3-メチル-1,5-ペンタンジオールのラットを用いる単回経口投与毒性試験

Single Dose Oral Toxicity Test of 3-Methyl-1,5-pentandiol in Rats

要約

3-メチル-1,5-ペンタンジオールをCrj:CD(SD)系雌雄ラットに単回経口投与し,その毒性を検討した.投与量は,雌雄とも1000および2000 mg/kgの2用量とし,対照群には注射用水を投与した.

死亡例は雌雄いずれの群においても認められず,LD50値は2000 mg/kg以上であった.一般状態の観察では,2000 mg/kg投与群で歩行失調(よろめき歩行)が雄で投与後15分〜2時間に,雌で投与後15〜30分にみられ,自発運動の減少が雄で投与後30分にみられた.体重推移および剖検では,雌雄ともに被験物質投与による変化は認められなかった.

方法

1.被験物質および被験液の調製

被験物質3-メチル-1,5-ペンタンジオールは,分子量118.20,融点-50℃以下,沸点227℃,比重0.97の無色透明の液体で,水と自由に混合する.本試験にはロット番号63136((株)クラレ),純度99.18%のものを用いた.なお,投与終了後の残余被験物質について分析を行った結果,使用期間中は安定であったことが確認された.

投与には被験物質原液をそのまま用いた.なお,原液の比重は0.97であることから被験物質1 ml=0.97gとして投与液量を算出した.

2.試験動物

5週齢のCrj:CD(SD)系SPFラットを日本チャールス・リバー(株)から購入し,当所で約1週間検疫・馴化飼育した後,健康な動物を選び6週齡で試験に供した.投与日の体重範囲は雄で178〜190 g(平均値:183.1 g),雌で136〜145 g(平均値:140.6 g)であった.

動物は,投与前日の体重により層別化し,無作為抽出法により各群の平均体重ができるだけ均等となるように割りつけた.

動物は,温度23±3℃,相対湿度50±20%,換気回数1時間当り10〜15回,照明1日12時間の飼育室で,金属製網ケージに2〜3匹ずつ収容し,固型飼料(放射線滅菌CRF-1:オリエンタル酵母(株))および飲料水(水道水)を自由に摂取させて飼育した.

3.投与量および投与方法

500,1000および2000 mg/kgを1群雌雄各3匹のラットに投与した予備試験では,雌雄いずれの投与群でも死亡はみられなかった.したがって,本試験では雌雄ともに1000および2000 mg/kgの2用量群を設定し,これに対照群を加えて計3群を用いた.

動物は,投与前に約16時間絶食させたのち,体重100 g当り1000 mg/kg投与群は0.1031 ml,2000 mg/kg投与群は0.2062 mlの容量で,被験液(原液)を金属製胃ゾンデを用いて1回強制経口投与した.対照群には2000 mg/kg投与群と同容量の注射用水を投与した.1群の動物数は雌雄とも5匹とした.なお,投与後の給餌は投与後6時間に実施し,給水は投与に関係なく継続して行った.

4.検査方法

1) 一般状態および生死の観察

投与後6時間までは頻繁に,その後は1日1回,14日間にわたって実施した.

2) 体重測定

投与直前に体重を測定し,これを投与液量の算出基準にした.さらに,投与後1,2,3,7,10および14日に体重を測定した.

3) 病理学検査

14日間の観察期間終了後にエーテル深麻酔下で放血致死させ,体外表の観察を行った後,頭部,胸部,腹部を含む全身の器官・組織の異常の有無を肉眼的に観察した.

結果

1.死亡状況およびLD50値

雌雄ともに死亡はみられず,LD50値は雌雄とも2000 mg/kgを上回ると推定された.

2.一般状態

2000 mg/kg投与群では,雄で歩行失調(よろめき歩行)が投与後15分に4例にみられ,投与後1〜4時間で回復した.また,このうちの1例では投与後30分に自発運動の減少も観察された.雌では,歩行失調(よろめき歩行)が投与後15分に3例にみられ,投与後30分には回復,他の1例では投与後30分にみられたが,投与後1時間には回復した.

3.体重

各投与群の体重は,対照群とほぼ同様に推移した.

4.剖検

いずれの動物にも異常は認められなかった.

考察

雌雄ともに,いずれの投与群にも死亡は見られず,LD50値は2000 mg/kg以上と推定された.一般状態では,2000 mg/kg投与群において,歩行失調(よろめき歩行)が投与後15分〜2時間の間に雌雄で,また,自発運動の減少が投与後30分に雄でみられた.しかし,体重推移および剖検において被験物質投与による変化はみられなかったことから,ラットにおける3-メチル-1,5-ペンタンジオールの経口投与時の急性毒性は弱いことが示唆された.

連絡先
試験責任者:榎並倫宣
試験担当者:柳沢哲夫,沼田弘明
(株)ボゾリサーチセンター 御殿場研究所
〒412 静岡県御殿場市かまど1284
Tel.0550-82-2000Fax.0550-82-2379

Correspondence
Authors:Tomonori Enami(Study director)
Tetsuo Yanagisawa,Hiroaki Numata
Gotemba Laboratory,Bozo Research Center Inc.
1284, Kamado, Gotemba-shi, Shizuoka, 412, Japan
Tel.+81-550-82-2000Fax.+81-550-82-2379