)× 100]、分娩率[(総出産児数/着床痕数)× 100]、出生率[(出産生児数/総出産児数)× 100]を算出した。

新生児は哺育1 日に出産児数(生存児+死亡児)を調べ、性別を判定するとともに、外形異常の有無を調べた。また、哺育1 および4日に雌雄別の同腹児重量を測定し、雌雄別1 匹当りの平均重量を算出した。

哺育4日に新生児全例を屠殺し、主要器官の肉眼観察を行った。哺育期間中の死亡児も同様に主要器官の肉眼観察を行った。また、新生児の4日生存率[(哺育4日生児数/出産生児数)× 100]を算出した。

6) 臨床検査

各群の雄全例について剖検時に実施した。動物を約16時間絶食させた後、エーテルで麻酔後開腹し、腹部大動脈から採血した。

a) 血液学的検査

血液学検査には初血を用いた。THMS H6000(米国テクニコン社)を用いて下記の項目を測定した(EDTA 3K添加血液)。
白血球数(WBC)暗視野板法
赤血球数(RBC)暗視野板法
ヘモグロビン量(HGB)シアンメトヘモグロビン法
ヘマトクリット値(HCT)全赤血球の容積より補正
平均赤血球容積(MCV)RBC, HCTより算出
平均赤血球血色素量(MCH)HGB, RBCより算出
平均赤血球血色素濃度(MCHC)HGB, HCTより算出
血小板数(PLT)暗視野板法
白血球百分率 フローサイトケミストリー法

網状赤血球数(RC)についてはキャピロット(テルモ株式会社、東京都渋谷区)で染色後、血液塗抹標本を作製し鏡検した。

b) 血液化学的検査

クリーンシール(株式会社ヤトロン、東京都千代田区)に血液を採取し、30分間放置後 3,000 r.p.m. 7分間遠心分離して得た血清を検査に用いた。生化学自動分析装置CentrifiChem ENCORE 供淵戞璽ー社、米国)および EKTACHEM 700N(コダック社、米国)を用いて下記の項目を測定した。

総蛋白(TP)ビューレット法
アルブミン(Alb)B.C.G.法
A/G計算値
血糖(Glu)ヘキソキナーゼ法
尿素窒素(BUN)ウレアーゼ改良法
クレアチニン(Crea)Jaff
総ビリルビン(T-Bili)ジアゾ色素法
グルタミン酸オキザロ 
酢酸トランスアミナーゼ(GOT)Karmen改良法
グルタミン酸ピルビン 
酸トランスアミナーゼ(GPT)Wroblewski and LaDue改良法
γーグルタミルトランス 
ペプチダーゼ(γ-GTP)酵素法
カルシウム(Ca)アリザリン法
無機リン(IP)モリブデンブルー法
カリウム(K)電極法
塩素(Cl)電極法

7. 病理学検査

1) 剖検および器官重量測定

a) 雄動物

45日間投与後、約16時間の絶食をさせ、エーテル麻酔下で放血安楽死させた。主要器官の肉眼的観察を行い、肝臓、腎臓、胸腺、精巣上体および精巣重量を測定し、器官重量・体重比を算出した。また、全動物の重量測定器官に加えて脳、心臓、脾臓、副腎、精嚢、前立腺、下垂体および肉眼所見で変化が認められた器官・組織として肺を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。なお、精巣および精巣上体はブアン氏液に固定した。

b) 自然分娩した雌

哺育4日にエーテル麻酔後放血安楽死させ、主要器官の肉眼的観察を行った後、肝臓、腎臓、胸腺および卵巣重量を測定し、器官重量・体重比を算出した。また、全動物の重量測定器官に加えて脳、心臓、脾臓、副腎、下垂体および肉眼所見で変化が認められた器官・組織として肺を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。また、剖検時に黄体数および着床痕数を調べた。

c) 交尾不成立の雌

45日間投与後、エーテル麻酔後放血安楽死させ、主要器官の肉眼的観察を行った後、皮膚、乳腺、リンパ節、唾液腺、胸骨、大腿骨(骨髄を含む)、胸腺、気管、肺および気管支、心臓、甲状腺および上皮小体、舌、食道、胃および十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、卵巣、子宮、腟、眼球、ハーダー腺、脳、下垂体および脊髄を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。

d) 自然分娩の認められない雌

妊娠25日にエーテル麻酔後放血安楽死させ、主要器官の肉眼的観察を行った後、皮膚、乳腺、リンパ節、唾液腺、胸骨、大腿骨(骨髄を含む)、胸腺、気管、肺および気管支、心臓、甲状腺および上皮小体、舌、食道、胃および十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、卵巣、子宮、腟、眼球、ハーダー腺、脳、下垂体および脊髄を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。着床痕が認められない動物は不妊と判定した。

e) 全児死亡の認められた雌

生存児すべての死亡または喰殺が確認された日にエーテル麻酔後放血安楽死させ、主要器官の肉眼的観察を行った後、皮膚、乳腺、リンパ節、唾液腺、胸骨、大腿骨(骨髄を含む)、胸腺、気管、肺および気管支、心臓、甲状腺および上皮小体、舌、食道、胃および十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、卵巣、子宮、腟、眼球、ハーダー腺、脳、下垂体および脊髄を10%中性緩衝ホルマリン液に固定した。

8. 病理組織学検査

1) 交尾の成立した雄

対照群と高用量群全例の脳、胸腺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、副腎、精巣および病変部組織として肺について実施した。

2) 自然分娩した雌

対照群と高用量群全例の脳、胸腺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、副腎、卵巣および病変部組織として肺について実施した。なお、 800 mg/kg群で腎臓の尿細管上皮の好塩基性化の発生数の増加が認められたため、12.5, 50および 200mg/kg 群の腎臓についても行った。

3) 交尾の成立しなかった雌雄

全例の脳、胸腺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、副腎、腟、子宮、卵巣、精巣、精巣上体、精嚢、前立腺、下垂体および病変部組織として腹腔内の塊について実施した。

4) 妊娠を成立させなかった雄および妊娠不成立の雌

全例の脳、胸腺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、副腎、腟、子宮、卵巣、精巣、精巣上体、精嚢、前立腺、下垂体および異常病変部組織(腹腔内の塊)について実施した。

5) 全児死亡の認められた雌

全例の皮膚、乳腺、リンパ節、唾液腺、胸骨、大腿骨(骨髄を含む)、胸腺、気管、肺および気管支、心臓、甲状腺および上皮小体、舌、食道、胃および十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、卵巣、子宮、腟、眼球、ハーダー腺、脳、下垂体および脊髄について実施した。

9. 統計処理

体重、摂餌量、黄体数、着床痕数、出産児数、死産児数、性比、平均性周期、妊娠期間、着床率、算出率、出生率、外形異常発現率、新生児の4日生存率、器官重量、器官重量・体重比、血液学的および血液化学的検査値については、まず、 Bartlett の等分散検定を実施した。等分散の場合は一元配置分散分析を行った。分散が有意で各群の標本数が同数の場合は Dunnettの多重比較検定、各群の標本数が異なる場合は Scheffの多重比較検定で対照群と各投薬群間の有意差を検定した。Bartlettの等分散検定で不等分散の場合は Kruskal-Wallis の順位検定を実施した。有意で各群の標本数が同数の場合は Dunnettの順位検定、各群の標本数が異なる場合は Scheffの順位検定で対照群と各投薬群間の有意差を検定した。出産率、交尾率、受胎率についてχ^2 検定を行った。病理組織学検査で群間に程度差が認められた場合はFisherの直接確率検定を行った。なお、哺育期間中の新生児に関する成績は1 母体当りの平均を1 標本とした。有意水準は*:P< 0.05 および**:P< 0.01 とした。

結果

1. 反復投与毒性

1) 死亡および一般状態

死亡例は、雌雄ともに投与期間を通じいずれの群にも観察されなかった。

一般状態の観察では、雌雄とも被験物質投与による変化は認められなかった。自然発生性の所見として切歯異常(上顎切歯折れ)が雄の 50 mg/kg 群で投与6および7週に、雌の 200 mg/kg 群で投与2および7週にそれぞれ1 例観察された。

2) 体重(Table 1〜2)

雄では 800 mg/kg群で投与14日に低値が認められた。雌では 800 mg/kg群で投与14日までの体重増加量に低値が認められた。雌の妊娠期間および哺育期間では対照群と被験物質投与群との間に統計学的有意差は認められなかった。

3) 摂餌量

雌雄ともに各群の摂餌量はほぼ同様に推移し、対照群と被験物質投与群との間に統計学的有意差は認められなかった。

4) 雄の血液学的検査(Table 3)

すべての被験物質投与群で対照群に比べ MCHおよび MCHC が減少した。また、800 mg/kg 群では HGBの減少が認められた。しかし、いずれも生理的変動の範囲内の値で用量相関性のない変化であった。

5) 雄の血液化学的検査(Table 4)

50 mg/kg以上の投与群で対照群に比べ尿素窒素が増加し、200 および 800 mg/kg群で総蛋白、アルブミンおよび A/Gの増加が認められた。さらに 800 mg/kg群では血糖およびカルシウムが増加した。その他、800 mg/kg 群で総ビリルビンの増加、12.5および 200 mg/kg群でγ-GTPの増加、12.5, 50および 200 mg/kg群で無機リンの減少および塩素の増加が認められたが、いずれも軽微な変化か、用量依存性のない変化であった。

6) 器官重量(Tabel 5〜6)

雄では、800 mg/kg 群で対照群に比べ肝臓の実重量および相対重量がともに増加した。雌では、統計学的有意差は認められないものの、800 mg/kg 群で肝臓の実重量および相対重量がともに増加傾向を示した。

7) 剖検所見(Table 7〜8)

雄では、肝臓の肥大が 800 mg/kg群で12例中3例に観察された。その他、自然発生性の病変と考えられる所見として、肺の赤色斑/区域が対照群, 50, 200 および 800 mg/kg群にそれぞれ1 例、腹腔内の塊(脂肪壊死)が 50 mg/kg 群に1 例観察された。なお、これらの雄動物のうち、交尾の成立しなかった雄は 200 mg/kg群に2例、妊娠を成立させなかった雄は 12.5 および 50 mg/kg 群に各1 例、800 mg/kg 群に2例認められたが、生殖器系器官に異常は認められなかった。

交尾の成立しなかった雌は 200 mg/kg群に2例認められたが、異常所見は観察されなかった。妊娠の成立しなかった雌は 12.5 および 50 mg/kg 群に各1例、800 mg/kg 群に2例認められたが、被験物質投与の影響と考えられる異常所見は観察されなかった。

哺育4日の母動物の剖検では、被験物質投与による影響が示唆される所見は観察されなかった。自然発生性の病変と考えられる所見として、脾臓の癒着およびリンパ節の肥大が 200 mg/kg群にそれぞれ1 例、肺の有色斑/区域が 12.5 mg/kg 群に4例、50 mg/kg群に2例、200 mg/kg群に1 例および 800 mg/kg群に3例観察され、また、肝臓の奇形結節が対照群に2例、50および 200 mg/kg群にそれぞれ1 例に観察された。

8) 病理組織学検査(Table 9〜10)

交尾成立した雄および自然分娩した雌は、対照群, 12.5, 50, 200 および 800 mg/kg群でそれぞれ 12, 11, 11, 10, 10 例および 12, 10, 11, 10, 10 例であった。被験物質投与の影響が示唆される所見として、雌の腎臓で軽度の尿細管上皮の好塩基性化が 50 mg/kg 群に1 例、200 mg/kg 群に2例および 800 mg/kg群に5例観察され、そのうち 800 mg/kg群で統計学的有意差が認められた。その他の所見は対照群との間に差異は認められなかったが、2例以上の発生を示したものは次の通りであった。脾臓の色素沈着が雌雄の全例に、造血亢進が雌の多数例に観察された。副腎の空胞化は雄の全例に、雌では少数例に観察された。胸腺の萎縮および扁平上皮化生、肺の胞沫細胞出現は雌の少数例に観察された。肝臓の脂肪化が雌雄の一部の例に、細胞浸潤が雄の多数例に観察された。また、腎臓では尿細管上皮の好塩基性化および好酸性小体が雄の全例に、石灰沈着が雌雄の多数例に、リンパ球浸潤が雄の一部の例に、硝子滴変性が雄の少数例に、蛋白円柱が雄の多数例に観察され、雌では単発性に観察された。心臓の細胞浸潤および心筋変性が雄で少数例に観察された。

交尾の成立しなかった動物は、200 mg/kg 群の雌雄各2例認められた。脾臓の色素沈着、肝臓の脂肪化および細胞浸潤、腎臓の尿細管上皮好塩基性化が雌雄に、心臓の細胞浸潤および心筋変性、腎臓の好酸性小体、前立腺の分泌亢進および副腎の空胞化が雄に、また、腎臓の石灰沈着が雌に観察された。

妊娠を成立させなかった雄および妊娠の成立しなかった雌は、12.5および50mg/kg 群で雌雄各1 例、800 mg/kg 群で雌雄各2例認められた。これらの動物では、心臓の細胞浸潤、脾臓の色素沈着、肝臓の脂肪化および細胞浸潤、腹腔内の脂肪壊死、腎臓の尿細管上皮の好塩基性化および石灰沈着が雌雄に、腎臓の好酸性小体、蛋白円柱および線維化、前立腺の前立腺炎などが雄に、胸腺の出血、脾臓の赤血球造血低下、腎臓のリンパ球浸潤および心臓の心筋変性が雌に観察された。

12.5 mg/kg群の全児死亡が認められた母動物では、脾臓の色素沈着、リンパ節の形質細胞増生、胸腺の萎縮、小腸(パイエル板)の石灰沈着、腎臓の尿細管上皮の好塩基性化および石灰沈着、乳腺の増生などが観察された。

2. 生殖発生毒性

1) 交尾および受胎能(Table 11)

交尾は、 200 mg/kg群を除き対照群を含むすべての群で全例成立した。200 mg/kg 群では2組が交尾不成立で、交尾率は83.3%であった。この雌2例は交配期間を通じて発情休止期像が認められ偽妊娠と考えられた。受胎は、対照群および 200 mg/kg群の交尾成立の雌全例で成立し、12.5および 50 mg/kg 群ではそれぞれ12例中11例、800 mg/kg 群では12例中10例で成立した。

性周期観察では、200 mg/kg 群の3例に偽妊娠と考えられる性周期の停止(連続した発情休止期像)が認められたが、その他の動物は規則的な周期を示した。

2) 分娩および哺育(Table 12)

分娩時観察では、いずれの指標においても対照群と被験物質投与群との間に統計学的有意差は認められなかった。すなわち、各群の妊娠期間、黄体数、着床痕数、出産児数、出産生児数、性比、4日生存児数および死産児数はほぼ同様な値を示し、出産率、着床率、分娩率、出生率および4日生存率に群間差は認められなかった。その他、12.5 mg/kg群の1 腹で全児死亡が認められ、哺育3日に剖検した例では異常は認められなかった。

3)新生児の形態、体重および剖検所見

新生児の外表検査では、頭部の皮下出血が 800mg/kg群の1 例に観察されたのみで、その他異常は観察されなかった。

哺育1 日および4日の体重には雌雄ともに群間に差はなく統計学的有意差は認められなかった。

死産児および哺育4日までの死亡児の剖検では、主要器官に異常は認められなかった。哺育4日の剖検では、肝臓の奇形結節(過形成)が用量に関係なく散見されたほか、800 mg/kg 群の1 例に肝臓の有色斑/区域が認められた。

考察

1. 反復投与毒性

一般状態には被験物質投与の影響は認められず、死亡例も観察されなかった。

体重は雌雄の 800 mg/kg群で交配前期間に低値が認められ、被験物質投与の影響と考えられたが、雌の妊娠および哺育期間では被験物質投与の影響は認められなかった。摂餌量は雌雄ともに群間で差がなく被験物質投与の影響は認められなかった。

雄の血液学的検査では、いずれの検査項目においても被験物質投与の影響と考えられる変化はなかった。血液化学的検査では、50 mg/kg以上の投与群で尿素窒素の増加が認められたが、数値的には軽度な変化で腎臓の機能的・器質的障害を示唆するものではなかった。また、200 および 800 mg/kg群でアルブミンが増加し、それに伴い総蛋白および A/Gが増加したが、数値的には軽度の変化で、GOT, GPTおよびγ-GTPなど肝障害により高値を示す項目に変化もなく、特定臓器の障害は示唆されなかった。その他、800 mg/kg 群で血糖およびカルシウムに増加が認められたが、起因は明らかでなかった。

器官重量は800 mg/kg 群の雄で肝臓の実重量および相対重量が増加を示し、雌の同群で増加傾向が認められた。この変化は、雄の剖検時で肝臓の肥大が12例中3例に認められており、被験物質投与の影響と考えられた。病理組織学検査では、肝臓の肥大を裏付ける明確な形態的変化は認められず、光顕所見には現われない程度の機能的増大によるものと考えられた。その他、雌の 800 mg/kg群で腎臓尿細管上皮の軽度の好塩基性化が10例中5例に観察され、発生数の増加が認められた。しかし、この腎臓の変化は分布および程度の上で軽度なこと、ならびに雄の全例に観察されていることから、被験物質投与による影響か否かは明確でなかった。その他観察された所見は、いずれも自然発生的病変と考えられた。交尾不成立、妊娠を成立させなかった雄、妊娠不成立の雌および全児死亡の認められた雌動物では、それぞれの原因に関連すると考えられる異常所見は認められなかった。

以上のことから、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオ−ルの800 mg/kg/day 投与により雌雄の動物で体重の増加抑制、肝臓重量の増加または増加傾向および肝臓の肥大が認められ、反復投与毒性の最大無影響量は、雌雄ともに 200 mg/kg/dayと判断された。

2. 生殖発生毒性

交尾能および受胎能に被験物質投与の影響は認められず、性周期観察でも少数例の偽妊娠動物を除き規則的な周期が認められた。

分娩時観察では、全例が正常に分娩し、哺育期間を通じ被験物質投与の影響は認められなかった。また、新生児の外表検査でも被験物質投与によると考えられる異常はなく、体重も哺育4日まで順調に増加した。死産児または哺育4日までの死亡児および新生児の哺育4日の剖検では、被験物質投与によると考えられる異常所見は認められなかった。

以上のことから、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオールの雌雄の生殖に及ぼす影響および児動物の発生に及ぼす影響は、800 mg/kg/day 投与によっても認められず、最大無影響量はともに 800 mg/kg/dayと判断される。

文献

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