ピグメントオレンジ16のラットを用いる単回経口投与毒性試験

Single Dose Oral Toxicity Test of Pigment orange 16 in Rats

要約

ピグメントオレンジ16の2000 mg/kgを1群5匹からなる5週齢の雌雄ラットに単回経口投与し,媒体対照として雌雄各5匹にコーン油を投与した.

雌雄の被験物質投与群の全例で,被験物質と同様のオレンジ色の便の排泄が観察された.

体重および剖検所見においては,全例で異常所見は認められなかった.

ピグメントオレンジ16のLD50値は,雌雄ともに2000 mg/kgを上回ると推定された.

方法

1. 被験物質

被験物質として,大日本インキ化学工業(株)(茨城)より提供されたピグメントオレンジ16(Lot No. 46236L,純度99 %以上)を用いた.提供された被験物質は,不純物として水可溶分(NaCl)0.18 %を含有していた.受領物質は,使用時まで室温で保管した.なお試験終了後,残余被験物質を提供元で再分析し,被験物質が試験期間中安定であったことを確認した.

投与検体の調製においては,被験物質を秤量し,所定濃度となるようにコーン油(Lot No. V8P7069,ナカライテスク(株))を加えて懸濁し,投与時まで室温で保存し,調製日に使用した.なお,本被験物質はいずれの溶媒にも溶解性を示さないため,投与検体の化学分析は不可能と判断し,安定性,含量測定および均一性試験は実施しなかった.

2. 使用動物および飼育方法

4週齢のSprague-Dawley系(Crj:CD(SD)IGS)雌雄ラットを,日本チャールス・リバー(株)筑波飼育センターから購入し,検疫と馴化を兼ねて7日間予備飼育した.試験には,予備飼育中の一般状態に異常が認められなかった雄雌各10匹を用い,検疫終了時の体重を基に体重別層化無作為抽出法により1群5匹からなる2群に分けた.投与開始時の週齢は雌雄ともに5週齢であり,体重は雄が119.3〜132.8 g,雌が109.4〜119.2 gであった.

全飼育期間を通じ,動物を金属製金網床ケージに1匹ずつ収容し,温度23〜25 ℃,湿度50〜65 %,換気回数約15回/時,照明12時間(7時〜19時点灯)に設定された飼育室で,固型飼料(CE-2,日本クレア(株))および水道水(秦野市水道局給水)を自由に摂取させて飼育した.

3. 投与量の設定および投与方法

投与量は,投与量設定のための予備試験の結果に基づいて決定した.すなわち,予備試験においてピグメントオレンジ16の2000 mg/kgを投与した結果,被験物質に由来すると考えられる一般状態の変化が認められなかったこと,ラットにおける単回投与経口投与時のLD50値が5000 mg/kgである1)ことから,OECD化学物質試験法ガイドラインに従って限度試験とし,雌雄に2000 mg/kgの1用量を設定した.加えて媒体対照群としてコーン油を被験物質投与群と同容量投与する群を設けた.

投与容量は体重1 kg当たり10 mLとし,投与液量は投与前約18時間絶食させた後,投与直前に測定した体重を基に投与液量を算出し,ラット用胃管を用いて強制的に単回経口投与した.給餌は投与後約3時間に行った.

4. 観察および検査

観察第1日(投与日)から14日間にわたって死亡の有無を確認し,各動物の一般状態を観察した.観察は投与日においては投与直後から1時間まで連続して行い,その後は投与後6時間まで約1時間間隔で実施した.観察第2日から15日までは毎日1回行った.

体重は全例について,投与直前,観察第2,4,8,11および15日に測定した.

剖検は,観察第15日に全例をペントバルビタールナトリウム麻酔下で放血屠殺して実施した.

結果および考察

雌雄ともに,死亡例はなかった.

媒体対照群では,雄全例で粘液便の排泄がみられ,被験物質投与群では,被験物質と同様のオレンジ色の便の排泄が,投与後約5時間に雄1例で,観察第2日に雌雄全例で観察された.

体重では雌雄の全群で観察期間中順調な体重増加がみられ,雌雄ともに媒体対照群と被験物質投与群との間に明らかな差は認められなかった.

剖検では,雌雄全例の器官・組織に異常所見は認められなかった.

以上の結果から,ピグメントオレンジ16のLD50値は,雌雄ともに2000 mg/kgを上回ると推定された.

文献

1)“NPIRI Raw Materials Data Handbook,” Vol.4, ed. by J. M. Fetsko, Lehigh University, Pennsylvania, U. S. A., 1983, p.24.

連絡先
試験責任者:永田伴子
試験担当者:勝村英夫,松本浩孝,堀内伸二,三枝克彦,稲田浩子,安生孝子
(財)食品薬品安全センター秦野研究所
〒257-8523 神奈川県秦野市落合729-5
Tel 0463-82-4751 Fax 0463-82-9627

Correspondence
Authors:Tomoko Nagata(Study director) Hideo Katsumura, Hirotaka Matsumoto, Shinji Horiuchi, Katsuhiko Saegusa, Hiroko Inada, Takako Anjo
Hatano Research Institute, Food and Drug Safety Center
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