4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)のラットを用いる単回経口投与毒性試験

Single Dose Oral Toxicity Test of 4,4'-Methylenebis(2-chloroaniline) in Rats

要約

 4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)をCrj:CD(SD) IGS系雌ラットに単回経口投与し,その急性毒性を検討した.投与量は300及び2000 mg/kgとし,それぞれ2回ずつ投与した.

 死亡は2000 mg/kgの1回目投与で1/3例にみられたのみであり,致死量は2000 mg/kgと推定された.

 一般状態では,2000 mg/kg投与群で投与後30分から順次,耳介及び四肢の暗調化,飲水行動の亢進,自発運動の減少,呼吸数の減少及び異常歩行(失調性歩行)がみられ,2000 mg/kgの1回目投与の1/3例では投与翌日に粗毛及び呼吸深大を伴って投与後2日に死亡した.その他の動物は投与翌日に全て耳介及び四肢の暗調化のみとなり,投与後2日には正常状態となった.300 mg/kg投与群では2回目投与の1/3例で投与翌日に耳介及び四肢の暗調化がみられた.体重では300及び2000 mg/kg投与群ともに,投与後3日まで体重減少あるいは増加抑制がみられた.剖検では,死亡動物で粗毛,肝臓の白色巣,副腎の暗赤色,前胃及び腺胃の暗赤色巣並びに空腸から回腸に暗赤色の内容物がみられた.生存動物については,肉眼的異常は認められなかった.

方法

1. 被験物質及び被験液の調製

 4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)[イハラケミカル工業(静岡),ロット番号FG-3002,純度99.76 %]は白色針状粉末結晶(冷暗所)である.なお,投与終了後の残余被験物質を供給元で分析した結果,使用期間中は安定であったことが確認された.

 被験物質は,30及び200 mg/mLの濃度となるようにメノウ乳鉢を用いて,0.5 %CMC-Na溶液(CMC-Na:丸石製薬)に懸濁して調製した.調製は300 mg/kgの1回目投与の3日前に行い,2000 mg/kgの2回目投与までの7日間遮光瓶に入れて冷蔵,遮光で保存した.なお,被験液は上記条件下で安定かつ均一であることを確認した.また,投与に使用した被験液について濃度及び均一性を確認した結果,いずれも適正であった.

2. 試験動物及び飼育条件

 7週齢のCrj:CD(SD)IGS系SPFラットを日本チャールス・リバーから購入し,28日間検疫・馴化飼育した後,健康な動物を選び11週齢で試験に供した.1群の動物数は1回投与当たり雌3匹とし,投与日の体重範囲は,212〜282 g(平均値:239 g),であった.

 動物は,投与前日に無作為抽出法により選択した.

 動物は,温度23±3 ℃,相対湿度50±20 %,換気回数1時間当たり10〜15回,照明1日12時間の飼育室で,金属製網ケージに1匹ずつ収容し,固形飼料CRF-1(オリエンタル酵母工業)及び飲料水(水道水)を自由に摂取させた.

3. 投与量及び投与方法

 本被験物質のラットでの致死量に関する情報がないことから,OECD Test Guideline 423に従って,先ず300 mg/kgを投与した.その結果,死亡がみられなかったため,その翌日に改めて300 mg/kg投与した.300 mg/kgの2回目投与でも死亡がみられなかったため,更にその翌日に2000 mg/kgを投与した.その結果,1/3例が死亡し,その翌日に改めて2000 mg/kgを投与した.投与容量は10 mL/kg体重とし,約16時間絶食させた動物に胃管を用いて1回強制経口投与した.なお,投与後の給餌は投与後4時間に行い,給水は投与に関係なく継続して行った.1回投与当たり3匹使用した.

4. 検査項目

 観察期間は投与後14日とし,投与6時間後までは頻繁に,その後は1日1回,一般状態及び生死の観察を行った.体重は投与直前に測定し,これを投与液量算出の基準にした.更に,投与1,2,3,7,10及び14日後に死亡した動物の体重も含め測定した.死亡動物は発見後速やかに,生存動物は観察期間終了後,全動物をエーテル麻酔下で放血致死させた後,体外表,頭部,胸部及び腹部を含む全身の器官・組織の異常の有無を肉眼的に観察した.なお,死亡動物の肝臓,胃,空腸から回腸及び副腎に被験物質投与に起因すると思われる変化がみられたため,リン酸緩衝10 %ホルマリン液に固定・保存した.

5. 統計解析

 投与量ごとの死亡動物数から概略の致死量を推定した.体重については,投与日ごとに平均体重及び標準偏差を算出した.ただし,動物数が2例以下の場合には標準偏差を算出しなかった.

試験結果

1. 死亡状況,死亡率及び致死量(Table 1)

 300及び2000 mg/kgを3匹ずつ2回に分けて計6匹に投与した結果,2000 mg/kgで1例が死亡したことから,致死量は2000 mg/kgと推定された.

2. 一般状態

 300 mg/kg投与群では,2回目投与の1/3例で投与翌日に耳介及び四肢の暗調化がみられたが投与後2日には消失した.

 2000 mg/kg投与群では,1回目及び2回目投与ともに,投与後30分以降から順次耳介及び四肢の暗調化,飲水行動の亢進,自発運動の減少,呼吸数の減少あるいは異常歩行(失調性歩行)がみられ,1回目投与の1/3例は投与翌日に粗毛及び呼吸深大を伴って投与後2日に死亡した.その他の動物は全て投与翌日に耳介及び四肢の暗調化のみとなり,投与後2日には正常状態となった.

3. 体重

 300及び2000 mg/kg投与群ともに,投与後3日まで減少又は増加抑制傾向がみられたが,投与後7日以降は観察期間を通してほぼ順調な体重増加が認められた.

4. 病理学検査

 死亡した2000 mg/kg投与群の1例に粗毛,肝臓の白色巣,副腎の暗赤色(両側性),前胃及び腺胃の暗赤色巣及び空腸から回腸に暗赤色の内容物がみられた.生存動物では,体外表並びに頭部,胸部及び腹部の器官・組織に異常は認められなかった.

考察

 4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)の急性経口毒性を11週齢のSprague-Dawley系SPFラット〔Crj:CD(SD)IGS〕を用いて検討した.投与量は300及び2000 mg/kgとし,動物数は1群雌各6匹とした.

 300及び2000 mg/kgを3匹ずつ2回に分けて計6匹に投与した結果,2000 mg/kg投与群の1例が死亡した.したがって,致死量は2000 mg/kgと推定された.

 一般状態では,300 mg/kg投与群で1例に投与翌日に耳介及び四肢の暗調化がみられたが,投与後2日には消失した.2000 mg/kg投与群では投与後30分以降順次耳介及び四肢の暗調化,飲水行動の亢進,自発運動の減少,呼吸数の減少,異常歩行(失調性歩行)がみられ,1例は投与翌日に呼吸深大及び粗毛を伴って,投与後2日に死亡した.生存動物は,投与翌日には耳介及び四肢の暗調化のみとなり,投与後2日には全例が正常状態となった.体重では,300及び2000 mg/kg投与群ともに,投与後3日まで減少又は増加抑制傾向がみられたが,その後はほぼ順調に増加した.剖検では,死亡動物で粗毛,肝臓の白色巣,副腎の暗赤色(両側性),胃の暗赤色巣及び空腸から回腸に暗赤色の内容物が認められた.一方,生存動物では,いずれの動物にも肉眼的異常は認められなかった.

連絡先
試験責任者: 西村信雄
試験担当者: 勝間田豊久,赤井弘幸
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〒412-0039 静岡県御殿場市かまど1284
Tel 0550-82-2000 Fax 0550-82-2379

Correspondence
Authors: Nobuo Nishimura(Study director)
Toyohisa Katsumata, Hiroyuki Akai
Gotemba Laboratory,
Bozo Research Center Inc,
1284, Kamado, Gotemba-shi, Shizuoka, 412-0039, Japan
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