C.I.ピグメントレッド22のラットを用いる単回経口投与毒性試験

Single Dose Oral Toxicity Test of C.I. Pigment Red 22 in Rats

要約

既存化学物質の安全性点検調査事業の一環として,C.I.ピグメントレッド22について,雌雄のSD系ラット(1群雌雄各5匹)に1回経口投与した時の毒性を検討した.投与用量は500,1000および2000 mg/kgとし,また,媒体のみを投与する対照群を設けた.

投与の結果,いずれの被験物質投与群においても死亡例はみられなかった.一般状態観察において,雌雄とも被験物質様の色調を呈する赤色便および被毛の着色が被験物質投与群でみられたが,毒性変化と考えられる異常はみられなかった.体重推移および剖検の結果には,いずれの被験物質投与群においても異常はみられなかった.

C.I.ピグメントレッド22の半数致死量(LD50値)は,雌雄ともに2000 mg/kg以上と推定した.

方法

1. 被験物質

C.I.ピグメントレッド22[大日本インキ化学工業(株)(茨城県),ロット番号000207,純度99 wt%以上]は,水,熱,光に対して安定で,水,アセトンおよびDMSOに不溶な赤色粉末である.被験物質は密閉容器に入れ室温・暗所で保存し,試験期間中安定であることを確認した.投与液の調製は投与4日前に行い,被験物質を媒体[0.1 %Tween80(東京化成工業(株))添加0.5 %CMC-Na(岩井化学薬品(株))水溶液]に懸濁させた.なお,投与開始前に投与液中の被験物質の均一性および調製後8日間の安定性を確認した.また,投与液中の被験物質濃度が設定値どおりであることを確認した.

2. 試験動物

日本チャールス・リバー(株)より入手した雌雄のSD系ラット[Crj:CD(SD)IGS,SPF]を5日間検疫・馴化後,試験に供した.投与前日に,体重層別化無作為抽出法により,各群の平均体重がほぼ均一となるように1群あたり雌雄各5匹に振り分けた.投与日の週齢は5週齢,体重範囲は雄が116〜127 g,雌が106〜124 gであった.

検疫・馴化期間を含む全飼育期間を通して,温度22 ± 2 ℃,相対湿度55 ± 15 %,換気約12回/時,照明12時間/日(7:00-19:00)に自動調節した飼育室を使用した.

動物は実験動物用床敷(ベータチップ,日本チャールス・リバー(株))を敷いたポリカーボネート製ケージに5匹(同性)ずつ収容し,飼育した.動物には,実験動物用固型飼料(MF,オリエンタル酵母工業(株))と,孔径5 μmのフィルター濾過後,紫外線照射した水道水を自由に摂取させた.

3. 投与量および投与方法

投与経路は経口,投与回数は1回とした.投与前日より約17時間絶食させたラットに,胃ゾンデを用いて強制経口投与し,投与後約3時間は飼料を与えなかった.

投与用量は,予備検討の結果(500,1000および2000 mg/kg),2000 mg/kgの用量で死亡例はみられなかったことから,本試験の用量は雌雄ともに2000 mg/kgを最高用量とし,以下公比2で1000および500 mg/kgの3用量を設定した.この他に媒体のみを投与する対照群を設けた.投与液量は20 mL/kgとし,投与直前の体重に基づいて算出した.

4. 観察および検査項目

1) 一般状態

投与日は投与後30分,1,3および6時間の4回,以後は1日1回14日間にわたって生死および一般状態を観察した.

2) 体重

全例について投与直前,第4,8および15日に上皿電子天秤を用いて測定した.

3) 病理検査

観察終了後にチオペンタール・ナトリウムの腹腔内投与による麻酔下で腹大動脈から放血し,安楽死させた後剖検した.なお,肉眼的異常部位は10 %中性リン酸緩衝ホルマリン液に保存した.

4) 半数致死量(LD50値)の算出

死亡例がみられなかったことから,半数致死量(LD50値)の算出は行わなかった.

結果

1. 一般状態

雌雄とも死亡動物は認められなかった.一般状態では被験物質と同様の色調を呈する赤色便が,被験物質投与群の雌雄で投与後6時間から第3日の間にみられ,第2日には雌雄全例で認められた.また,この赤色便に由来すると思われる被毛の着色が,第2日から4日の間に被験物質投与群の雌雄でみられた.しかし,毒性変化と考えられるような一般状態の変化はいずれの群においても認められなかった.

2. 体重

体重では,雌雄ともいずれの群においても対照群と同様の推移を示した.

3. 病理所見

胸腔の横隔膜ヘルニアが1000 mg/kg群の雌1例に認められた.このヘルニアは肝臓の尾状突起部分が胸腔内へ結節状に突出したもので,その一部は胸壁と癒着していた.本変化は1例のみの発現で用量に関係ないことから,偶発所見と判断した.その他に異常はみられなかった.

考察

C.I.ピグメントレッド22を雌雄のラットに0,500,1000および2000 mg/kgの用量で1回経口投与した.その結果,被験物質投与に起因する毒性変化は認められず,雌雄とも死亡例はみられなかった.このことから半数致死量(LD50値)は,雌雄ともに2000 mg/kg以上と推定した.

連絡先
試験責任者:星野信人
試験担当者:竹田みどり,鈴木美江
(株)三菱化学安全科学研究所鹿島研究所
〒314-0255 茨城県鹿島郡波崎町砂山14
Tel 0479-46-2871Fax 0479-46-2874

Correspondence
Authors:Nobuhito Hoshino(Study director)
Midori Takeda, Yoshie Suzuki
Kashima Laboratory, Mitsubishi Chemical Safety Institute Ltd.
14 Sunayama, Hasaki-machi, Kashima-gun, Ibaraki, 314-0255, Japan
Tel +81-479-46-2871Fax +81-479-46-2874