トリプロピレングリコールのラットを用いる経口投与による
反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験

Combined Repeat Dose and Reproductive/Developmental Toxicity Screening
Test of Tripropyleneglycol by Oral Administration in Rats

要約

 既存化学物質の毒性学的性質を評価するために,トリプロピレングリコールのラットを用いる経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験を行い,雌雄動物に対する反復投与による一般毒性学的な影響を検討するとともに,性腺機能,交尾行動,受胎および分娩などの生殖発生に及ぼす影響について検討した.投与段階は,0(媒体),8,40,200 および 1000 mg/kgとした.

I.反復投与毒性

1.雄(P)に及ぼす影響

 一般状態の観察では,1000 mg/kg群で投与期間の後期に少数例で投与後に流涎がみられたが,投与約 5 分後には消失した.器官重量では,1000 mg/kg群で肝臓の絶対重量および相対重量がともに,さらに腎臓相対重量が有意な高値を示した.体重,摂餌量,血液学的検査,血液化学的検査,剖検では,各投与群とも被験物質投与の影響はみられなかった.病理組織学的検査では,1000 mg/kg群の心臓,腎臓,肝臓,胸腺,精巣,精巣上体,副腎,脳および脾臓に,被験物質の投与に起因すると思われる組織変化はみられなかった.

2.雌(P)に及ぼす影響

 器官重量では,1000 mg/kg群で肝臓相対重量が有意な高値を示した.一般状態の観察では,対照群および各投与群ともに異常症状はみられなかった.体重,摂餌量および剖検では,各投与群とも被験物質投与の影響はみられなかった.病理組織学的検査では,1000 mg/kg群の心臓,腎臓,肝臓,胸腺,卵巣,副腎,脳および脾臓に,被験物質の投与に起因すると思われる組織変化はみられなかった.

II.生殖発生毒性

1.親動物(P)の生殖発生に及ぼす影響

 発情回数,交尾率,交尾日数,受胎雌数,妊娠期間,黄体数,着床痕数,着床率および受胎率は,各投与群とも対照群とほぼ同程度であった.また,分娩状態に異常はみられなかった.出産率は,対照群および各投与群とも 100 %であった.

2.新生児(F1)に及ぼす影響

 総出産児数,分娩率,哺育 0 日の生存児数,性比および哺育 4 日の生存率は,各投与群とも対照群とほぼ同程度であった.死産児数および出生率には,投与用量に関連した変動はみられなかった.一般状態の観察では,対照群および各投与群とも異常症状はみられなかった.外表観察では,対照群および各投与群とも異常はみられなかった.各投与群の雌雄とも,新生児の体重は哺育 0 日および哺育 4 日ともに対照群とほぼ同程度であった.

 以上のように,トリプロピレングリコールは 1000 mg/kg群で雄(P)の一般状態(流涎)および雌雄(P)の器官重量(雌雄の肝臓,雄の腎臓)に影響がみられた.したがって,当試験条件下における一般毒性学的な無影響量は,雌雄ともに 200 mg/kgと推察された.また,生殖発生毒性学的な無影響量は,雌雄の生殖および児動物の発生に関して,いずれも1000 mg/kgと推察された.

方法

1.被験物質,媒体および投与検体液

 被験物質のトリプロピレングリコールは,分子式:C9H20O4,分子量:192.29,沸点:268 ℃,比重(25 ℃):1.019,粘性率(25 ℃):56.2 cp,引火点:140 ℃で,水にきわめて溶けやすい粘性の液体である[Lot No.040810,製造元:旭電化工業(株),純度:98 %以上].投与終了後に残余被験物質の一部を製造元に送付して分析した結果,純度は規格値内であり,使用期間中の安定性が確認された。媒体として,蒸留水(大塚注射用水)を用いた.

 投与検体液は,被験物質を蒸留水に溶解して調製した.投与開始前および投与終了前の2 回,各投与検体液中の被験物質濃度を測定した.その結果,いずれの投与検体液も適正範囲内の値を示した.蒸留水中の 1.6 mg/mlおよび 200 mg/ml濃度の被験物質は,冷蔵・遮光・気密条件下で調製後 7 日間までの安定性が確認された.そこで,各投与検体液の調製は 1 週間に 1 回以上行い,1 日分ずつ分割して冷蔵・遮光・気密条件下で保存し,用時室温に戻して投与に用いた.

2.使用動物および飼育条件

 8 週齢の Sprague-Dawley 系雌雄ラット[(SPF),Crj:CD(SD)]を日本チャールス・リバー(株)から購入し,5 日間の検疫期間およびその後 6 日間の馴化期間を設け,一般状態および体重推移に異常がみられず,また性周期観察で異常が認められなかった雌雄各 60 匹の動物を群分けして試験に用いた.群分けは,コンピュータを用いて体重を層別に分けた後に,無作為抽出法により各群の平均体重および分散がほぼ等しくなるように,投与開始日の前日に行った.

 動物は,室温 20〜24 ℃,湿度 40〜70 %,明暗各 12 時間,換気回数 12 回/時に設定した飼育室で飼育した.検疫・馴化期間中はステンレス製懸垂式ケージを用いて 1 ケージあたり 5 匹までの群飼育とし,群分け後はステンレス製五連ケージを用いて個別飼育した.ただし,交配はステンレス製懸垂式ケージ内で行った.また,母動物は妊娠 18 日に床敷[サンフレーク,日本チャールス・リバー(株)]を入れたプラスチック製ケージに個別に移し,自然分娩および哺育させた.床敷の分析結果は,当試験施設で定めた基準値の範囲内であった.

 飼料は,固型飼料[CRF-1,オリエンタル酵母工業(株)]を給餌器に入れ,自由に摂取させた.飲料水は,水道水を給水瓶を用いて自由に摂取させた.飼料および飲料水の検査の結果,いずれも試験成績は当試験施設で定めた基準値の範囲内であった.

3.投与経路,投与方法,群構成および投与量

 トリプロピレングリコールは,継続して経口的に人に摂取される可能性が考えられるため,投与経路として胃ゾンデを用いた強制経口投与を選択した.投与液量は,雄では投与日に最も近い測定時の体重を基準とし,5 ml/kgで算出した.雌では,交配前および交配期間中は投与日に最も近い測定時の体重を,妊娠期間中は妊娠 0,7,14 および 21 日の体重を,哺育期間中は哺育 0 日の体重を基準とし,5 ml/kgで算出した.投与開始時の週齢は雌雄とも約 10 週齢,体重範囲は雄が 343〜397 g,雌が 208〜242 gであった.

 群構成は,以下の如くとした.一群の動物数は,雌雄各 12 匹とした.

 投与量設定の理由:投与量設定のための雄ラットを用いた 2 週間経口投与による予備試験の結果,最高用量の 1000 mg/kg群でも死亡発現はなく,一般状態,体重推移および剖検に異常はみられなかった.したがって,当試験では OECD テストガイドラインで限界用量とされている 1000 mg/kgを最高用量として,以下公比 5 により 200,40 および 8 mg/ kg群を設定した.対照として,被験物質と同一容量の媒体(蒸留水)を投与する群を設けた.

 投与期間は,雄では交配前 14 日間とその後 35 日間の合計 49 日間とし,雌では交配前 14 日間,交配期間中(最長 5 日間),妊娠期間および哺育 4 日の剖検前日(41〜45日間)までとした.投与は 1 日 1 回で連日とした.

4.観察および検査項目

1)雄(P)

 (1) 一般状態および死亡の有無:投与期間中は毎日投与前・後の 2 回観察した.

 (2) 体重:1 週間に 2 回および剖検日に測定した.

 (3) 摂餌量:交配開始前 14 日間および交配期間終了後に,連続 2 日間量を測定して 1 日量に換算し,1 週間に 2回測定した.なお,剖検前日の夕刻からは絶食とした.

 (4) 血液学的検査:投与期間(49 日間)終了の翌日に,ペントバルビタールナトリウムの腹腔内投与による麻酔下で腹大動脈からカニュレーションにより血液を採取し,以下の検査を行った.

 プロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)およびフィブリノーゲン濃度は,3.13 %クエン酸ナトリウム処理した血漿について,散乱光検出方式により血液凝固分析装置[コアグマスター供せ斡Α奮堯法呂鰺僂い涜定した.

 赤血球数(RBC),ヘモグロビン量,ヘマトクリット値,血小板数および白血球数(WBC)は,EDTA-2K コーティングしたサンプルカップに採取した血液について,多項目自動血球計数装置[Sysmex E-2000,東亜医用電子(株)]を用いて測定した.また,平均赤血球容積(MCV),平均赤血球血色素量(MCH)および平均赤血球血色素濃度(MCHC)を算出した.

 白血球百分率は,EDTA-2K 処理した血液をスライドグラスに塗抹し,May-Giemsa 染色した標本を作製して顕微鏡下で白血球 100 個を分類計数した.

 網状赤血球数は,EDTA-2K 処理した血液を Brecher 法により超生体染色してスライドグラスに塗抹後,Giemsa 染色した標本を作製して顕微鏡下で赤血球 1000 個中の数を数えた.

 (5) 血液化学的検査:血液学的検査用の血液と同時期に腹大動脈から採取した血液から分離して得た血清について,以下の検査を行った.

 GOT および GPT は Henry 変法,γ-GTP は γ-G-P-NA 基質法,総蛋白(TP)は Biuret 法,総ビリルビン(T-Bil)は Azobilirubin 法,尿素窒素(BUN)は Urease・GlDH 法,クレアチニンは Jaff,ブドウ糖は Glucose dehydrogenase 法,無機リン(IP)は  Molybdenum blue 法,Ca は o-CPC 法により,いずれも自動分析装置[AU 500,オリンパス光学工業(株)]を用いて測定した.

 Na および K はイオン選択電極法により,Cl は電量滴定法により,いずれも全自動電解質分析装置[EA04,(株)A & T]を用いて測定した.

 アルブミン量は総蛋白量および蛋白分画値[自動電気泳動装置 AES 600,オリンパス光学工業(株)]から,A/G(アルブミン/グロブリン)比は蛋白分画値から算出した.

 (6) 剖検:上記のように採血した動物について,さらに放血致死させた後に,器官・組織の肉眼的観察を行った.肝臓,腎臓,胸腺,精巣および精巣上体を摘出後に重量を測定し,さらに副腎,脳,心臓および脾臓を摘出した.その後,精巣および精巣上体はブアン液に,その他の器官・組織は 10 %中性緩衝ホルマリン液に固定し,保存した.

 (7) 病理組織学的検査:固定した全例の各器官および組織について,常法に従ってパラフィン包埋標本を作製した.対照群および 1000 mg/kg群については H-E 染色組織標本を作製し,病理組織学的検査を行った.

2)雌(P)

 (1) 一般状態および死亡の有無:投与期間中は毎日投与前・後の 2 回観察した.

 (2) 性周期:投与開始日から交尾確認日まで毎日 1 回観察した.なお,発情期が連続 2 日間にわたって観察される場合は 1 回と数えた.

 (3) 体重:交配開始前 14 日間および交配期間中は毎週 2 回,妊娠期間中は妊娠 0,7,14 および21 日に,哺育期間は哺育 0 および 4 日にそれぞれ測定した.

 (4) 摂餌量:交配開始前 14 日間までは毎週 2 回,連続2 日間量を測定して 1 日量に換算し,1 週間に 2 回測定した.また,妊娠期間中は妊娠 0,7,14 および 19 日からの連続 2 日間量を,哺育期間中は哺育 0〜4 日の累積量を測定し,それぞれ 1 日量に換算した.

 (5) 分娩状態の観察:自然分娩させ,分娩状態の異常の有無,分娩終了の確認を妊娠 21 日から妊娠 25 日の午前 9 時まで毎日行った.午前 9 時までに分娩が終了していた場合,その日を哺育 0 日とした.

 (6) 交尾確認後 25 日の午前 9 時までに分娩しない動物:エーテル麻酔下で腹大動脈から放血致死させた後に剖検し,妊娠の成否を確認した.交尾が確認されたものの,着床痕がみられない雌は不妊動物とした.肝臓,腎臓,胸腺および卵巣を摘出後に重量を測定し,副腎,脳,心臓および脾臓とともに10 %中性緩衝ホルマリン液に固定し,保存した.

 (7) 哺育状態の観察および剖検:哺育 4 日まで毎日観察し,哺育 4 日にエーテル麻酔下で腹大動脈から放血致死させた後に剖検し,着床痕数および黄体数を数えた.肝臓,腎臓,胸腺および卵巣を摘出後に重量を測定し,副腎,脳,心臓および脾臓,ならびに剖検で異常の認められた器官・組織(対照群の胃および脾臓)とともに 10 %中性緩衝ホルマリン液に固定し,保存した.

 (8) 病理組織学的検査:固定した全例の各器官および組織について,常法に従ってパラフィン包埋標本を作製した.対照群および 1000 mg/kg群の器官および組織については H-E 染色組織標本を作製し,病理組織学的検査を行った.

3)親動物(P)の生殖発生に及ぼす影響

 被験物質を 14 日間にわたって投与し,約 12 週齢の同一群内の雌雄を 1 対 1 の組み合わせで,同居交配した.交配期間は 14 日を限度として,交尾を確認するまで連続同居交配としたが,同居開始後 5 日までに全例の交尾が確認された.

 なお,交尾確認は毎朝ほぼ一定時刻に行い,腟垢内に精子または腟栓を確認した雌を交尾成立動物として,その日を妊娠 0 日として起算した.

4)新生児(F1)

 (1) 出産時に,総出産児数と性,死産児数,新生児数および外表異常の有無を観察した.

 (2) 新生児について,一般状態および死亡の有無を,生存期間中毎日 1 回観察した.

 (3) 体重:哺育 0(出生日)および 4 日に測定した.

 (4) 剖検:哺育 4 日にエーテル麻酔下で腹大動脈から放血致死させた後,剖検した.

5.統計学的方法

 測定値の統計学的方法は下記の検定法を用い,有意差検定は対照群とトリプロピレングリコールの各投与群との間で行った.いずれの検定の場合も危険率 5 %未満を有意とし,5 %未満(p<0.05)と 1 %未満(p<0.01)とに分けて表示した.なお,不妊動物(対照群の 1 例)の交尾後の体重および摂餌量は集計から除外した.また,新生児は一腹の平均を一単位とした.

1)多重比較検定

 体重,摂餌量,発情回数,同居日数,妊娠期間,着床痕数,黄体数,着床率,総出産児数,死産児数,分娩率,出生率,哺育 4 日の生存率,新生児数,性比,外表異常の出現率,器官重量(絶対重量および相対重量),血液学的検査成績および血液化学的検査成績について行った.

 検定では,Bartlett 法による等分散性の検定を行い,等分散の場合には一元配置法による分散分析を行い,有意ならば対照群との群間比較は Dunnett 法(例数が等しい場合)または Scheff(例数が等しくない場合)により行った.一方,等分散と認められなかった場合は,順位を利用した一元配置法による分析(Kruskal-Wallis の検定)を行い,有意ならば対照群との群間比較は順位を利用した Dunnett 法(例数が等しい場合)またはScheff法(例数が等しくない場合)を用いて行った.

2)χ^2 検定

 交尾率,受胎率および出産率について行った.

結果

I.反復投与毒性

1.雄(P)に及ぼす影響

1) 一般状態

 対照群および 200 mg/kg以下の群では,異常症状はみられなかった.

 1000 mg/kg群では,投与開始 44 日以降に最終投与日まで 1〜3 例で投与後に流涎がみられた.当症状は投与終了直後からみられたが,約 5 分後には消失していた.その他には,異常症状は観察されなかった.

2) 体 重

 各投与群とも対照群とほぼ同様の推移を示し,いずれの測定日にも有意差は認められなかった.

3) 摂餌量

 各投与群とも対照群とほぼ同様の推移を示し,いずれの測定日にも有意差は認められなかった.

4) 血液学的検査(Table 1)

 各投与群のいずれの測定項目とも対照群とほぼ同程度であり,有意差は認められなかった.

5) 血液化学的検査(Table 2)

 各投与群のいずれの測定項目とも対照群とほぼ同程度であり,有意差は認められなかった.なお,対照群の 1 例は γ-GTP が高値を示したため,当群ではバラツキが大きかった.

6) 剖検所見

 200 mg/kg群の 1 例で,腎臓(右側)の腎盂拡張がみられた.その他には,著変はみられなかった.

7) 器官重量(Table 3)

 対照群に比して,1000 mg/kg群の肝臓絶対重量および相対重量,ならびに腎臓相対重量が有意な高値を示した.200 mg/kg以下の投与群では,いずれの器官重量とも対照群との間に有意差は認められなかった.

8) 病理組織学的検査

 心臓:ごく軽度の肉芽腫が対照群の 1 例にみられた.

 腎臓:ごく軽度の腎症が対照群の 2 例にみられた.

 その他の検査部位(肝臓,胸腺,脾臓,精巣,精巣上体,脳および副腎)では,いずれも著変はみられなかった.

2.雌(P)に及ぼす影響

1) 一般状態

 交配開始前および交配期間中,妊娠期間中ならびに哺育期間中を通じて,対照群および各投与群とも異常症状は観察されなかった.

2) 体 重

 交配開始前および交配期間中,妊娠期間中ならびに哺育期間中を通じて,各投与群の体重は対照群とほぼ同程度であり,有意差は認められなかった.

3) 摂餌量

 交配開始前および交配期間中,妊娠期間中ならびに哺育期間中を通じて,各投与群の摂餌量は対照群とほぼ同程度であり,有意差は認められなかった.

4) 剖検所見

 母動物:対照群の 1 例で脾臓の退色と表面粗造および脾臓と胃との癒着がみられた.その他には,著変はみられなかった.

 不妊動物:著変はみられなかった.

5) 器官重量(Table 4)

 母動物:対照群に比して,1000 mg/kg群の肝臓相対重量が有意な高値を示した.その他には,対照群との間に有意差は認められなかった.

 不妊動物:同群の他の例に比して肝臓重量がやや低値であった.

6) 病理組織学的検査

 肝臓:ごく軽度の壊死巣が,対照群および 1000 mg/kg群の各 2 例にみられた.

 脾臓:膵臓との癒着および褐色色素沈着が,対照群の 1 例にみられた.変化の程度は軽度であった.

 その他の検査部位(心臓,胸腺,腎臓,卵巣,脳および副腎)では,いずれも(不妊動物を含む)著変はみられなかった.

II.生殖発生毒性

1.親動物(P)の生殖発生に及ぼす影響(Table 5,6)

1) 発情回数

 検疫・馴化期間中の 7 日間および投与期間の 14 日間(交配前)の発情回数は,各投与群とも対照群とほぼ同程度であり,有意差は認められなかった.

2) 交尾率,受胎雌数および受胎率

 各群の動物とも,同居開始後 5 日までに全例で交尾が確認された.交尾確認までの日数は,各投与群とも対照群とほぼ同程度であった.また,交尾率は対照群および各投与群とも 100 %であった.一方,前述のように対照群の 1 例が不妊であったため,受胎雌数は対照群が 11 例,各投与群ではそれぞれ 12 例ずつであった.したがって,受胎率は対照群が 91.7 %,各投与群は 100 %であった.新生児を分娩した母動物数は,対照群が 11例,各投与群は 12 例ずつであった.いずれの項目も,各投与群ともに対照群との間に有意差は認められなかった.

3) 妊娠期間および分娩状態

 各投与群の妊娠期間は対照群とほぼ同程度であり,有意差は認められなかった.また,いずれの動物とも分娩状態に異常はみられなかった.

4) 黄体数,着床痕数および着床率

 黄体数,着床痕数および着床率は,各投与群とも対照群とほぼ同程度であった.

5) 出産率

 対照群および各投与群とも,出産率は 100 %であった.

2.新生児(F1)に及ぼす影響(Table 6)

1) 総出産児数および分娩率

 総出産児数および分娩率は各投与群とも対照群とほぼ同程度であり,有意差は認められなかった.

2) 出生率および性比

 哺育 0 日の新生児数,死産児数,出生率および性比は,いずれも対照群との間に有意差は認められず,投与用量に関連した変動はみられなかった.

3) 新生児の一般状態,哺育 4 日の生存率および外表異常の観察

 新生児の一般状態では,いずれの群とも異常症状は観察されなかった.

 哺育期間中に,対照群,8,40,200 mg/kg群で死亡例がみられた.したがって,哺育 4日の生存率は対照群が 98.7 %,各投与群は 97.1〜100.0 %であった.いずれの投与群とも対照群との間に有意差は認められず,投与用量に関連した変動はみられなかった.

 新生児の外表異常の観察では,異常はみられなかった.

4) 新生児の体重

 各投与群の体重は,哺育 0 日および 4 日とも雌雄ともに対照群とほぼ同程度であり,有意差は認められなかった.

5) 新生児の剖検所見

 いずれの例とも,剖検で著変はみられなかった.

考察

 トリプロピレングリコールの,ラットを用いる反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験を実施した.投与段階は,1000 mg/kgを最高用量とし,以下 200,40 および 8 mg/kgとした.

 雄(P)動物に対しては,一般状態観察で 1000 mg/kg群では投与期間の後期に少数例で投与後に流涎がみられたが,持続時間は約 5 分間のみであり,一過性の症状であった.また,器官重量測定では 1000 mg/kg群で肝臓の絶対重量および相対重量ならびに腎臓の相対重量が高値を示し,これらの器官への影響が示唆された.しかしながら,血液化学的検査ではこれらの器官の機能に関連すると思われる検査値に変動は認められず,また病理組織学的検査では当群に特異的な組織変化はみられず,重量変動のみに留まる変化であった.なお,血液化学的検査において対照群の 1 例で γ-GTP が他の例に比して高値を示した.しかしながら,当検査値に関連すると考えられる器官の肝臓では剖検,重量測定,病理組織学的検査で異常はみられず,その他の検査項目にも特異的な変化は認められないことから,試験の評価には影響を及ぼさない所見と思われた.剖検では,200 mg/kg群の 1 例で腎臓の腎盂拡張がみられたのみで,被験物質投与に起因すると思われる変化はみられなかった.さらに,体重,摂餌量および血液学的検査でも対照群との間に有意差は認められなかった.

 雌(P)動物に対しては,器官重量測定で 1000 mg/kg群の肝臓相対重量が有意な高値を示したのみで,一般状態観察,体重,摂餌量,剖検および病理組織学的検査で被験物質投与に起因すると思われる変化はみられなかった.

 したがって,当試験条件下におけるトリプロピレングリコールの一般毒性学的な無影響量は,雌雄とも 200 mg/kgと推察された。

 親動物(P)の生殖発生に対しては,交尾率,受胎率,発情回数および受胎雌数には,各投与群とも影響はみられなかった.また,各投与群とも妊娠期間,分娩状態,黄体数,着床痕数,着床率および出産率に影響はみられなかった.

 新生児(F1)に対しては,各投与群で出産児数,死産児数,新生児数,性比に投与用量に関連した変動は認められず,被験物質投与の影響はなかったと判断された.また,一般状態で異常はみられず,哺育 4 日の生存児数および生存率に投与用量に関連した変動は認められなかった.体重にも影響は認められず,外表異常も観察されなかった.

 したがって,当試験条件下ではトリプロピレングリコールの生殖発生毒性学的な無影響量は,雌雄の生殖および児動物の発生に関して,いずれも 1000 mg/kgと推察された.

 以上により,当試験条件下における一般毒性学的な無影響量は雌雄とも 200 mg/kgと推察された.また,生殖発生毒性学的な無影響量は,雌雄の生殖および児動物の発生に関していずれも 1000 mg/kgと推察された.

連絡先
試験責任者:和田 浩
試験担当者:小林吉一,藤村高志,木村 均,渡邊ゆかり,古橋忠和
(株)日本バイオリサーチセンター羽島研究所
〒501-62 岐阜県羽島市福寿町間島 6-104
Tel 058-392-6222Fax 058-392-1284

Correspondence
Authors:Hiroshi Wada (Study director)
Yoshikazu Kobayashi,
Takashi Fujimura,
Hitoshi Kimura,
Yukari Watanabe and Tadakazu Furuhashi
Nihon Bioresearch Inc. Hashima Laboratory
6-104 Majima, Fukuju-cho, Hashima, Gifu, 501-62,Japan
Tel +81-58-392-6222Fax +81-58-392-1284